バルビゾンとミレー | 雷神トールのブログ

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フォンテンヌブローの森を横切る国道7号線のすぐ脇にバルビゾンの村がある。今は高級別荘地となってしまい、森の入口に塀で囲まれ大きな樫の樹が庭に生えた豪邸が並んでいる。

村の真ん中を貫く目抜き通りには画廊が並び、民家の門の脇には石のプレートに画家の誰それがこの家に住んだと記してある。パリ寄り - 西側は広い畑が広がり、最近は都市向けのサラダを栽培しているが、昔は麦畑で、この辺の景色をミレーは「晩鐘」や「落ち穂拾い」に描いた。


フランスの田舎暮らし-bansho
                
              アンジェラス(晩鐘) 1857~1859年


西から目抜き通りに入ると左側に2階建ての長い家が見える。「ガンヌおじさんの宿」と呼ばれバルビゾンに住んでいた画家やアーチストがたむろしたビストロ宿だった。飲み代が払えない貧乏画家が、家具や壁に描いた絵が残っていて近年県立美術館になった。


フランスの田舎暮らし-ganne


次に
右側にあるのがテオドル・ルッソーの家で、兜に角の生えたゴロワの戦士の胸像が乗ってる戦士の墓が門の前にあり、後ろにガラス張りのアトリエと小さな鐘楼を頂いたチャペルが並んでいる↓


フランスの田舎暮らし-rousseau800


テオドル・ルッソーとミレーは友達だった。ミレーがバルビゾンに移住したのは1849年のことで、
パリでのコレラの流行を避けるためだった。

ジャン・フランソワ・ミレー(フランス人はミエと発音する)が生まれたのは1814年。「シェルブールの雨傘」でお馴染みのコタンタン半島の先端のラ・ハーグの近く。現在は使用済み核燃料処理工場がある所。

19才から絵を学び始めたと言うから画家としての出発は遅い。

パリ時代は絵が売れなくてヌードを描いたり有名画家の絵の複製を作ったりで生活したらしい。ある日、ミレーが描いたヌードが懸けてある画商の前を通りかかると二人の男がその絵を見ながら、これはミレーって画家が描いたんだ。へ~女の裸ばっかし描いてる画家かよと冷やかすのを聞いて、金の為に低級な絵を描く画家と見られたことに愕然とし、以来きっぱりヌードを描くのを止めたという。

最初の奥さんのポリーヌは結婚して3年後に肺結核で亡くなり、以後カトリーヌという女性と同棲し9人もの子供を作った。ふたりが結婚したのはずっと後、同棲を始めて7年後の事だった。

ミレーが「種蒔く人」を描いたのはバルビゾンに移住した翌年の1850年。オリジナルが2枚あり、一枚はボストン美術館に、もう一枚は日本の山梨県立美術館の所蔵となっている。どちらもミレーが大きさも構図もそっくり同じ絵を2枚描いた。

フランスの田舎暮らし-たね

              種蒔く人 1850年 ↑

「種蒔く人」は1933年に岩波書店のロゴになった。

ゴッホはこの絵を模写し色を明るく塗った絵を描いている。
ミレーはモネ、ピサロ、ゴッホに多大な影響を与えた。

「晩鐘」と「種蒔く人」はいずれも聖書に関わりが深いテーマ。

「落ち穂拾い」の構図と色彩がめのおは好きだ↓


フランスの田舎暮らし-落ち穂

                  落ち穂拾い 1857年 ↑

ミレーがバルビゾンに住んだ頃は、政府買い上げもあり、生活は安定していたようだ。ミレーのアトリエ兼住居は今も当時のまま保存してあり中を見学できる。


フランスの田舎暮らし-ミレー


ミレーの家の少し先の左側に褐色の柱に白壁のコッテージ風のホテルがある。「バ・ブレオー」という名の四つ星最高級ホテルだ。大きな名前の下に「スチーヴンソンの家」と書いてある。


フランスの田舎暮らし-ボレオ


「宝島」、「ジギル博士とハイド」で有名な19世紀の
英国作家スチーブンソンがここに泊まり「フォレスト・ノート」を書いたと注がある。中島敦の「光と風と夢」はスチーヴンソンが南洋サモア諸島のウボルー島に移住し住民に「ツシタラ(語り部)」と呼ばれ親しまれ1894年に44歳で生涯を閉じた生活を書いたもの。


昭和天皇が皇太子の時代に、英国をご訪問された帰り、お忍びでフランスの田舎をご覧になりたいとおっしゃられ、このホテルにお泊りになったという由緒あるホテル。


バ・ブレオーをまっすぐ進むと道は森の中へ入る。森のクレリエール(空き地)には茶店があり、裏が岩が積み重なった山道になっている。この辺りの樹と岩の配置は絵のように美しい。坂道を登りきると、「山賊の洞穴(  Cavernes de brigans カヴェルヌ・ド・ブリガン) がある。昔、洞穴に山賊が隠れて、下の道を通る馬車を襲ったという伝説の洞穴。今は砂で半分ぐらいが埋まっている。



    (つづく)

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