フロンドの乱 その18 女性たちの活躍 | 雷神トールのブログ

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マザランはケルン大司教の亡命先からアンヌ・ドートリッシュ太后宛てに頻繫に書簡を送り、宮廷への影響力を維持し続けた。

ここで少し、マザランとアンヌ太后、その他の登場人物たち、特に女性たちの人間的側面を見てみよう。フロンドの乱で驚くのは、女性方(みんな高貴な身分ではあるが)の活躍である。

フロンドの乱の人物像を知る上でモットヴィル夫人の「覚書」に勝る資料は無い。

まず、マザランについて。
「(この枢機卿はカトリックの坊主らしく)世間は誰も彼も堕落しているという偏見を持ち、私(モットヴィル夫人)も例外でないと見做していた」

「友人達の不満を聴きながら、マザランに告げ口しないのは、私が加わっているからと、マザランは疑い、しばしば太后から私を遠ざけようとした」

では、アンヌ・ドートリッシュに終生最も信頼を寄せられコンフィダント(秘密を打ち明けられるお付き)だったモットヴィル夫人から見た太后はどんな女性だったのだろう。
「覚書」は多分に誤解されたアンヌ太后その人を公正な眼で見詰め書き残しておこうと書かれたものなので全篇がアンヌ太后中心に書かれているのだが、ここでは政治に関してどうだったのかを見る。

「太后は、正しい理性をお持ちで、明察力あるお方だった。その生まれつきの理性に、結局つねに眼隠しをされていた。太后の意志は、いつもこの大臣(マザラン)の意志に従わされており、太后の理性は、この大臣が屈服させようと望むと、たちまち大臣の意志に負けてしまうのだった」

摂政としての政治的決断に関して常にマザランの言いなりになっていたという欠点を指摘しながらも、モットヴィル夫人はこう書くのを忘れない。

「彼女は善を識別するのに十分な理性を持っておられた。だからもし彼女が、それをいつも擁護する力を持っておられたら、歴史家の筆が、いくら賞賛しても足りない位だっただろう。ところが太后は、あまりにも、自分自身を信じず、彼女の謙遜さが、自分は国政について無能だと思いこませてしまった」

今日の、この項は赤木冨美子女史「十七世紀の記録文学-モットヴィル夫人の覚え書き」(1964年京大)に教えられるところが大きい。

(モットヴィル夫人の覚書の引用文も女史の訳を参考にさせて頂いた。この文面を借りて厚く御礼申し上げます。)

さらに、高木女史の小論により教えられた事を書くならば、フロンドの乱における女性たちの活躍である。

コンデ親王が逮捕された時に、妹のロングヴィル侯爵夫人はパリの館から捕手を逃れ脱出したが、その時、留守中の支援を確約した女性が居た。パラチナ公妃(Princesse Palatine 当時美人として有名だったアンヌ・ド・ゴンザグ=クレーヴの奥方)は「ロングヴィル侯爵夫人に役立つことを確約し、実際、非常な敏腕と勇気で実行した」。1651年にコンデ親王はじめ3人の釈放要求をし交渉した貴族たちの中に彼女も混じっていた。


フランスの田舎暮らし-annegonzag250

さらにまた、北方でのスペインの協力を得るうえでシュヴルーズ侯爵夫人も活躍した。この夫人とは釈放されたコンチ親王が婚約しようとして姉のロングヴィル侯爵夫人に反対されている。シュヴルーズ侯爵夫人はスペイン領ネールランドのレオポルト大公にフロンド党への協力を取り付けた。この大公は、後に出てくる、ルイ14世の姪のグランド・マドモワゼルが父親の了解なしに勝手に婚約しようとした人物である。

しかし女性群の活躍の中で、なんといっても花形はロングヴィル侯爵夫人だろう。
再び「覚書」を借用すると
「(デエップの要塞に乗り込んだ夫人は、)ノルマンデーを味方に付け、王に反抗させるため、市民や、兵や、民衆の前で、力強く演説し(この時代女性が民衆の前で演説することはすべかざることとされていた)、優しく謙(へり下)った懇請を用い、彼女を守るよう人々を動かした。やがて、(国王とアンヌ太后、マザランのノルマンデー巡幸により)、逃走を余儀なくされたが、海に落ちて危うく溺れそうになりながらも、力を取り戻し、勇気を盛り返すと、再び危険の中に身を投じた。風が高まり海を行くことが不可能になったので、馬を選び、夜を徹して進んで行った。お付きの侍女もそれに倣った」

ロングヴィル侯爵夫人はブロンドの渦巻くような髪、白い肌に青い目という典型的な美女で、女性たちには多少「自信過剰」と見られていた嫌いが無いではなかった。モットヴィル夫人は書いている。

「偉大な企みも、激しい情念も可能な彼女の魂は、運命が齎すかも知れぬ最高の栄光と尊敬の幻影に迷わされていた。……この甘い毒は、その想像力を損ない、女の通常の徳を軽蔑させ……全フランスの崇拝を得ようという望みで一杯にした」

(つづく)

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