最近のフランスのニュース その② | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

フランスのニュースといえばなんといっても大統領選。

昨年暮れの保守陣営からの公認候補選びで、アラン・ジュッペを大差で下して勝利した元首相のフランソワ・フィヨンは5月の大統領選の最有力候補とされてきたが、1月に「カナール・アンシェネ」誌がすっぱ抜いた記事、フィヨン氏の配偶者ペネロプは10年ほども架空の職によりサラリーを合計1億円近く受け取っていたという内容の暴露記事が波紋を広げ窮地に立たされている。

昨日は財政裁判所に出頭し判決が下されるか注目されたが、結果は「裁定(結審)」は下せない、こんごも捜査を続ける、というものだった。従い、検察、判事との闘いが大統領選まで続くことになり、こんごも苦しい選挙戦を強いられるだろう。

フィヨン氏自身は直後に「裁判所の判定はシロでもクロでもない。私は440万人の支持を得た候補者だから、大統領選に際しての国民の皆様の判定だけに従う」というコメントを発表した。

440万人というのは、保守陣営の公認候補選でアラン・ジュッペを下しフィヨンが獲得した票の数だが、この時にフィヨンを信頼して投票した人たちは「裏切られた」、「正直さを評価した」のが「やっぱりこの人もか!」と信頼を裏切られた、残念だ、「奥さんを利用してまで酷い」と反動が激しく逆効果を生んだ。

保守の共和党の中からさえ「別の候補者を立てるべきだ」との声も上がっている。現在のところ「共和党」は今まで通りフィヨン候補を 支援してゆく方針を変えていない。

世論調査では、フィヨン氏支持の理由としては「変革の意志がある」が30%。しかし、「架空職」暴露により保守陣営のフィヨン支持率は 14%も下落。左右合わせると20%下落、最有力候補から4番目へと急降下してしまった。


フィヨン氏没落により浮上したのが左翼リベラルのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)で、先日のリヨンで開かれた「運動」支持者のミーテイングは 異常なほどの盛り上がりを見せた。もちろん若者層が中心で、具体的な政策は挙げていないのだが、変革への「ミステイックな」意志が 若者の心を捉えるのだろう。



しかし、そのマクロンが昨日、アルジェを訪れた際に、アルジェリア政府高官との面談の席で「植民地政策は歴史的な過ちであり、人道に 対する犯罪だ」と明言したことがフランスの保守派はもとより、フランスに移民してきたアルジェリア人にも衝撃を呼び、フランス国民の 間で物議を醸している。

直後にマクロンはテレビで、「私の考えは間違っていないし発言を撤回したり訂正したりするつもりはない。真実は勇気をもって 主張しなければならない」と信念を強調した。

フランスがアルジェリアを植民地にしたのは1830年のことで以来130年に渡って海岸部の肥沃な土地を収奪して来た。アルジェリア 戦争によって1962年に独立を果たすわけだが、西欧の先進国がこぞってアジア・アフリカ・南米諸国を植民地支配したことは 世界の歴史をみれば明らかなことで、植民地争奪戦が結果として第二次世界大戦という大規模な惨劇を生んだ。

マクロンはフランスはアルジェリアに「人権思想」を普及した、と肯定点を一つだけ挙げている。

「自国の過去の歴史を憎む」ような考えを持つ人間は「一国の大統領として資格を欠く」とさっそくフィヨンがテレビでマクロン発言を 攻撃したが、そのフィヨン自身も、世論調査では59%に人が信頼をおけない、裏切るのじゃないか心配だ、としている。


シュピーゲルという言葉がある。リヒャルト・シュトラウス作曲の「テイル・オイレン・シュピーゲルの愉快な悪戯」という曲がある。 フランスでは「エスピエーグル」となり「やんちゃ」「いけず」「茶目っ気のある悪戯」というように言えるかと思うが、この フランソワ・フィヨンという人をみてると、この言葉が浮かんでくる。学生時代、勉強はあまりできず、68年の騒乱の時に教室に催涙弾を持ち込んで ガスを撒く悪戯をしたらしいが、「カトリック教徒ですから人道に関しては思い遣りある政治をします」とか胸に手をあてて誠実振りを演出したうえで心にもないウソを平気で述べる人。

だが、「ウソ」を平気で吐く、批判されても「蛙のつらにションベン」みたいになんとも思わない図々しさを持ってないと 政治家にはなれないようだ。これは保守だからとか革新だからとかの違いはない。かのミッテラン大統領だって、大きな嘘を少なくとも3つ 吐いた。眼をぱちくりする程度で、顔の表情も変えず、ウソ発見器でも探知できないように平然とウソを吐いていたのである。この3つのウソについてはまた改めて投稿しようと思う。

フィヨンの墜落によりマクロンがトップに躍り出てたのだが、この「植民地化は人道に対する犯罪」発言で、人気を少し下げるだろう。

「最低統一給与」支給を公約に掲げた社会党の公認候補ブノワ・アモンがマクロンと肩を並べる形になったが、社会党だけではFNの マリンヌ・ルペン女史に勝てるか? 危ういのではないか? とだれもが危惧するなか、環境派、極左のメランション候補も巻き込んだ 統一戦線を組べきだという声が上がっている。

エマニュエル・マクロンは1977年生まれで今年の12月に40歳を迎えまだ若い。高級官僚養成のエリート学校ENAを卒業し、銀行に勤務した後、オランド大統領の経済顧問を務め、短期間だが 経済産業相に就いた。自己の政治運動を展開するため閣僚から抜けた。「自分は社会主義者ではない」と言っている。

一方のブノワ・アモンはグラン・ゼコル(フランスのエリート養成学校、大学より格が上)を出ていない。企業には3年ほど勤務し、社会党に 入党し、マルチンヌ・オーブリの秘書を務めた。マニュエル・ヴァルス内閣で教育相を務めたが、「フロンド」と呼ばれる反体制派のリーダー格と なって閣僚から抜けた。

マクロンにはどうしてもエリート色がついて回り、労働者層はブノワ・アモンに共鳴するだろう。雇用の創出と経済発展をめぐって今後 マクロン的なリベラリズムでゆくか、アモン流の若年労働者への最低生活保障でゆくか? 大統領選を契機にこれからの議論が注目される。


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