今週の九条の大罪/第102審 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第102審/生命の値段⑪

 

 

 

白栖病院に居座る有馬を追い払うために九条があらわれたところだ。有馬の前には正孝と、相楽の事務所の朝倉弁護士がいる。相楽は九条をしたに見ている感じだったが、朝倉はどうだろう。亀岡とか薬師前とか、敵意むきだしのまま九条がちょっと好きみたいな女性も多いけど、朝倉もほとんど同タイプになるような気がする。ぜんぜん女性あつかいしないのがいいのだろうな。

 

有馬を、九条は秒で追い出すという。建前上、取り立てにきているだけの市民を、いったいどうするのか?

方法は、意外とはっきりしたものだった。裁判所に面会強要禁止の仮処分申し立てをしてきたと。内容的には出禁みたいなものらしい。だが、有馬もよく見ているもので、依頼を受けたその足で来た口調だったのに、そんな時間あるわけないと、もっともなことをいう。だが嘘ではない。薬師前にそうお願いしてきたのである。

だとしても、そうかんたんに引き下がることはできない。警察に通報したらすぐ逮捕だと朝倉が応援に入る。しかし、有馬は逮捕を恐れているわけではないのである。そうして1分がすぎた。秒で追い出せなかったことを有馬はいうが、九条は60万秒も秒は秒だと屁理屈をいう。話しつつ、有馬は「隙がない」という。はなしの筋道に隙がないという意味かとおもったが、動きのはなしだったらしい。空手かなにかやってるのかと訊ねている。

有馬の連れの、ガタイのいいものが、ずっと舐めてるなと、九条に歩み寄り、強く肩を弾く。が、後ろに倒れつつ、相手の手をつかんだ九条は、じぶんの体重を利用してそのまま相手を引っ張り、腕をひねりあげる。ぶつかりおじさんに条件反射してしまったと、ひとを食った態度にかわりはないが、流れるような制圧術である。

男は訴えるぞというが、民事でも刑事でも争うとへらへらしたなかにすごみを含めて九条はいうのだった。

 

呼吸ひとつ乱さず、一貫して冷静な態度で、九条は続ける。院長逮捕、射場らが重要参考人として引っ張られている状況である、このあと病院には大規模な捜索差押が実施されると。そうなると、部外者は強制的にしめだされる。要するに、ここでがんばっても意味がないのだ。合理的な人間のはずだからわかるだろうと、烏丸もまた冷静にいうのだった。

 

そうして、有馬は帰ることに。ついでに、なにもしてないが、朝倉も帰る。有馬は特に悔しいというふうにはおもってないっぽい。それより次の一手だ。九条や烏丸がいうことは、彼も最初からわかっていたのだろう。あそこでがんばっていたのは、一種の取立ての作法みたいなものだろう。お金ないですか、じゃあまたあとで、というふうにしていたのでは、面目がつぶれて、こういう仕事はできない。こちらにはなんとでもなる準備があると、そういうところ見せなければならないのである。

 

 

次に病院にあらわれたのは蔵人なのであった。

 

 

 

つづく

 

 

 

九条は射場の代理人であるので、兄弟対決がようやく実現することになりそうだ。

とはいえ・・・ファクタリング詐欺からぼくには難しいはなしが続いているので、しばらくはただふたりの発言を追うだけの感じになりそう。

 

九条のあのからださばきはなんだろう。ちからはほとんど使っていない。押されて、倒れそうになる勢いのまま相手の手をつかんで引き倒し、途中で少し踏ん張って相手のからだを前方に流して後ろ手にとった感じだ。そもそも、あんな大柄の半グレみたいな男に肩を押されて冷静でいられることがふつうではない。ただ、すべきことは決まってはいるのだろう。これは九条の「対応」するものとしての身振りとみるべきかもしれない。ふつう、あのようなたたかいの現場では、双方からエネルギーが出て、ぶつかりあう。しかし九条は、相手の動作をちょっと編集しただけだ。暴力のエネルギーを、みずから生み出すことはない。だがそれが発生したときに、みずからは少しも暴力的エネルギーを発することなしに対応するすべは心得ているのである。

 

部下によれば有馬はあたまのいい男で、烏丸も、合理的な人間なのだろうとしていた。それが、居座ってもしかたない病院に居座っていた。ここには、反社としての面目を保つための作法や様式のようなものが感じられる。威嚇で飯を食うものには一貫性が求められる。こういう場合は許してくれる、という前例をつくってはならない。これはウシジマくんのギャル汚くんで描かれたことだ。だから、ある意味では、意味のない行為を続ける有馬にも、九条は必要だった。ここには医院長はいない。じきに検察がやってきて追い出される。なんなら逮捕される。そのことは、有馬もわかっていた。しかし反社として引くわけにはいかない。そこに、腹立たしいほどの冷静さで、九条がふらふらやってきたわけである。悔しさよりもどこか晴れやかさが勝るような表情で有馬が退却するのは、こころのどこかで九条を待っていたからなのかもしれない。

 

朝倉は、けっきょくなにもしないで帰ってきたことになるが、九条の判断で問題が解決したことを相楽がどう受け取るか、気になる感じもする。金が入ればなんでもいい相楽なら気にしないようでもあるけど、相手が九条だとどうだろうな・・・。

 

 

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