特養にいる父に会いに行ったら、メガネを掛けていませんでした。
なぜか切符を探す父。
非接触型ICカードの提示により、切符の捜索は打ち切られました。
「お父さん、わたしそろそろ帰るね」
と声を掛けると、
「おれも一緒に帰るよ」
と言い出しました。
この時、わかりました。
切符を探していたのは、帰りたいからなんだ。

父の帰る家はもうありません。
仮に帰る家があったとしても、今の父は車いすだし、トイレの介助が必要なので外出すらままならないのです。
しかし、それを説明したところで認知症の父は納得しません。
そんな時は、とりあえずその場をしのぐ作戦。
娘「お父さん。今日はここで晩ごはん用意してくれてるっていうから。晩ごはん食べて、一晩休んで、明日の朝帰ったらいいんじゃない?」
父「へえーっ。晩ごはんが出るの?あんたが手配してくれたの?」
娘「うん。お父さんは今日、お風呂にも入ったでしょう?ごはんも食べていかないと。せっかく用意してくれてるんだから」
父「カラオケはあるのかな?」
カラオケ?
温泉旅行や泊まりがけの宴会に来た気分になったのかな?
娘「あるみたいだよ、カラオケも。お父さんも何か歌う?」
元気だった頃は、そんなにカラオケが好きだったイメージはないのですが、認知症になってからの父は一人でよく歌っています。
本当は歌うのが好きだったのかな。
