今週の闇金ウシジマくん/第353話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第353話/復讐くん 後編






 



 



 



 


こっそりマサルと交流して打倒丑嶋を画策する獏木なのだが、ヤクザの先輩からプレッシャーをかけられて、丑嶋よりもまずは右目をつぶされた肉蝮を殺したいとマサルに打ち明ける。

マサルはそのことについて返事をしなかったが、今回マサルは行動に出ている。女はデリヘル嬢っぽいが、ふたりの話しかたからするとけっこう前からの知り合い(互いに客?)なのかも。そしてマサルが、ヤバイのにつきまとわれて大変だったらしいな、というふうにはなしをはじめる。肉蝮のことだ。それがいつのころのはなしであるのかはよくわからない。マサルはまいたんから聞いたという。まいたんというのは、甘いパンである。ギャル汚くん編でネッシーと組んで美人局をしていた、無邪気な女の子である。ネッシーは小川純にお友達として紹介されたため肉蝮にボコられた。現場にいたものかどうか定かではないが、まいたんはその状況を知っている。つまり、間接的にではあれ関わっている。まいたん、目をつけられなくてよかったな。ほんとうに。



 


ともかく、女は肉蝮にレイプされたのだという。あまり美形という感じではないが、なにがそこまで肉蝮にさせたのだろう。肉蝮は地元では有名な100人斬りのレイプ魔なのだそうだ。誰某がレイプされた、というはなしを友達伝いに聞いたとしても、ことがことであるだけに、通報しないということも多い。思い出したくもないし、誰かにくわしく説明するなんて考えられない、という反応がほとんどなのだ。加えて、相手があんな男であって、行為後に脅されるようなことがあれば、大半の女の子は沈黙してしまうかもしれない。

女はよほど気に入られたらしく、毎晩家にやってきてお尻を犯されたのだという。ちょっと、凄絶すぎる過去だけど、とりあえずいまは家出をして逃れている状態らしい。彼女が説明するには、家が近所だったから毎晩やってきたということなのだが、「家」・・・? なんか、てっきり肉蝮は住所不定かとおもっていた。で、強盗と恐喝で渡り歩いているようなイメージ。家があるのかあいつ。



 


平気なようで、肉蝮に対する恐怖が消えたわけではない。女もよく見ると震えているし、仕事でもお尻をつかったものは禁止らしい。地元の先輩からそいつとは絶対関わるなといわれたから15歳で家出したと。もう関わっちゃってるわけだけど、あんなのの対処なんてふつうの人間ではできない。それからどのくらいたっているのか不明だが、今も電話やメールはガンガンくるらしい。そういえば肉蝮は本質的にストーカーだったもんな。なぜ番号をかえないのかというマサルの問いに、他の人に伝えるのが面倒というか悪いというか・・・というよくわからない回答。たぶん、こういう決然としない態度や、不感症気味な応答に、肉蝮の性癖のなにかが反応したのかもしれない。



 


マサルはその肉蝮に用がある。女が風呂に入っているあいだに、その携帯をつかって、女のふりをして公園に呼び出す。



 



 


さて、いっぽうの獏木。ふたりの先輩とともに出所する飯匙倩(ハブ)を迎えにきている。以前より髪が短くなっているような感じもするが、髪の染め方も以前と変わらないので、特に坊主にしたりとかはなかったらしい。ふつうが度の程度のものか知らないが、ハブはまず迎えの車が小さいことを指摘。続けてこのあとの放免祝いがしけたホテルであることにも文句をつける。彼らによれば、「ご時世」がそうさせるらしい。あんまり目立つ車に乗ると問題だし、ホテル側でもそもそも会場を貸してくれないのだ。前回書いたように、ヤクザものは「ヤクザっぽい言動」をすることでヤクザに「なる」。だから、ヤクザであることを名乗ることそれじたいを禁止するような法律は、じっさい有効なのだろう。しかしヤクザからすればたんに見栄とかいう以前に死活問題だ。というか、こちらとしても一目でヤクザだということがわからない状況が続いたら、むしろトラブルは増えてしまいそう。苅部とか、相手がちゃんとヤクザな格好してくれてないとふつうにからんじゃうでしょ。

