なんだかんだで毎週見ていたドラマ版・ウシジマもおしまい。
そして、なんだかんだで、さびしいじぶんがいるのであった。
今回のはなしでは、たんなる入れ替えにとどまらない、オリジナルのエピソードが見られた。
いちばんは瑞樹ですね。
あそこでカウカウをまきこむかたちで金をとりもどそうとするのは、連載当時は考えもしなかったが、いかにも瑞樹らしい。
もし犯人を見つけられなければ、瑞樹のぶんの利息はまるまる会社が負担することになる。そういうことは、丑嶋はしない。おそらく描写のされていないやりとりのなかに、たとえば高田あたりの発言で、いけそうだというめどがついたから、丑嶋はこのはなしにのったのだろう。
板橋に呼び出されて小堀がやってくるシーンにはやはりぐっときてしまったが、ちょっと首をかしげてしまうぶぶんもあった。というのは、あの精神状態で、小堀は板橋のところにいくのだろうかということだ。
小堀は仕事の疲れ、板橋がもたらしたトラブル、そこから波及した家庭のごたごたなどから、「もうどうでもいい」となった。
そこから、堕ちきったみずからの分身である板橋への「共感(記憶の再体験)」に至るためには、もうすこし内省的な、かつ客観的な視点が必要になってくる。
板橋に共感をよせるということは、つまり板橋の過去のがんばりを認めるということは、彼自身のがんばりを、他者の度量衡を経由したかたちで認めるということにほかならないからだ。
なんでもない他人のありようを上から目線で褒めることはべつにむずかしくない。
だが板橋は、小堀の抱える闇である。
これを認めるために、闇がそれとして存在する哀しみ、あるいはおかしみ、そうしたものを包括的に認めうる達観が、どうしても必要になる。
そのために、原作には戸越というキャラクターがいたのだとおもう。
とはいえ、胸のつまるあの若き板橋の写真は、ちゃんと出てきた。
テンポのはやいドラマでもあった。ここではむしろ小堀のほうが、板橋の写真を受けて回復を果たし、日々の疲弊で忘れかけていたものを取り戻したのかもしれない。
そして板橋の最期はデジャヴのように久美子の彼氏のものと響き合う。
そこには、丑嶋サイドでいえば、わずかながら徒労感のようなものも見えた気がする。
で、大久保千秋だが、彼女の過去が詳らかになることはなかった。
出演していたAVも柄崎によって発見されたが、特に追求はされない(あたりまえだけど)。
で、千秋がカウカウを辞めたような描写のあと、丑嶋が野菜を食うようになってドラマは終わる。
おもったよりまとまっていたというか、もっと拡散するようなおわりかたをすると想像していたのだけど、千秋が机に空白を残して去っていった不思議な喪失感が、よい感じに丑嶋社長のなかに残っていた気がする。最後に丑嶋がくちにした「なんで借りたいの?」というせりふも印象的だ。そこからはたんなる淡泊なお金の移動ではない、わずかながらの温みが感じられるのだ。
丑嶋が野菜を食べるようになったのは、千秋と賭けをしたからだ。それは、小堀がくるかどうか、ということだった。つまり、けっきょくは損得勘定でひととひとはつきあっているとするドライな社長に対し、大衆目線を背負った千秋が反論したものであった。そして、板橋に共感をした小堀は、やばいはなしだろうと多少なりとも見当がつきながら、やってくる。他人をじぶんのからだの一部、あるいは分身としてみることができるという、「奪い合いの原理」のなかでは決して見いだせない人間関係を、丑嶋は目にしたわけである。これは、丑嶋に良心のようなものがあったとして、人間のほのかな可能性を感じさせるできごとでもあったろう。そうした芽は、きっと丑嶋社長のなかにも吹いているにちがいない。
とにかくまあ、これでおしまい。ドラマなんて久しぶりに見たけど、30分という短さが逆に効果的というぶぶんもあり、へんな疲れもなく、きわめてテレビ的に視聴することができました(もちろん、もっと長時間でディープなものをみたいというぶぶんはあるけど、それはまたはなしがべつ)。
役者さんたちも、みなさん非常によかったとおもいます。最初ただのエロス担当かとおもっていたAV女優のひとたちも、深くふかく物語にかかわり、重要な役をやりきっていました。
鷺咲社長とか板橋、タクくんあたりは原作を完全コピーしていて、じつに笑いました。特にタクくん。
カウカウのメンバーでは、マサルと加納がいないのはもちろん残念だっだが、そこらへんの機動力はやべきょうすけさんと崎本大海さんがうまいこと分業していた。特にドラマ化にあたって重要だったにちがいないある種の軽さは、柄崎に負っていたぶぶんが大きいでしょう。片瀬那奈さんに関しては、原作のあるドラマにも関わらず、お手本のない状況で、きっちり女優の仕事をしていましたねえ。
山田孝之さんについては、たとえば今回のはなしでは、カイワレをまるごといくところなどは「丑嶋っぽい」というよりは「山田孝之っぽい」という印象で、よく、「丑嶋馨」をこちら側に引き込んでいたとおもいます。そのことの当否は、ドラマを見終わった視聴者の胸のなかでのみ明らかになることですが、すくなくとも、あのハードな漫画をドラマに移行するという荒業を、きわめて役者的に遂行していたということはいえるとおもいます。何度も書いていることなので原理的な書き方は避けますが、原作を解体し、漫画になる以前の原・物語をドラマのうえに再構築する、その作業を媒体となってうけおうのがこのドラマに出演した俳優なら、山田孝之さんを筆頭に、ぜんたいにわたって見事に俳優としての仕事は果たされていたとおもいます。
ともあれ、出演者、ならびに製作スタッフのみなさん、おつかれさまでした。第2弾とか映画とか、同じメンツでまた新しい展開もあるといいな~
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