まず、寝室の窓ガラスを二重にする工事。このアパートは1960年の築で、当時流行の窓が大きく、明るく外に開かれた設計だった。建築家ル・コルビジェが設計したマルセーユ郊外の集団住宅に似せて造ったらしい。明るいのは歓迎だが冬はガラス一枚隔てて外気がマイナス5℃にもなるから室内を暖かく保つには多額な暖房費が掛かる。
購入したのは春で、暖房は要らない季節だったが、脇の坂をアクセルを踏んで登る車の騒音が夜も絶えず、防音工事をしなければ安眠できなかった。
それに、コンクリート壁の部屋は壁に吸音材を貼らないとキンキン音が反響して耳が痛いほど。マルセイユのル・コルビジェ設計の住宅は、まさかこれほど安普請じゃないだろう、仕切り壁の一部は中が、ガランドウのレンガを使ってあるらしく、隣の音が丸聞こえなのだった。
階段で人声がすると、一番下で話しても4階の室内まで聞こえる。
パリのBHVでガラスを好きなサイズにカットしてくれると知り、寝室の窓に合わせて、3枚の厚手の板ガラスを買った。一番大きなのが1.5m x 0.8m 位だった。窓枠が木なので支えられるか心配だったが、PVCの取り付けキットを売っていて、3cm間隔くらいにびっしりとネジで留めると重い板ガラスもびくともせず貼りついてくれた。
天井と壁に吸音材を貼り付けた。壁は問題なかったが、天井に下からゴムの吸音材を貼り付けるのは一苦労だった。貼った先から垂れさがってくるのだ。両手と頭で垂れさがるゴム板を支えた。壁には5cm 厚のガラスウールのパネルを張った。スピーカーを壁に取りつけて寝ながらオーデイオを鳴らしたかったから。
一番大変だったのはフローリングの床で、栗材の床板を張るのに這いつくばって腰を痛めては休みながら、3週間掛かって仕上げた。風呂場のタイル貼りとペンキ塗り。天井を塗ったあと、壁紙を貼って内装は完成。あと、入り口のドアの防犯工事をしてもらった。アパートは入り口のドアひとつで防犯対策が出来るからいい。
パリ近郊のHLMにはレ・フジェールよりもっと安普請の建物が多いらしい。隣が立てる音が室内で○デシベル以上で聞こえる場合は、しばしば、喧嘩の原因になるので。不良建築として取り壊しになる。基準を決めた法律があり、破壊される建物が多い。そういった建築はダイナマイトで破壊する。横に崩れずまっすぐ下に崩れ落ちる爆破法があり、爆破を専門にしているプロがダイナマイトを仕掛ける。
コンクリートの寿命は100年というから、レ・フジェールは既に半分を過ごしてしまい、あと50年しか寿命がない。それもレ・フジェールを手放す理由になった。
(つづく)
