引き裂かれた人間の内臓だった。女の、それも私と関係があるらしい女の内臓だった。腹から下は完全に内臓だけしかなかった。普通の内臓の形でなく、ある部分だけが異様に変形して、突然白日の下にさらけだしていた。明るい陽射しの下に、内臓を抱え込む、筋肉や皮などの容器にあたる部分が大きく開いていて、そこに、女性のある部分、われわれがそこを通ってこの世に誕生し、われわれの下腹部のある部分が、そこに挿入されて生殖が行われるその器官が(私は露骨な言葉が恐ろしいためにこんな表現をとっているのではない。この夢の見初めに、私の肉体と器官がまさにそこを通過しそこに挿入された。すくなくともそうした体験といま展開中の事象が継続関係にあるという明確な意識があった)生々しく大きな筋肉や腱などの所在を知らせながら、異様な質量感を持って存在していた。存在しているのみならず、それは生きていた。あたかもその運動によって、この生命が保持されているかのように。その器官は運動しながら液体を放出し続けるのだった。その放出によってこの女の生命が維持されているかのように、文字通りポンプで水を放出するように大量の液体を排出しているのだった。その水はわれわれの生命に関係のある液体、リンパ液など体液を生々しく感じさせる液体を惜しげもなく大量に放出している。液体のこの放出が、この器官におそろしいほどの生命感を与えている。短時間のみならず、これからも長時間に渡り、放出が続けられる勢いを持って液体は流れ出ているのだった。丸く開いた口を持ってそこから絶え間なく水を放出し、生々しく、てらりとして肉の上に、青黒い脂のかげりや、白い腱の筋を浮かべた、赤い茄の形をした器官の上の方に鳥のガラを感じさせる、卵巣や胆嚢や、それを支える細い骨や、有機物の小器官と、無機物の構造物がごちゃごちゃと入り組んで、全体が枯れたレンガ色をした複雑な組織が剥き出しになっていた。放出される水は、外からは見えない内部の太い管の中を流れていた。この開かれた組織と私とは、(というより、睡眠中の私の内臓は、と言った方が正しいのだろうが)ある内的な深い衝動により繋がれているのだった。私は、その器官を勢いよく流れる液体から強い生命衝動を受け、その開かれた内臓に向かって放尿するのだった。あたかも、そうすることによって、私とその内臓にある筈の深い繋がりを確認するとでもいうように。そして私は、深い満足を覚えた。
(つづく)