ハブが獏木の眼帯に気づく。というか、今回気づいたんだけど、獏木って中年会社員くんのときは後頭部の刈り上げみたいなところも黒髪じゃなかったかな・・・。ちょうどむかしのハブみたいな髪をしていたような記憶が。あとで確認しよう(単行本が見つからない)

獏木は気まずそうに、ぼそぼそと肉蝮にやられたということをいう。それを、前回からんでいたヒゲの男、家守(やもり)が再び責める。ヤクザが素人にケンカ負けて下向いて歩いてんじゃねーよと。もちろん、それをハブは聞き逃さない。それはオレのことかと。ハブもまた、ヤクザではないという意味合いで「素人」であるところの丑嶋に一発殴られて、仕返しできないままでいるのである。しかし、「ヤクザが素人に負けてはならない」というぶぶんに関しては納得している様子だ。じぶんは、丑嶋をぶち殺さないかぎり、ヤクザとしてやっていけないと、そんなようなことをハブはいうのだった。



 



 


約束どおり公園には肉蝮がやってきているが、もちろん女はこない。物陰からこっそりとマサルが様子をうかがっている。すっぽかされたと気づいた肉蝮は、根元の重いセメントごと土のなかに埋められている、ブランコを囲う鉄の柵を引っこ抜く。いったいこんなことをするのにどれほどのちからが必要か見当もつかないが、肉蝮はそれをばらばらに解体し、凶器のように片手でもつ。ほんとにバケモノですね。

そしてそれを走っている車に投げつけ、停止させ、運転手の男にタクシー代か車を寄越せと、当たり前のように注文するのだ。

そこへ、マサルが歩み寄る。運転手が去ったあとなのかどうかはよくわからない。約束をすっぽかされたことに怒っている肉蝮は、マサルがじぶんをはめた張本人と決め付け、ぶち殺すと宣言。しかしマサルは冷静に会話を続ける。じぶんはあんたに協力しようとおもってきたのだと。一緒に丑嶋をぶっ潰そうと。



 



 



 



 


復讐くんはここまで。10月から新シリーズ再開ということです。




 


なるほど・・・、こういうはなしを、テーマ性をもった長いはなしのなかに組み込むのはたしかに難しいかもしれない。とりあえず、丑嶋に敵対するひとたちの状況を整理し、いつでも最終章をはじめられるよう準備をしたと、そんなところだろうか。マサルに獏木、ヤクザのハブに最凶の男・肉蝮・・・。こりゃー、さすがの丑嶋社長もピンチじゃないのかな。滑皮がかかわってないだけマシだけど。もし社長がこれを切り抜ける術があるとしたら、結局のところこの4人は利害は一致してもエゴのかたまりだから、ぶつかりあうかもしれないという点だけ。特にハブは、「丑嶋の死」という結果ではなく「丑嶋を殺す」という行為が目的なので、ほかの3人を邪魔におもう可能性が高い。ヤクザ組織を本格的に敵にまわしたらさすがの肉蝮だってどうにもならないだろう。社長がこの状況を切り抜けることがあるとすれば、もうこれしかない。万が一、4人が組むようなことがあれば、それはたいへんだが、カウカウのチームワークもなかなかのものだ。ついに「キレるとなにするかわからない」加納がキレるときがくるのか?!



