塗装ショップでカラーで化粧されたボデーは組立ショップに送られる。

組立はラインが一番長く人間の数が一番多いショップ。

プレスと塗装は設備が主体なのでどの自動車メーカーも同じような配置と設計になっているが組立と溶接ラインはメーカーによって設計がかなり違う。

4年半働いた北フランスの工場は三つのショップが非常に無駄なくコンパクトに設計されていた。各ショップを繋ぐコンベアが最短となるようデザインされていた。

つまり溶接ラインを出たボデーはすぐ隣の塗装工場へ入り、塗装を出たボデーはまっすぐ組立ラインに入る設計になっていた。もちろん各ショップの間にバッファーが用意してあるのだが。

この工場では組立ショップは大きく3っつのラインに編成されていた。全体がTの字の形をして、それぞれのラインは往復2列で出来ていた。

1.ハーネスと呼ばれる電装品をつなぐケーブルと柔らか物を取り回し、インパネを組みつけるライン。

2.エンジンおよび足回りの重要部品を組み付ける中央ライン。

3.フロント、リアのウインドウを取り付け、シートを載せ、ドアを組み付ける最終ライン。

組立の先頭は塗装から送られてくるボデーからドアを取り外す工程から始まる。

ドアは部品の組み立てに邪魔になるから最初に外し、サブのドアラインへ送る。
ドアに様々のパーツを取り付けた後、メインラインの最終段階でボデーとドッキングさせる。

メインラインの車の流れとサブラインのドアの部品の組み付け時間とは厳密に同期化されていなければならない。
ドアを外された車の擬装が終わりラインを回って戻ってくる。もちろん外したのと同じボデーに2枚なり4枚のドアを組み付けねばならない。

組立ショップはこのようにメインラインと幾つかのサブラインとが厳密に同期化されたネットワーク・ショップなのだ。その設計と設計通り実践することが重要で難しいが腕の見せ所なのだ。

田舎暮らしでネットワークビジネス成功-MONTAGE

サブラインは、ドアの他にも、インパネにあらかじめメインラインの脇で計器類を取り付けておく小ライン。リアとフロントのサスペンションを前もって組んでおく足回りラインがある。フロントとリアのウインドウにロボットで接着剤を盛り付ける工程もちょっとしたサブラインといえる。

同期化に重要なのが、車をベルトコンベアで流す時間、スピードを計算し、各メンバーの受け持ちパーツの数と作業区分、持ち時間を厳密に計算ではじき出す。

各メンバーの持ち時間をタクトタイムと呼んでいる。1シフトで製造する車の数によりタクトタイムが変わる。一人のメンバーは平均3~5つのパーツを受け持ちタクトタイム内で組み付けを終わらねばならない。1シフトの勤務時間中200台流れるとすれば、一人のメンバーは200回同じ作業を繰り返す。

流れ作業の組立ラインが非人間的だとしてチャップリンの「モダンタイムス」以来批判の対象にされているのは、このタクトタイムと同じ作業の繰り返しの特性にある。が、これに変わる生産システムは残念ながら発見されていない。

ボルボが実験的に1チームで1台の車を最初から完成まで全部組み立てる方式を試みたがコストと時間が掛かり過ぎ、とうてい採算に合わないので放棄された。

現在では、1時間ごとに5分の休憩があるし、メンバーはローテーションで複数の工程を受け持ち、7時間半の勤務時間中同じ作業ばかりを繰り返しているわけではない。

分業と同期化、部品の標準化がマスプロダクションを可能にした3要素で、このお陰で消費者は比較的安価に工業製品を手に入れることができる。

これを可能にしたのが1910年代に「科学的管理法」を書いたフレデリック・テーラーの考えということは前回書いた。次回は分業とタクトタイムについて、もうちょこっと詳しく書く。