第137審/三つの裁判③
嵐山がのらを取り調べているところ。のらのフルネーム、特に漢字は忘れがちだが、野村乃羅である。かわいい響きの名前だよね。
嵐山は、のらを告発した曽我部はぜんぶ吐いたといっておどかす。だから黙秘をやめろというはなしだが、曽我部もまたカンモクを続けているので、これはうそだ。そして偶然だが、これは前回、ヤクザの出雲が百井らを詰めていたときと同じやりかただ。
のらは娘に会えないことがいちばん悲しい。黙秘はつらそうだ。
のら担当の亀岡が九条に連絡をとる。大麻部屋の道具類は髭鼠が片付けており、ヤクザも警察もいちども目にしていない。考えてみれば奇妙な状況だ。とにかく証拠はないので起訴までいかない、のらも曽我部もカンモクパイの方向だよねという確認である。九条もそのつもりでいるようではある。
殺した百井をそのまま重機で穴に埋め、出雲らは縛り上げた求馬を車につむ。出雲は麻雀やってるときに百井を連れて出かけていたが、そのメンツは出雲を待ちながらまだ麻雀続けてるらしい。出雲はその電話の相手に宇治にかわるようにいう。出雲が宇治の番号を知らないということはないはずなので、待たせている弟ぶんのほうが宇治より上なので、その顔を立てた感じだろう。
めんどくさいからみかたをしながら出雲は、百井の仮想通貨を抜くことができるかと宇治に訊ねる。宇治の得意分野だからだ。スマホがあるということなのでかんたんだ。宇治ははなしを受けてからなにかを考え、どこかに去ってしまう。
出雲はまだのらは追わないという。警察がマークしてるだろうから…ということだが、じゃあいずれわかるとしても、ほんとにのらが逮捕されたことは知らないのだな。肝心の百井は殺してしまったし、「のら」という情報だけで彼女を見つけるのは難しそうだが、いまは百井のスマホがある。
話しているのは鍛冶屋だろうか。なんで百井を殺して求馬を生かしたのかと。百井のほうが使えそうだったのに。当然の疑問だろう。出雲は、百井は裏切るからだと応える。たしかに、じっさいのらを売ってしまったわけだし…と、やはり鍛冶屋が常識的な反応をみせるが、それだけではない。奴はSだと。サディストということかと思ったがそんなわけはない。
嵐山が百井と連絡がとれなくなったと話している。S、つまりスパイ、タレコミ屋だったのだ。
嵐山は百井のことはどうでもいいがおかげでのらまでたどりつけたと言っている。…よくわからないな。百井は、のらと会う前から売人で、嵐山とはその時代からの関係なのか?
亀岡がのらと面会。九条に確認したことを踏まえ、曽我部は黙秘するだろうからのらもそうしようとする。曽我部はぜんぶ話したとする嵐山の脅しはやはりただの揺さぶりだ。娘が心配なのらにはよく効く揺さぶりである。だが娘の梨沙は薬師前の働きで父親側が預かっている。今後親権とかとられてしまうだろうけど、とりあえずいまは黙秘だ。
ブラサンの散歩をしている九条に久々の壬生から連絡が。壬生もまずブラサンの様子を聞いているのがなんか和む。壬生も犬が好きだもんな。わがままに育って、たいそう元気なワンコである。
連絡は、宇治から聞いた内容を伝えるものだ。詳細はわからない。だが九条はそれを受けて方針を変える。曽我部に面会し、のらのことを含め、すべてはなすように指示するのだった。
つづく
チンコロしたのはふつうに百井だったか。
嵐山との関係性がどのようなものか、これだけではわからないわけだが、嵐山は百井のことを知っていたわけなので、いつでものらにたどりつけたんじゃないかという感じがしてしまうが、百井は百井で成功するためにはのらが必要だし、嵐山は嵐山で小物だから百井本人には用事がなく適当に泳がせて大物捕まえたほうがいいし、たがいに微妙な落とし所を探って利用し合ってた感じなのかな。
そして百井的には警察より厄介なヤクザが介入してきて、少なくともこの農場は潮時だと感じられたのかもしれない。で、見逃してもらうかわりに百井はヤクザとのらを売る。その際、じっさい現場にいるものが必要でもあり、そのために曽我部は育成されたのだろう。幼馴染もかんたんに売るし
百井、思ったよりぜんぜんクソやろうだったな…
九条は壬生からなにを聞いたのだろう。宇治は百井のスマホから仮想通貨を抜くと聞かされただけだ。百井が連行されていったことも知っているだろう。そのタイミングで、いかにもひと仕事終わりましたみたいな出雲が百井のスマホを手中にしているとなり、彼が死んだことを宇治は悟ったのかもしれない。しかしそれがどうして曽我部へのあの指示になるのか?
証拠はない、だから20日黙っていれば起訴されず出てこれる。それをやめるからには、この状況が変わってしまったということになる。それは、証拠が出てくるということを意味するのかもしれないし、「悪くなるのを避ける」のではない、なにかよい方向への戦略を九条が思いついたということかもしれない。
たとえば、いま嵐山は百井をどうでもよいと考えている。だが曽我部が嵐山の予想を超えて、なにもかも話したら、百井も当然そこに現れることになる。グレーな関係だった百井を探さなければならなくなったとき、嵐山はどういうことになるだろう。また探すということになったとか、なんらかの方法で百井のスマホの位置情報などというはなしになったとき、出雲はどうするだろう。弁護士は法的に弱い立場にあるものの権利を守るものだが、とりわけ壬生がからむとき、九条は攻めを行うこともある。最初からいい感情を持っていない嵐山や、京極の件で九条を疑っている出雲は、九条にとってめんどうな相手だ。こういう攻め手を選ぶ可能性も否定はできない。
ただ、そんなことのために曽我部をつかうのかなともおもう。ふつうに考えるとやはり百井が死んだらしいこと、またそのスマホを出雲が持っていることなどが引き起こす、曽我部にとってまずい状況を回避するためではないかと考えられる。金を抜いたあと、出雲が嵐山にスマホを渡すとか、そんなことだろうか。
ひとつ気になるのは、タイトルが「三つの裁判」であるということだ。裁判じたいまだないが、井出はともかくとして、とりあえず逮捕されているのはふたり、のらと曽我部だけだ。つまりもうひとり逮捕者が出る。
すでにのらと曽我部は相互依存的な、囚人のジレンマ的状況にある。現実には代理人である九条と亀岡がやりとりをしているのでパレート最適を達成できそうだが、これが崩れる可能性を九条は読み取ったのかもしれない。そこで先手を打ったのかも。
ただこれは、どうあっても亀岡との関係悪化は避けられない。黙秘になると、確言まではいかなくともくちにしたあとなのだから。逆に九条を信用した亀岡はのらに損をとらせることになってしまう。それでいいと九条は考えそうだが、第三の要素の事次第によっては、これが天下三分の計的な、新たな均衡状態を呼ばないとも限らない。要するに、まだなにもわからないのであった…
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