 



 


肉蝮は相変わらずのアウトローっぷりだが、やや意外な面も。まず、ギャル汚くん当時は、レイプ等の描写はいっさいなかった。とにかく金、金っていう感じで、そのついでに暴力衝動を満たしているイメージ。それが、地元では有名なレイプ魔だという。三蔵だってそんな称号はなかった。そしてことがレイプだというのも、肉蝮の最低最悪さをあらわしているようでもある。これが「地元でも有名な殺人狂」だとしたら、テキサス・チェーンソーみたいな田舎町が舞台でない限り、法治国家では成立し得ない表現になる。有名なら、捕まるからである。けれどもことが性犯罪となると、被害者は友達だけに打ち明けて、誰にもいわないでくれと口止めする可能性だって出てくる。そうして、「地元では有名なレイプ魔」という形容が成立する。

それから、マサルがあらわれたときのリアクションである。彼は、じぶんがはめられたのだと推測し、「何人だ?」と問う。全員コロスと。もちろん、レイプは犯罪だから、その件で強面の男が出てきたのだと考えた可能性もある。しかし即座に「何人だ?」となるというのはいささか奇妙におもえる。肉蝮もまた丑嶋以上にを多くのうらみを買っていることだろう。そして、おそらく彼にはその自覚があるのである。それがけっこう意外なのだ。それとも、こういう経験ははじめてではないということかもしれない。たとえば、ネッシーのように理不尽に暴力をふるわれた男が、仲間を集めておそいかかったこともこれまであったのかもしれない。まあ、現状肉蝮は元気に鉄棒引っこ抜いているわけだから、失敗したわけだが。



 


マサルの誘いに対して肉蝮はどう応えるだろうか。マサルははなしの流れから、タクシー代はじぶんが出す、というようなことをいいながら肉蝮に接近していった。これは、ちょっとことばのあつかいをまちがえると危険なひとことである。そうでなくても、ぼこぼこにされて有り金全部もってかれないとは限らないのだから。そして、もし肉蝮がマサルの誘いに乗るとすると、肉蝮は、ひとりでは丑嶋を殺すことができないと冷静に考えていることになる。これも少し意外だが、これまでの経過を考えると正しいかもしれない。中年会社員くんラストで描かれたように、肉蝮はずっと丑嶋をつけていたようである。つまり、襲う機会はいくらでもあった。三蔵みたいに地元をうろうろして丑嶋を探しているわけではなく、すでに見つけているのである。ところが、襲わない。かわりに、丑嶋と一瞬たたかった獏木を襲い、じぶんと丑嶋どっちが強いかたしかめている。これもまた、おもえば、肉蝮の不安というか、ある種の冷静さを示していたかもしれない。丑嶋は実際強い。そしてあたまも切れるし、優秀な仲間が何人もいる。対して肉蝮はひとりである。無理して小指逆立ちしちゃうような肉体信仰の強い肉蝮でも、徹底的に痛めつけようとおもったら、そうかんたんにはいかない。

マサルは獏木と通じ合っている。そして、獏木から肉蝮を殺したいと告白されたところだ。そのときに、肉蝮との一件をくわしくきいたかもしれない。マサルはそれを踏まえて、以上のようなことを考えたのだ。肉蝮は相変わらず丑嶋を狙っているようだが、確実に殺せるという決定的なものに欠けて、もう一歩踏み出せないでいるのではないかと。肉蝮と接触するのは誰だって危ない。ヤクザの獏木だって平気で刺しちゃうんだから。マサルとしても、それだけ丑嶋を潰すというのがたいへんな仕事だということをよく理解しているということだろう。



 



 


問題なのは獏木である。なんだかちょっとかわいそうにさえなってくるような立場だが、彼はマサルにその肉蝮を殺したいと打ち明けているのである。マサルとしてはたぶん、獏木を通してハブの行動をつかみ、あわよくば上手く利用しようとしているのではないかとおもわれる。仮にマサルが正直に獏木と組んで肉蝮を闇討ちしても、あの元気な様子を見る限り返り討ちだろう。それよりも、マサルは獏木の肉蝮に対する殺意さえ利用するつもりでことを進めるのではないか。いずれにしても、肉蝮に「話しかける」というのは、よほどのことがないとマサルでもしないだろう。つまり、それだけの計画が、おそらくマサルのうちにはすでにある。



 



 


