バイアスロンでフランスの快挙 | 雷神トールのブログ

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ソチ・オリンピック開催から3日経ち、一個のメダル獲得も果たせなかったフランス勢は、テレビ解説者にも国力の衰えを嘆くような落胆ムードが覆っていた。愛国心が人一倍強く、栄光が大好きなフランス人には我慢できないことのように見えた。そうしたムードを一挙に覆し、フランス・チーム全体に活力を与えたのが10日(月)のバイアスロン男子個人追い抜き(パシュート poursuite )12.5 kmでのマルタン・フルカッド Martin・Fourcade (25歳)の快挙だった。


マルタン


バイアスロンは日本ではあまり盛んではない。森林警備隊やアルプス射撃部隊( Chasseurs alpins )が基礎にある競技で、クロスカントリースキーとライフル射撃という動と静のまったく正反対の性質の二つの競技の組み合わせ。

この日行われた、個人追い抜き(パシュート)は予選のタイムにより順番と時間に差をつけてスタートし、12.5kmのクロスカントリーの間に4回射撃を行う。

射撃は22口径競技用ライフルで標的の距離は50m。的の大きさは伏射が直径3センチ、立射が5センチ。一回5発の弾倉を4個と、予備に3発まで銃弾を持てる。立射と伏射を交替して撃ち、一発的を外すごとに1点のペナルテイーが課せられ一週400mほどの赤いペナルテイーコースを回らねばならない。

クロスカントリーで激しく体力を使い、呼吸、心拍ともに乱れている中で、一点に狙いを定め、いかに早く呼吸と心拍を整えて集中できるか? 走りに強いだけでは勝てず、観る者には選手ごと射撃の集中力と、走りをどう組み合わせるかの作戦に面白みがある。

マルタン・フルカッドは走りに絶対の自信を持っている。前回のヴァンクーヴァー・オリンピックで銀メダルに輝いた。期待された8日のバイアスロン・スプリントでは6位に終わり、報道関係者の失望につながっていたのだが、誇り高いフランス人のことだ、この辺でやるに違いないとテレビを点けたら、案の定マルタンが優勝、しかも3位にジャン・ギヨーム=ベアトリックスが入るという快挙をやってのけた。

マルタンとジャン・ギヨームはジュニア時代から一緒に走り込み練習を重ねた仲の良い友達同志。同じ25歳で、ジュニアではジャンギヨームの方が先にメダルを獲得し、走りも強かった。

10日の「追い抜き」では、マルタンは6番目か7番目のスタートだったが、一回目の射撃地点到達前にすでに先頭に躍り出ていた。

射撃位置にトップで着いたものの、呼吸を整え心拍が収まるのをじっと待ち、慎重に狙いを定めた。5発とも命中。ペナルテイーを避け、走りでまず差をつけておこうという作戦。射撃位置から立ち上がった時は先頭集団の20人近くは全員走り去ったあとだった。

長身で逞しい脚を活かし、ぐんぐん差を縮め、簡単にトップに立つ。2回目の射撃は立射で、ここも5発すべて命中。2位との差を広げておこうと力走する。マルタンの背後にはチェコのオンドレイ・モラヴェック選手が迫る。が、マルタンは、ペナルテイーをくらっても、追い抜かれないよう、ここで最大の差を広げておく作戦で、それが功を奏した。3回目の伏射でマルタンは4発目を外し、ペナルテイー1点を課された。

最後の射撃、立射に入る時点で2位との差は17秒に縮まっていた。慎重に狙って5発すべてを命中させると、マルタンは、すでに勝を制したと観客席のフランス・チームに向かって右腕を挙げ雄叫びを挙げた。あと3kmほどのコースを転倒しないよう慎重に走ればいいだけのこと。ついに狙った金を制したと、沈滞したフランス・チーム全員に一刻も早く告げたかったのだろう。

フィニッシュではテレビカメラに寄ったりして楽しみながらゴールした。マルタンのタイムは33分48秒6。

3位に入ったコパン(親友)のジャン・ギヨームをマルタンはゴールラインで出迎え、抱き合って、共に勝ち取った勝利を喜んだ。競技後のインタヴューでマルタンは、「これはフランスが取ったメダルです」と早口で静かながら愛国心を隠さなかった。マルタンもジャンギヨームも確か現役の軍人の筈だ。

バイアスロンはクロスカントリスキーと射撃の組合せの他にも、水泳と自転車など違った2種を組み合わせた他の競技もあるが、スキーのバイアスロンはフランスでも競技人口が少なく、珍しい競技。国際スキー連盟には属さず、オーストリアに本部を置く国際バイアスロン連合という独自の組織を持つ。

初めてオリンピックで競われたのが1924年のシャモニー・オリンピックで、その頃は、「軍事偵察 Military Patrol」という物騒な名前で呼ばれていた。1960年のスコーバレーから「バイアスロン」と呼ばれるようになった。ちなみに女子は1992年のアルベールビルが最初。日本人のいままでの最高成績は、1998年長野オリンピックで高橋淳子選手が果たした6位入賞が最高。

メダル獲得数を国別にみると、1位のドイツが43個とダントツで、2位ノルウエー29個、ソ連19個、ロシア20個、フランス17、東ドイツ11、スエーデン10と続く。

ソチのバイアスロンでは、このあと、リレーでフランスの活躍が期待される。


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