今週の闇金ウシジマくん/第351話① | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第351話/フリーエージェントくん31









長かったフリーエージェントくんも最終話です。

父親の入院保証金を払いに病院にむかう途中、村上塾の塾生だった佐藤朋子につかまる村上仁。あのとき払った金を返してほしいというのだ。情報商材販売からお金儲けにすすむ道のりは、案内はするけども、原則的に自己責任であるというのが基本だった。それに仁はもうその世界から足を洗っている。第一、朋子も多少はそこから客を紹介したりして、プラスになったときもあったはずである。中身のない、マルチ商法と区別するためだけにくちにされる情報商材という媒介であるとはいえ、ずいぶん時間がたってから、あのとき買ったのはまちがいだったから返してくれというのはちょっと成り立たない感じがする。というか、そもそも情報商材は「返品」ができないんだなとこのことでよくわかる。その情報がほんとうに100万の価値があり、仁に返すことで朋子がきれいさっぱりその内容を忘れるということなら、仁はこれに応じてもいいかもしれない。しかしそうではない。理不尽な返品も売り手としては迷惑だが、しかし「返品ができない」ということが最初から商品の性質として組み込まれているというのも、なかなか不思議なことだ。それはすなわち商品ではないということなのかもしれない。



朋子は引き下がらない。背後には丑嶋がいるのである。やはり朋子は、やりくりに困ってカウカウの世話になり、社長にいわれて仁のところにやってきたらしい。もっと尾を引くかとおもったが、仁はすでにカウカウへの借金は返済しているらしい。カウカウへの借金があとまわしになっているかのような、一種のフラグの描写はいったいなんだったんだろう。

丑嶋はめざとく仁のポケットに入っている金に気づく。そこへ、仁が忘れていった診察カードを届けに母親がやってくる。

遠くから少し状況を見ていたのかもしれない。息子が他人に迷惑をかけてるっぽいことはわかっている。そのお金を払ってわびなさいと母はいう。

母親は土下座状態の朋子に金をわたしつつあたまを下げ、仁にも謝るようにいうのだが、その金をすぐに奪い取った丑嶋は、何に謝るのかと訊ねる。迷惑をかけたんだから謝るのは当然のことだと。しかし丑嶋はいう。







「おい村上。お前、なんか悪さした訳?




マサルから聞いたぜ。お前は自分の全人生を賭けて勝負したんだろ?



すげーじゃねぇか。なんもしてねぇーやつよりよっぽどマシだ」






これは意外だ。すごく意外だ。てっきり、戌亥なんかと話してる様子からして、マヌケが馬鹿げたことしてるくらいにおもっているものかと。しかし、たしかに丑嶋は真面目に生きてるやつが好きで、分不相応な一攫千金的スタイルに冷たいところもあるが、おもえば小川純にかんしては、「がんばりやさん」な彼をある部分では買っている、みたいなこともいっていた。金の魔力を知り尽くしている丑嶋であるから、そこにおいて、小ずるく立ち回るものには容赦ないが、保身を考えずに突き進むものにかんしては、ある程度寛容なのかもしれない。



丑嶋がさしていた傘を自転車にのって待つ朋子の娘の肩におく。けれども娘は、傘をそのままに自転車からおり、丑嶋をいちどにらみつけてから母親のもとにむかっていく。このやりとりはいったいなにを意味するだろう。ともかく、金が手に入ればそれでいい、丑嶋は去っていく。

一連のやりとりのなか存在感を消していた仁は、今後の生き方について考えている。







(弱い人間にババを引かせる稼ぎ方はうんざりだ!



息が詰まるし、行き詰まる。



もう一度試そう。



本当に人の役に立つ村上メソッドをもう一度・・・)








それからかなり時間がたっているとおもわれる。どこかの田舎、山のふもとにあるプレハブ小屋みたいな事務所。仁はここの起業者なのだろうか。事務所にはほかにひとりの男しかいないが、いい感じの雰囲気だ。具体的になにをしているということではなく、弱い人間の手助けをするというビジョンのもとにいろいろなことをしている様子だ。たとえば、東京と名古屋から同時に問い合わせがあったというレンタルオフィスは家賃8000円だという。もともとは過疎自治体の無料の空き家、それを、ボランティアのちからで改装したものだという。ボランティアというのはたぶん、そのすぐあとで語られる、「何かしたいけどやることがない暇な学生やニート」だろう。彼らにはやりがいや感謝のことばが贈られるし、またそのレンタルオフィスじたいも格安で貸したりしている。可能なかぎり相手から金を引き出すのではなく、たとえ無償でもじぶんにできることはぜんぶやって、その結果として実体のある利益を引き出す、それがホンモノのビジネスだと仁は悟ったようだ。田舎は生活費も安く済むし、可能性にあふれている。その「暇なニート」たちも、労働力として、数量としてしぼりつくすのではなく、彼ら個人の動機も満たすことで、過疎化した田舎も活性化していく、というのが仁の見立てだ。たんに労働が田舎に価値をもたらし、そこからなにかが生まれるという、「金の移動」ではない。動機があって、やりがいがあれば、ひとは勝手にオーバーアチーブする。つまり、働きすぎるものである。そして、そういう、給金に対するわずかな「働きすぎ」が組織を活性化し、利益を生み出す。労働のごく基本的なことを、仁はもっとも原始的なところからスタートさせたのである。



