フランスのテレビが福1の特別番組を放映 | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

フランスのテレビ(アンテンヌ2)で昨夜(2月12日夜10:45から)、来月で6年目を迎える福島第一について特別番組が放映された。

巨大地震が高さ30メートルの津波を発生させ凄い速さで北陸沿岸に迫るところから始まった。

津波による死者19000人行方不明6000人、と数字をあげる。



フランスは家庭電力の80%を原発で賄っていることから、津波発生と同時にいちはやく福島第一の原発が起こしうる 危険についてIRSN(原子力安全院、フォントネイ・アン・ローズにある)が40人のエンジニアを動員して事故の情報収集と分析を始めた。

福島第一に押し寄せた津波は高さ5mしかない防波壁をやすやすと乗り越えて、原発の設備をつぎつぎと呑み込んでいった。

この番組で特に注目したのは以下の点

1)フランスは日本のテレビが地震と津波により福島第一が危険に晒されていると報道するより前に、いちはやく危険を察知した。

2)冷却用の自家発電(デイーゼル発電機)が海水を被り使用不能となったことにより原子炉の燃料棒のメルトダウンの危険が現実のものとなった。

3)福島第一の現場責任者、吉田所長と東電本社とのコミュニケーションの悪さ。


4)いよいよ原子炉内部で燃料棒の溶融が始まり、現地社員が危険に晒される段階で本社が全員引き揚げを指示したのに対し、菅直人首相が早朝東電に乗り込み、それは容認できない。最小限の技術者を残して対応に当たってくれと訴えた。それをある東電の社員は、まるで大東亜戦争時の神風特攻隊員になれと言うようだった、と評した。また水素爆発の報告が1時間後になってもなされなかった。

5)USAが原子力空母ドナルド・レーガンを福島沖に停泊させ、海兵隊員に「ともだち」作戦、福島の危機的状況の救援活動を指示した。英国、オーストラリア、ニュージーランドも支援要員を派遣した。フランスも何かしなければと、 放射線汚染区域でも活動できるロボットを貸し出すことを決め、世界に一機しかない超大型輸送機アントノンを180万ユーロでチャーターしたが、日本がロボットの受け入れを拒否したため、ロボットの代わりに、水、食料品、毛布などの救援物資を積んで日本へ運んだ。しかし毛布などは日本に余るほどあるし、フランス軍の毛布は蚤やシラミが居て質の悪いもので、ホームレスの人たちに配布した。津波が襲った後の生存者救出にフランス救援隊が駆け付けたがすでに遅く一人も発見できなかった。放射能汚染が衣服に検知された為、フランス部隊は青森の基地へ避難命令が出た。(トモダチ作戦に参加した米海兵隊員には300人近くが今も体調を崩し苦しんでいる)。

6)原子炉内の圧力は高まり続け、排気弁を開ける作業がなかなかできずにいた状況で、フランス大使館は、日本在住の6000人近くのフランス人に、穏やかな表現で声明文を作り送付しようとしたところ、パリから、その声明は送らないよう要請があった。駐日フランス大使はフランス外務省の指示を無視して、東北、関東以南へ避難するよう勧める通知を各フランス人家庭に送った。

7)水素爆発が続き、メルトダウンによる最悪の放射能拡散事故があり得る状況となったため、日本に進出しているフランス企業(アレバもそのひとつ)は社員に日本からの出国を奨めた。これに従い多くのフランス人が日本を去った。やがてフランス政府は専用機を日本へ送り、フランス人家族の日本出国を助けた。

8)サルコジ大統領が危機救援のためと称して菅首相に面談を申し入れたが、菅首相は混乱時なのでもっと落ち着いてからと一旦断った。が、サルコジ大統領が固持したため迎えた。(実はサルコジはアレバ社長と中国へ原発を売り込みに行った帰りに日本へ寄っただけだった)

9)そうしたなか、ドイツのメルケル首相がいち早く、脱原発を発表したため、原発の輸出を国策としているフランス政府は慌て、当時のフィヨン内閣の産業相は(元社会党だったが)EUの原発対応会議で脱原発を支持する国々へ圧力をかけた。サルコジも日本で原発を止めたら何をエネルギー源とするんですか? と時代遅れな発言をした。

