和秋のフルートの音の低音は魅力的だが高音は丸みが欠け、「締まった喉で草笛を吹くような」感じで、真珠のころがりのような輝きとはほど遠い。高音を出そうと緊張するあまり喉が狭まって草の薄片が震動するようだ、と彼女は批評した。
それまでの自分のフルートがそこそこいい音を立て、人を魅了するとまでゆかなくても人に聴かせて恥ずかしくないレベルには達していると自負していた。それが彼女の正直な批評を聴き、いままではナルシシズムに過ぎなかったのかと気がついて恥じ入った。
同じ吹くにも一本調子の吹き方と、曲により唇の形や歌口の角度やアパチュアと呼ばれる唇の隙間などの要素を微妙に調節しつつその場に最適な音をかなでる繊細な吹き方がある。
これまでは若さの衝動に駆られて、エネルギーをぶち込み、音を鳴らしていただけで、芸術の域には達していなかったのだ。いってみれば、空き倉庫で痩せのスキンヘッドが見せた自涜と大差なかったのだと悟り、自己嫌悪に陥った。
(つづく)
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