特養にいる父に会いに行きました。
父はメガネをしていませんでした。
普段メガネをしている人がメガネが見当たらない時なら誰でもそうだと思うのですが、メガネをしていない時の父は「メガネはどこだ」と探し回るのが常でした。
しかし、今回の父はメガネではなく別のものを探し始めました。
それは…。
切符です!

なんで?
せめて探すのはメガネであれよ。
何で切符を探すのよ。
「切符はどこだ」
父は言って、ポケットを探るような仕草をします。
「どういうわけか、おれは現金を持っていないんだよ」
父は普段はポケットに財布を入れていますが、この日はポケットに財布を入れていませんでした。
いずれにしろ財布の中身は空っぽにしてあるので、父の言うことは正しいです。
「100円もあれば切符が買えるだろう?」
うーん…。
時は令和。
100円では、初乗りの切符すら買うことは叶いません。
しかし、そんなことを父に言ってもらちが明かない。
娘「お父さん。今は切符じゃなくて、これだから電車に乗るのにお金はいらないんだよ」
(非接触型ICカードを見せる)
娘「お父さんも、前にこれで電車乗ったでしょう?改札にピッとやって」
父「おー。そうかそうか。じゃあ、いいのか」
と、父は納得してくれました。
納得してくれたように見えました。
そして、切符を探していた理由が後で判明します。
