なかなか余裕がなくて、書評形式のものが書けないのだけど、そろそろ年末の記事に向けて一年のまとめをしなければならないので、まとめの準備というか、思いつくかぎり最近読んだおもしろい漫画を列挙してみるぞ。
ふしぎの国のバード 1巻 (ビームコミックス) 670円 Amazon |
最近知った作品のうち、いまいちばん新刊が楽しみなのはこれだな。こないだ3巻が出たばかりで読み頃です。
開国したばかりの、文明開化期の日本を旅した実在の冒険家、イザベラ・バードというひとのおはなし。それも、横浜とか江戸をちょろちょろっと訪れて冒険家ぶるわけではなく、ほとんど西洋人は未踏といってもよい、会津とかそのあたり、本州の奥地まで、伊藤という有能な、これも実在する通訳を連れて踏み込んでいく。記録文学としてイザベラ・バードの本じたいはけっこう出ていて、どれが直接の原作にあたるのかわからないが、とりあえず僕は講談社学術文庫の「イザベラ・バードの日本紀行」を寝る前に拾い読みしている。これはイギリスにいる妹に向けた手紙という形式になっていたので、漫画のほうでいうと3巻でようやく郵便のある町について送ることができたアレにあたるのだろうか。
原作よりややマイルドになっているが、バードは、いかにも西洋人らしく、西欧至上主義というか、視点に偏りがないではないのだが、それを含めても、やはり世界各地の異文化を見てきただけあって、ほかのイギリス人に比べたらはるかに寛容だし、食事とか美的感覚にかんしての悩みはむしろほほえましいものさえある。イギリス人の視点からしたら日本人の醜さはたえがたいものがあるだろうが、それもまあ正直な意見であって、だからといって異国の文化に敬意を払っていないという感じはないし、むしろ正直なことに好感がもてる。そして、漫画ではおそらく誇張されている伊藤との関係もすばらしい(原作では、僕が読んでいるところではようやく出てきた感じ)。伊藤は主人公格にしてはけっこうしたたかでがめついところもあり、西洋への強いあこがれからか、日本の田舎者をバカにしているようなところがある。それを、バードが叱ったりするわけである。
外道の歌(1) (ヤングキングコミックス) 0円 Amazon |
善悪の屑はウシジマくん関連の検索をするとバナーなどでよくぶつかっていた漫画で、うちの店でもずっと品薄だったのが、ようやくまとまった数になってきたから、読んでみた。ほとんどがじっさいの事件をモデルにしていて、同情の余地がない事件の犯人たちを、法の外から、同様に非正義であるところの主人公たちが「復讐屋」として裁くというものである。これも記事にしたい気持ちはあるのだが、まとまらないような気がして、なかなか、できていない。
ラブラブエイリアン(1) (ニチブンコミックス) 637円 Amazon |
ドラマもやっていたようだが、この漫画はマジでおすすめである。小学館の「深夜のダメ恋図鑑」みたいな、女の子たちの歯に衣着せぬ言動がバカな男たちをぶった切る、という形式は、なにかはやりつつある感じがしておそろしいが、ラブラブエイリアンはそこに小さくてかわいすぎるエイリアンが加わっている感じだ。文字数多めで読み応えがあり、女の子たちの復讐というかおもいをエイリアンが可能にしてしまって、はなしがむちゃくちゃになって、でも女性独特の(というと怒るひとがいるかもしれないが)非論理性というか、事実をそのまま受け容れる能力がそれをなんでもない日常にしてしまう。語りだすと止まらない漫画だが、とにかくエイリアンがかわいい。これはかわいすぎる。
山と食欲と私 1 (BUNCH COMICS) 562円 Amazon |
信濃川日出雄は「ヴィルトゥス」以来追っている漫画家だが、なかなかヒット作がなかった。
「少年よギターを抱け」も、おもしろかったのにスピーディな終わり方をしてしまったし・・・。そんななか、ようやくこのヒット作が出てきた。ヒット作といっていいとおもう。
ヴィルトゥスやSINで見せていた狂気表現なのだが、たとえば女の子が笑っている描写でも、心の底から笑っているのかどうか、つまり、表情と内面が合致しているのかどうかわからない感じがこのひとにはあって、それがある意味では長所であり、ある意味では短所でもあったのかもしれない。短く、わかりやすくいうと、笑っていても、実は裏では殺人狂だったりしそうな雰囲気がどこかあったのですよ。それはひょっとすると、僕がヴィルトゥスを読みすぎたせいかもしれない。もっとかんたんにいえば、作り笑いに見えてしまうのだ。でもそれは、技術的な問題ではないだろう。というのは、作り笑いを描くというのは、非常に難しいことだからだ。笑いひとつとっても、このひとの描く人物の複雑さが受け取れるのだ。
それが、本作でよりシンプルな笑顔になっているとおもう。それというのは、主人公が社会人であるということもあるだろう。基本的には、山登り+流行りのグルメ漫画、というところなのだが、筋書的には、日比野鮎美は会社員であったうえで山登りをして、頂上でコーヒー飲んだりしているわけである。社会人にとって作り笑いは自然なことで、それが自然なことであるという前提ができたことが、頂上でこころの底からの笑顔を見せるのだ。もともと女の子の絵がかわいらしいひとなので、僕は山登りにもグルメにもあんまり興味はなかったのだが、リラックスして読むことができる。
社畜と幽霊 1 (ヤングジャンプコミックス) 648円 Amazon |
このへんもすっごいおもしろかったなあ・・・。でもキリがないな。このあたりでとりあえずおしまい。