アルストム売却 | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

フランスのTGV(高速鉄道)といえば知らぬ人は少ないだろう。そのTGVを造ってる会社がアルストム。先週初め、アルストムがアメリカのGE(ジェネラル・エレクトリック社)かドイツのシーメンスに買われるというニュースで大騒ぎになった。

フランスの代表的企業アルストム(Alstom )が
売却するのは、そのエネルギー(重電、発電)部門。

4月29日、Alstom の取締役は満場一致でGE(ジェネラル・エレクトリック社)のオファーを受け入れた。GEのオファーはアルストムのエネルギー部門を123.5億€で買うというもの。1€=140円換算で1兆7290億円。GEによるこの株式取得が実現すれば、この部門の70%の株がGE保有となり、売上は140億€となる。

GEはアメリカの企業で世界中の従業員数が30万5千人というマンモス企業。フランスにもすでに1万人ほどの雇用者がいる。

アルストムのエネルギー部門の売却はかなり前から秘密裏に進められており、先週初めに国会で取り上げられ、マスコミは連日この問題に関する番組を組んで来た。先週半ばまではGEとドイツのシーメンスSiemens の競争で、アメリカを選ぶかヨーロッパ連合国のドイツを選ぶべきかで議論が闘わされてきた。

フランスの社会党政府は、GEのオファーに懐疑的で、ヨーロッパ連合内での企業合併を推奨しているが、アルストムのパトリック・クロスPatrick Kros 社長は、Siemens とは競合部門が多過ぎ合併後の経営が困難になり、一方GEとは補完関係になるので歓迎する意向を表明した。GEの Jeffrey Immalt 社長は、オランド大統領に私信を送り、アルストムとGEとの補完関係によりフランス国内で従業員数を増やす約束をした。

アルストム

アルストム(Alstom )は現在世界で93000人の従業員を抱える巨大企業で、売上は200億€。TGV(鉄道)、原発初め発電エネルギー部門、造船(Alstom Atlantic ロワール河が大西洋に注ぐサン・ナゼールにドックがあり、豪華客船を造って来た。最近ではクルーズ用客船を主力にしている)が主要三大部門。1990年代に戦略の誤りから多大の損失を出し、国家が介入したが、世界的不況とエネルギー部門の不況を乗り切ることが出来ず、エネルギー部門の売却を決めた。

フランスという国は只今台所が火の車で、発足したばかりのマニエル・ヴァルス社会党内閣は先週ヴァルス首相が
財政緊縮案を基幹とする基調演説をし、社会党左派の41名が棄権という前代未聞の状況でぎりぎりの議会承認を得たばかり。主な赤字は社会保障費の500億€(約7兆円)。公共部門の支出、地方財政への国の援助の削減、医療保険の医薬品コスト削減、などで7兆円を生み出そうという案で、雇用創出と経済成長のために企業の社会保障費負担と税率を下げる政策に共産党はじめ社会党左派から批判が出ている。

こんな状況下にあるため国にお金が無く、アルストム国有化は不可能なのだ。
フランスは家電などのメーカーが皆無に等しく、個人経営の零細企業か、エネルギー、鉄道、航空、宇宙開発といった基幹産業が工業を支えてきた。1980年代にすでに脱工業化社会が唱えられ始め、製鉄、アルミ、自動車など重工業が生産拠点を海外に移し、国内の企業も外国資本に支えられてきた。90年代に入るとインターネットなどデジタル情報社会で第3セクターのサービス産業がこれからは経済活動の中心となると言われるようになった。工業が産業全体に占める割合は20%を割っている。

新旧

自動車でいえば、ルノーと日産の合併につぎ、昨年ついにプジョー・シトロエン・グループも中国の自動車メーカーの資本参入を迎えることになった。

アルストムは原発用タービンを最初に造った会社でもあり、フランスの国策産業を支えるフランス人の誇りでもあったのだ。そういう国を代表する企業がフランス国籍を離れ、アメリカやドイツの支配下に入ることを嘆く人は多い。


タービン

アルストムは産業革命の初期、日本がまだ徳川時代、駕篭に乗って移動していた1839年、アルザス地方のムルーズMulhouse で蒸気機関車の製造により産声を挙げた。

1928年にアメリカの電気メーカー・トムソンThomson (GEの生みの親でもある)と合併し Alsace とThomsonの綴りを結合して Alsthom と名乗った。後にhを削って Alstom と改名した。


ぼたん


フランスは世界5番目の大国といまだに政治家の中には大国意識を隠さない人がいるが、失業者が過去最高の350万人に達し、経済産業活動が確実に凋落を続ける中で、大言壮語の通り現実に反映されるにはジャンヌ・ダルクが起こしたような奇跡が必要だろう。おりしも、5月1日はジャンヌを祀る日でもある。


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