ノンフィクション小説の連載は2・3日お休みして、幾つか書きたいことを書いておこう。
母がが元気な頃だったから、もうかれこれ20年も昔の事になる。
パリに遊びに来た時、お土産に「懐かしのメロデイー」CDを持ってきてくれた。「あざみの唄」とか「お富さん」とか「弁天小僧菊の之」とか懐かしい唄を往年のの歌手が歌っている。日本に居た頃は演歌はあまり好きではなかった。
欧米に暮らしていると、たまに聴きたくなり、聴きだすと引き込まれ嵌まってゆく。特にフランスは言葉がそもそも理性的で情念とは遠いから、情が満たされず空虚な思いが広がり易い。演歌という日本の庶民の表現手段は、日本人の深層意識、情念の表出で、スペインのフラメンコ、ポルトガルのファドと共通性を感じる。
この「懐メロ」CDの中で特に気に入った唄がふたつあった。「湯島の白梅」と「明治一代女」。歌詩もいいのだが、なにが気に入ったといって、唄ってる歌手の声、節回しがいい。天下に歌手多しといえど、これほど魅惑を湛えた声はない、絶品だと思った。いままで演歌、懐メロなど半ば軽蔑していたのが、こんな歌手が居たのと、認識を改めねばならなかった。完全に魅惑された。
チャーミング(魅力的)という言葉がある。フランス語で申し訳ないが、「シャルム charme 」は人の心を惹きつける魅惑、チャーミングの元になる言葉。でもその語源は「魔法、呪文」と言う意味。つまり魔女が呪文を唱え、魔法使いが、相手を金縛りにしてしまう「呪文」の意味。それがシャルムなんです。現代はアメリカ化日本語の「カワユイ」など、軽くなり過ぎ価値が軽減した。
この歌手の唄に文字通り「金縛り」に遭い、こころが捉えられてしまった。女性歌手である。「明治一代女」を唄っているから小唄勝太郎とかと同時代の昔の歌手かと思った。それにしても、低音の深みと広がり、滑らかな人の心を包み込むような温かみのある、そして緩やかなコブシというのかヴィブラートの節回し。
めのおは、はっきりその声に「母親」を感じたのです。懐かしい母が女性をさらけ出してそこにいる。そこまで、この歌手の声に魅了されたのは、彼女の声が「お袋」の声を思わせるからだと気付いた。めのおは4歳と5歳の2年間を親元を離れ祖母と二人きりで田舎で暮らしたので母の声を聴いた時間は短い。逆に田舎暮らしと女性思慕が習癖となってしまった。でも、生まれたての頃に東京大空襲に遭い、母の背に負われて炎の中を逃げたのだし、それから4歳までに充分なほど母親の声を聴いている。その声は幼児のめのおに沁み入り身体の一部となってしまっている。そこでこの歌手を聴いた時に、身体に沁み込んでいた「お袋」の声が呼び覚まされたのであろう。
母が亡くなった後、この歌手が歌った他の唄も聴いてみたくなった。CDはどこかへしまいこんだのか紛失同然になり、歌手の名前を思い出せない。
You Tube という便利なものが出来て、「湯島」と「明治一代女」を頼りに探し始めた。数日間探したがめぐり合えなかった。そして昨夜、とうとう巡り合いがが叶えられた。その歌手は「この人」↓
そうです。「大月みやこ」!!!
声の質からぼんやり想い描いていた顔、体つきは、ほぼ想像どおりだった。声は体格とも関係するだろう。大阪に生れた彼女は、明治の人でもなんでもなく、めのおより二歳お若い。
歌手としてデビューしてから22年間、陽の当たらない下積み生活を続けた。なんと22年も下積みを経てからやっとNHKの紅白に出場できた。それぐらい地味な演歌に心を籠めて唄い続けた。若手ですぐに花形となり、22年間連続出場していた水前寺清子が舞台で声援を贈ったとウイキペデイアにある。You Tube の視聴数がほとんど千以下なので忘れられた歌手かと心配したが、なんの現役で活躍され、全曲が入ったCDも出された。日本レコード大賞、最優秀歌唱賞に輝き国民的歌手となっていたのである。
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