毎朝、雨戸を開けるたびに、待ちかねていた猫が、窓辺に飛び乗ったり、路地の奥から駆け寄って来ていた。それは4匹で、その顔ぶれは決まっていた。

黑くて愛くるしく触っても逃げないチビクロ3世、火星からきたような特異な顔立ちと体つきのエミリエル、白い顔の鼻に黒いブチのあるフェリックス、それにグレーのトラネコ、ミネット・グリーズ。
ミネット・グリーズが母猫とは知らなかった。袋小路になってるその袋の部分に、灰色のネズミくらいの大きさの仔猫がちょろちょろ走り回ってるのを2・3度見たが、彼らの母親がミネット・グリーズだったとは思いもよらなかった。母猫にしては身体が小さく、育ちかけの仔猫のようだったからだ。
ミネット・グリーズは、今うちに居ついて大きくなったミヌーとミネの母猫のプランセスの飼い主の家の猫だろうと思っていた。エサの量が少ないとか、良質の餌じゃないとか、もっと美味しいもんを充分に食べたいとかの理由で、家を抜け出て他の猫が集まる場所へ寄って来るのだろうと思っていた。ところがカミサンがプランセスの飼い主のところへ行って確かめたところ、ウチのネコじゃないと言われ、おまけにプランセスは人にやって他の町へ行ってしまったという。一時期、カミサンの行為をプランセスを餌でおびき寄せて盗もうとした、と言いがかりをつけ非難の電話を掛けて来たご本人だった。
ミネット・グリーズは、野外で寝起きしてるクロッシャール(ホームレス)なのだった。驚いたことに仔猫は3匹ではなく6匹いるのだった。
夏のあいだは猫たちは好んで野外で寝起きするくらいだから良かったが、10月に入ると雨が降り続いて、もうこれ以上野良猫の収容は御免だ、人間の、自分たちの生活を優先すべきだと主張していたご当主も、毎日冷たい雨に打たれ続ければ猫は死んでしまうのは明らかなので、憐れみの情を催したこととて、カミサンが家に入れるのを黙認した。
前からいる6匹プラス母猫のミクロクロの計7匹に、6匹の仔猫と母猫のミネット・グリーズが加わり全部で14匹の大所帯を抱えることになってしまった。
大きくなると去勢だ避妊手術だと、出費が嵩むので、われわれ二人の人間様が食うだけでも精一杯の家計では、共倒れしてしまい、早いとこ里親をみつけ引き取ってもらわねばと、写真を撮ったり、近所の養老院やスーパーの人に話をして回った。すると、そのうちのひとりに、15年一緒に暮らした猫を亡くしたばかりの女性がいて、仔猫を2匹引き取ってくれた。
仔猫の成長速度はおそろしく早くて、毎朝見るたびに大きくなったと感じるくらい。残った4匹もみるみる成長し、よたよたと頼りなげだった足つきもしっかりし、取っ組み合いをしたり、走り回ったりするようになった。
少し高い所に好んで飛び上がって、置いてあるスタンドやシクラメンの鉢をひっくり返したり、ヒモ状のものを見つけるとじゃれついて齧ったりする。
とうとう4日前、電話線を齧って親子電話を使えなくしてしまった。電話のコンセントにはインターネットとテレビの回線も差し込んであるので これを齧られると一大事。電話よりもこちらを優先してPVCのゲインに通して保護処置をした。親電話のバッテリーが切れてしまい、充電可能な電池しか使ってはいけないとなっていて、充電器がどこにしまったか見つからず、固定電話は今もって使えない状態。
難民受け入れなど大層なことなどできる由もないが、せめて、この同じ地球に生を受けた生き物どうし、ホームレスだった猫親子と精一杯暮らしが続けられれば良いが、と思ってます。むろん、14匹は荷が過ぎるので、ネットのサイトに写真を載せて、里親探しを続けますが。