このエピソードが次回へのブリッジ的な役割だとしても、ひとつ気になるのは、滑皮である。連載当初から丑嶋の最大のライバル的な立ち位置で描かれてきた危険な男だ。これが、復讐くんには登場しなかった。というのは、たぶん滑皮の丑嶋への感情が復讐心ではないからである。前回、獏木の先輩ヤクザは、鼓舞羅の熊倉襲撃事件について丑嶋がかかわっているのではないかと看破していたが、その件で今後滑皮がかかわってくる可能性はある。彼はその現場にいたのだし、そのせいで指をつめることにもなったのだから。ただ、その感情はやはり「復讐」とはちがうだろう。なんというか、互いに非常にうっとうしい存在、という感じではないかとおもう。ふたりはある意味よく似ている。キレモノで、アウトローで、愛沢いわく人の頭に向けて金属バットをフルスイングできる地元でただ二人の存在。だから、たとえばハブがメンツを守るために、肉蝮が敗北の悔しさのために、丑嶋を狙うのとはまた異なって、正しくライバルなんではないかとおもう。このまま次回最終章に入るものかどうかわからないが、そうだとしてこの滑皮がどうかかわってくるかが最大のポイントかもしれない。ただ、今回が「復讐くん」であるのだから、次回は復讐くんではないことになる。彼らは次の主人公ではないのだ。



 



 



 


復讐というのは、一般的に、やられたぶんやりかえすということである。要するに暴力的な「お返し」である。「借りを返す」ともいう。おもえば丑嶋は金だけでなくうらみも方々に貸し付けているわけである。ただしこの貸しは返済期限はないし、丑嶋のほうで催促したりもしない。つまり、借りっぱなしで問題のないものである。だが、借りたほうがそうはいかない。それでは「わたし」というものが成立してゆかないと、そのように考えるひとにとっては、借りっぱなしではいられない。獏木やハブは、ヤクザであるから、「お返しをする」という身振りをとって「見せる」ことが重要になる。そうしなければ「わたし」はいつまでたっても丑嶋に借りたままの不完全な存在である。たほうでマサルは、借りを返すことが全人生的な目的になっている。カウカウで修行を積み、アウトローとしての強さも身につけ、成長していったのも、すべて丑嶋に借りを返すためである。したがってマサルは、復讐を果たした瞬間、「わたし」ではなくなる。いまはまだ遠く届かない丑嶋という強者に打ち勝つために腕をみがく、そういうありようが報われたとき、ではマサルになにが残るというのか。なにかが残るかもしれない。けれども、それはもはや、カウカウにいたころのマサルではない。これまでのマサルは全人格的に、「機会をうかがい、雌伏に甘んじる」という状態だった。つまりマサルは、いまのこの「わたし」ではないじぶんを手に入れるために、そしていまの「わたし」を否定して殺すために、復讐をすることになるのである。しかし、その「わたし」を否定する「丑嶋打倒」という事態は、どういう技能によって手に入ったのかというと、丑嶋について仕事をする過程で身についたものである。つまり、これは「親殺し」なのである。現状のマサルは、過去がどうあれ、丑嶋なくしては存在していない。その「現状のマサル」が、肉蝮まで手中に収めるほどの大きな男になれたのも、カウカウで働いているから。その、丑嶋が授けた技法によって、彼は丑嶋を殺そうとしているのである。そして、マサルが丑嶋を殺し、存在を否定するということは、それまでのマサルじしんをも否定し、抹消するということにほかならない。

肉蝮については考えるだけ無駄だろうが、彼のばあいは肉体信仰が強いので、あるいは「無敵の自分をとりもどしたい」とかそんな欲望かもしれない。いずれにしても、やはりなにか負債を抱え、それを返してあるべき姿に戻りたいというところだろう。こうしてみると、おなじ「復讐」でもマサルのものは異質だ。ほかの三人は「本来あるべき姿」に戻ろうとしているのに、マサルは完成しつつある「あるべき姿」を抹消し、「未だ存在したことのない姿」になろうとしているのだから。



 



 


まあ、こんな短いおはなしであんまり深くかんがえてもしかたない。10月を楽しみに待つことにします。





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