「金の移動」をきわめ、いくところまでいった天生は、いまホームレスらしい。とはいえ、パソコンは持っている様子だから、路上生活者というのとはちがうかもしれない。よくわからないが、マンキツ暮らしとか、あるいは何人かでいっしょに暮らしているのかも。というのは、仁の同僚のフェイスブックにしつこくメッセージがくるというのだが、それが以前のような広告メールなのである。背後には村上朋子が紹介した老人と、あと村上塾塾生第1号の竹山がうつっている。内容としては「月給1万円の暮らし方」とある。これはなかなかおもしろい。ぱっと見ホームレス状態から金持ちになりあがるというはなしかとおもいきや、そうではないのだ。天生の方法は、かんたんにいって、自己をブランディングし、「こんなふうになりたい」とおもわせ、「では、その方法を教えましょう(30万円で)」というものだった。今回も同じような語調で扇情的にいろいろ書かれているが、ここでブランディングされているのは「1万円で生活するホームレスの天生翔」である。つまり、これが成立するためには、「1万円でやっていけるなんてすげえ!おれもこのひとみたいになりたい!」と、これを見たひとがおもわなければならない。それは、ずいぶんけっこうなはなしである。僕も1万円で生活したい。けれども、いまの天生みたいになりたいかというとそんなことはない。人々は天生みたいに大金持ちになりたかったのであって、天生になりたかったわけではない。まあ、こういうことにかけて天生は天才だから、なにか彼なりのプランがあるのかもしれない。だいたい、「どん底からの新しい生き方教えます」というのが不透明すぎる。いままでと同じように情報商材を売っているだけなのかも。けっきょくは同じこと、そうやってひとを集めて、少しずつ環境を整え、再起をはかろうとしているのかもしれない。まあ、背後に出来の悪いふたりがいるので、それはうまくいっていないようだが。




LINEには父親と苅べーからメッセージが届いている(という表現で正しいだろうか)。父親は、たぶん情報商材時代に学んだことを生かして仁がつくったホームページを見て、依頼があったというはなしである。そういえば仁の父親は仕立て屋だったっけ。ともかく、退院もしたし、すっかり仲直りもしたらしい。



そして苅ベー。たぶん、あの迷彩4人組である。彼らが、車椅子に乗ってなんか異様なほどポジティブに前進していく絵が描かれている。なんでも仁がレクチャーした裏技で障害者年金が受け取れるようになったと。アキレス腱切って苅ベー激痛メソッド出そうかなwwwって、いや笑い事じゃないだろ。なんだこのテンション。

ともかく、4人は助かったらしい。アキレス腱は放っておいても自然治癒したりするものではないだろうが、彼らはどこまでこれを治療したのだろう。あえて治療せず障害者に・・・なんていう知恵はないだろうし、そんな道は選びそうもない。というか、なぜ「裏技」が必要なんだろう。あるいは、治療はある程度して多少は歩けるところまでにはいっているのかもしれない。

苅ベーはヤンキーだったし、ひどい犯罪に走りはしたが、ある意味では、情報商材の販売が行き着く究極のところにいた、最弱者の象徴だった。つまり、苅部たちもまた、仁の考える救うべき弱者の内に入るのかもしれない。




そこへ麻生りながやってくる。田舎なので道に迷っていたようだ。しばらく登場がなかったので心配だったが、金持ちでなくなった仁のこともまだ好きなようだ。おもえばりなは天生のパーティーに顔を出しながらもその雰囲気には引いていたし、仁に興味をもったのは、彼の熱いことばをきいたからなのだ。



就職が決まり、学生時代が終わろうとしている悲しさをくちにするりなに仁は明るくアドバイスする。社会人になっても楽しいことはある、とくちにする仁の口調は楽しそうで、説得力がある。

いろいろ精力的に活動しているようで、明日は地元の漁師と協力して魚介類をつかったパーティーをやるらしい。都会になれたりなも楽しそうだとそれに参加することに。

りなは、その、参加すると約束したパーティーの主菜であるところの魚が泳いでいるところを目にする。既製品ではなく、そこからアナログに人間の生活に流れ込んでいく自然状態。りなもそこの心地よさを感じ取ったようである。仁も自信をもって、ここがいいところだ、それがいいことだと応えるのだった。








おしまい。








フリーエージェントくん全31話完結。長くなるとアレなので次の記事 に続きます。






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