今週の刃牙らへん/第4話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第4話/腕っぷし試し

 

 

前回

 

 

更新が遅くなってすみません。最近また眠れない感じが続いててうまく時間配分が・・・。もう火曜なので、短めにさくさく書きます。

 

 

鎬昂昇がジャック・ハンマーとたたかう!みたいなはなしになっていたとおもうが、今回はどちらも登場せず、花山組の描写からはじまる。なんか色黒のヒゲ男が用心棒として雇ってもらおうとしているところだ。バキ外伝、花山が主人公の『疵面』ではよく見られた風景である。たいがいは身の程知らずの色黒だったが、今回の色黒はわけがちがうようである。バキと縁があると。時代劇じゃあるまいし、用心棒なんていまどき・・・みたいなことを木崎はいって追い払おうとしているが、本音は、組長が日本最強の花山だからだろう。

隣室ではなしを聞いていたという花山が入ってくる。そして、花田と呼びかけるのだった。花田だったのかお前は。久しぶりやらよく覚えていないやら見た目が変わっているやらでただのモブの道場破りに見えた。

花田は本部の弟子で、初期のころはそうとうに強い感じで登場した天才キャラである。が、けっきょくは斗羽さんのかませ犬になってしまい、以後は加藤とたたかったくらいで、いるのかいないのか、花山の顔の傷くらい不安定な存在になっていた。しかし、考えてみれば本作は『刃牙らへん』なのである。鎬昂昇はともかくとして、花田のようなものに照明をあてるのはおもしろいかもしれない。忘れてるキャラはたぶんまだたくさんいる。

 

花山は、銭に不自由しているのか、腕っぷしを試したいのかと、花田に訊ねる。花田と花山が話していて、書いていても読んでいても混乱する。強くてメガネでかっこいいのが花山で、かつて強くて色黒ヒゲで浮かない顔をしているのが花田だ。

花田はもちろん花山が誰だかを知っている。じぶんの要求が後者、腕っぷしだとしたら?ということで、ふたりは駐車場で向き合うことになるのだった。

 

うれしい気持ちを隠せずぺらぺらしゃべる花田に、木崎がすでに開始している、舌を嚙むぞと、警告する。まだしゃべる花田の顔に花山の蹴りが伸びる。花山の場合、蹴りはナチュラルに出てくる技ではないので、目を覚まさせた感じだろう。花田はぎりぎりでかわしたが、頬がぱっくり切れてしまった。鈍重そうだが、花山理論では破壊力にはスピードもかかわっている。意外と速いのかもしれない。

 

なぜか花山もちょっとうれしそう。格的にはかなり開きがあるようにおもわれるが、作中デビュー時のことをおもえばそう差があるものでもなく、花山もそれをわかっているのかもしれない。

メガネを木崎にパスし、花山がふりかぶる。花田は伝説のふりかぶりが見れて大喜びだ。圧倒的なタフネスに支えられ、防御もなにもなく、ただ思い切り、ぎりぎり引けるところまで拳を引ききって解き放つ、花山にしかできない行為だ。

どこで聞いたのだか、花山からはカウンターがとれない、というはなしを花田は思い出す。突進するダンプからカウンターがとれないように。だが、花田はやってのける。岩みたいな拳をかわして抱え込み、背負い投げするのであった。

 

 

 

 

つづく。

 

 

 

ここで花田というのはサプライズだったけど、『刃牙らへん』はそういうはなしなんだよ、というわかりやすい表示となるものかもしれない。かつてガイアが何十巻ぶりかで突然あらわれてシコルスキーを圧倒し、登場はしていたけどひどいあつかいだった本部が死刑囚最強とおもわれた柳を半殺しにしたことがあったが、要するにああいうことを、本作ではやっていくのかも。

 

これはカウンターということでいいのかな。意外なアプローチ、でもないのかもしれないが(バキがむかしやっていた)、花山がふりかぶり、また拳を放り出す一連の場面では、なぜか花山に攻撃をさせてしまうという法則は、たしかにあった。ガードするにしても、花山が拳を放つことそれじたいは、みんな最後まで見届けてしまうのである。唯一の例外は武蔵だが、武蔵も最初は見届けてしまっていた。そのうえで、これ以上くらうとまずいということで余裕がなくなり、遊ばなくなったみたいな流れだったのだ。みもふたもないことをいえば、花山があのようにゆっくりふりかぶっているあいだに、2、3歩下がってしまえば、それで終わりなのである。

ここには、なにかこう、贈与論でいう反対給付義務的なものがあるのかもしれない。贈与論を持ち出すとはなしがややこしくなるので(そもそも贈与論は一対一の状況を想定していない)、端的に負債感といったほうがいいのかな、胸襟を開いてじぶんの恥ずかしいところまで開示してくる相手に対してはうっかりこころを開いてしまうように、ファイターは花山の心意気につい応えてしまうのである。花山のふりかぶりは、これからなにをするかということが非常に明確だ。これから、大きくふりかぶって、拳を解き放ちます、ということをひとめでわかる明確なかたちで、無防備なまま、しかもゆっくり示してくるのである、相手はそこに負債感を覚え、それを返済するために、その「これからやってくるもの」に応えようとしてしまうのである。

 

今回花田は花山をダンプにたとえていたが、そもそも、ダンプからカウンターをとるべきなのかという問題がある。歩道を歩いていれば、ダンプの正面に立つこともない。ダンプからカウンターをとれるかどうかという問いじたいが、ふつうはあらわれないのである。ここでそういう問いがあらわれるのは、その負債感ゆえであるとおもわれる。ファイターは、ダンプで突進してくる彼をみて、車道に出ざるを得ない心理に陥るのである。これは、考えてみれば花山の強さの由来なのかもしれない。花山の心意気ゆえに、相手はみんなフェアな態度をとってしまう。いまからやってくる拳を、その威力が尋常ではないと知りながら、その場を動かず待ってしまうのだ。

花田はその現場でカウンターを実現した。この投げには花山じしんの拳の勢いものっているので、交差法以上にカウンターらしいカウンターとなっている。ただ、ダンプのたとえでいえば、チキンゲームで、衝突すると見せかけてぎりぎりでかわし、壁に激突させたようなもので、ある意味花山の魔術的仁義を裏切るものにはなっているとおもわれる。だが、花田は本部の弟子だ。本部というと戦場格闘技なので、武器術にも長けるものであり、なんでもありなら武蔵にも勝ったことのある強者である(逆に、武器がそれほど一般的ではない状況ではあまり強くない)。花田には、同じく弟子であるガイアのようには、そういう気配がないが、武器をつかえるかどうかはともかく、その精神性は継いでいるはずだ。それは、戦場のリアリズムだ。そこでは、相手の心意気に引っ張られてついこちらも「最善の方法」ではない行動をとってしまう、などということは、ないとはいわないとしても、少ないだろう。とはいえ、その裏切りはわずかなもので、花田は、花山の伝説の拳を前に、多くのファイター同様無邪気に対応していた。このカウンターはその無邪気さと戦場格闘技のリアリズムをほどよく混ぜたものになっているように見える。

 

ただ、驚いてはいるが、木崎にぜんぜん焦っている様子がないので、ダメージはなさそう。まあ、ないだろうな。武蔵にずたずたに斬られてふつうに生還してるひとだから・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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