10)メルトダウンした燃料棒は原子炉の底を溶かして落ち、基礎のコンクリートも突き破って地中深くマグマ状の高温を保ちながら溜まっている。今後30~40年間は毎日300トン近い水で冷却し続けねばならないだろう。

11)水素爆発など福島第一の原発事故で直接の死者は出ていないが、推定30~115人の癌患者が今後数年あるいは数十年後に 事故の対応に当たった人の中から出るだろう。現在もなお福島周辺の住民だった人、約20万人が避難生活を続けている。

12)日本政府が事故後作成した報告書は福島第1の事故は、東電がきちんとした予防、事故を未然に防ぐ対策を行ってこなかった「人災である」と結論づけた。津波の防止壁は5mでは低いから高くしなさいと勧告したにもかかわらず東電は対策をしなかった。社員の防災訓練もしてこなかった。現場で排気弁を開かねばならない状況になっても弁の位置すらわからず、図面を見つけるのに2時間もかかったというありさま。


13)フランスの政府筋が恐れたのは福島第一事故による世界的な原発産業の低迷、アレバが世界市場で大きなシェアを握っているウランの燃料棒加工で売り上げの急落。事実昨年のアレバの業績悪化は1兆円を超す赤字で、救済策に頼らねばならない状況。

ざっとこんなところですが、テレビ会社のアンテンヌ2は脱原発とも、ウラン原発の他にずっと安全なトリウム原発が ある、というようなことにも触れず、世界に68基あるという新原発建設計画の受注を今後も狙って行くと報道したのが残念。

フランスは19か所に合計52基の原発を持ち、うちいくつかは老朽化が進んで、廃炉計画に入ったのもある。日本の福島周辺の 汚染土の袋詰めがぎっしり並んだ画像が映ったが、放射能汚染廃棄物をどうするのかさえ、決められないありさまで、なおも再稼働を主張してる人たちは、いったいどう考えてるのだろう?


数万年、いや数十万年も管理し続けねばならない放射能のゴミを処理の仕方がわからないまま、もっと続けるって……、もしかして、 10万年後には人類は汚れた地球を捨てて、新しい天体へ移住するから大丈夫とでも考えてるのかな?

ウランよりずっと安全で安くて再生可能エネみたいに場所を取らない「トリウム溶融塩」を使った核分裂利用の発電ができるのに だれもそれについて知ろうとしない、語ろうとしない、のはなぜなのだろう? インドや中国ではもう実用段階に入ってるのに日本と フランスだけが意固地にウラン原発にしがみついている。

書き忘れたから最後に書いとくけど、福一が人災だってのは、その設計段階からミスがあったことからも妥当だ。これも後からだから 簡単に言えるけれど、非常用デーゼル発電機が、これでは海水を被って使えなくなる位置にあると指摘した東電の技術屋さんもいた。それを 上役が無視してこのままやれと。そのわけは、設計を変更するとバカ高い金をアメリカのウエスチングハウスだかGEだかに払わねばならなかった。 Lump-Sum 契約だったんだね。スリーマイルズアイルランド事故の直後でアメリカでは原発プロジェクトは凍結同然だった。日本は 困ったアメさんを助ける? いや、捨て場のない危険な原発を国民の犠牲覚悟で高く買ったんだね。それを推し進める「エライさん」たちが居た。

もっと唖然とすることがある。福島第一がある土地は、もともとは海抜30メートルの高台だったんだ。それを削ってわざわざ津波に被りやすい高さにして原発を造った。理由は30メートルだと海水ポンプで水が挙げられないからだと。2段にして途中にプールを作れば よかったのにね。こんな高い津波が来るなんて「想定外」とまたまた御用学者が言い訳してた。自然を見くびった阿呆学者だね。

それにしても1970年代後半からよくもこんなたくさんの原発を日本の美しい海岸のあちこちに造ったもんよの。もんじゅは停止でも核燃料サイクル 維持のために研究は続ける。これ、やっぱ背後に「核」へのこだわりがあるって見え見えだよね。「プルトニウム」が欲しいのかね? 北さんの核に対抗しなきゃならない時が来るかも? って、その備えに「プル」を作れる能力を維持したい。いじましい想いだね。 プルはいまあるだけでも十分すぎるほどだろ。アメリカにタダで贈物したくらいだから。

 
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