- 驕れる白人と闘うための日本近代史 (文春文庫)/松原 久子
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ときどき覗いているあるブログさんで紹介されていて、ちょっと思い出し、仕事の休憩中に手にとってみた。
この手のタイトルの右寄りの本はけっこう売れる。
僕個人は、はっきりいってそっち系の本には食指を動かされない。
ばかりか、そうした本が“流行る”という現象には「うんざりしている」というフシもある。
それはナショナリスティックな思想そのものに対した反応ではなく、そうした発言をするひとに、多くの人々が「そうだそうだ」と騒いでいるだけみたいに見えるからかもしれない。
僕は、田中小実昌を知って以来、またたぶん最近では河合隼雄も重要な鍵人物だとおもうのだけど、とにかくわからないことを「わからない」とじっさいにくちにすることの大切さを尊重している。
なぜなら、「わからない」ことに自覚的に触れてゆく作業からしか、僕らの知的能力は発達しないから。
僕には、右寄りの思想…ではなく、厳密には「右寄りの思想にわけもわからず追従する思想」は、ただの思考停止、「最近の若者はものを知らない」などと口にする、「最近の若者」の友人などひとりもいない人物の考えとかわらないとおもう。「最近の若者はものを知らない」と怒っているほうが、「最近の若者はどんなことを知っているのか?」ということを考えるよりずっと楽なのだ。そのことと、げんに「最近の若者がものを知らない」こととは、別問題だとおもう。少なくとも、僕などはまさに「ものを知らない若者」の典型だろう。
そして「右」の思想というのはそうしたひとたちと相性がよく、どこか無思考の追従を推奨するようなところすらある気がする。
それは「すでにあるもの」を礼賛し、変化を必然の流れとする社会のなかで、消えゆくものを「消えゆく」というまさにその点において懐古的に「善」と定め、議論をストップさせるようなところがあって(僕の漠然とした感覚ですが)、じぶんのよく知る常識や公準が揺らぎ始めているとき力強く発言された「もとあったそれのほうが正しい」という言説は誰にもたいへん効果的に働くもので、「なんかわかんないけど(これからやってくる)それは嫌だ」というひとたちに、結果として使い勝手のよい理論を与えることとなるのかもしれない。
ついでに書いてしまうと、「最近の若者は年寄りを尊重しない」というお年寄りの言い分も、僕にはよくわからない。
「最近の若者は“他者を”尊重しない」というのなら、わかる。僕にも実感はあるし、僕自身そうなのかもしれない。想像力の欠如のもっともこわいところは、「じぶんが想像力に欠けているかもしれない」という方法的懐疑を育むのがとてもむずかしいという点だから。
そういうこととはまたべつに、「最近の若者は年寄りを尊重しない」とお年寄りが発言するとき、そのお年寄りはいったいなにを求めているのだろう?僕には「年寄り一般というものは尊敬されて然るべきものである」という理屈が、背後に隠れているように感じられる。
念のため先に書いておくが、僕は「敬われない年寄りがいてもおかしくない」ということが言いたいのではない。というか、僕は無条件に、そこまで長く生き抜いた一個の人間というものは「満腔の敬意を表して当然」だと、多くの「最近の若者」同様考えている(ホントだYO!!)。「ただたんに生きてゆく」ということがどれだけたいへんな仕事か、実家暮らしのフリーターの僕にだってある程度わかる。
そうではなくて、僕はお年寄り連が「じぶんたちは尊敬されて当然だ(なのに尊敬されない。それは若者がじぶんたちを尊重するということを知らないからだ)」と考える理路に、違和感を覚えるのです。
くりかえすように、お年寄りは「尊敬されるべき」なのかもしれない。
また同時に、僕を含めた最近の若者は「お年寄りを尊敬するということをしない」のかもしれない。
しかし両者は交じり合うものではないとおもう。
両者の等しい立場での対話は、「~べき」などといった根拠のない“空気”的な公準だよりではなく、お互いがそれに応えようと志向したときのみ生まれてくるのではないでしょうか…。
ふつうに本の紹介をしようとしたらなんだか熱くなってしまったけど、またねんのため書いておくと、右的な思想そのものについては保留したとして、僕はそうした発言を載録した書籍そのものを非難するものではべつにない。というか、読んでもいないのに非難などできない。げんに、冒頭にあげたこの本は、過激なタイトルながら少なくとも出だしの文章は淡々としたもので、Amazonのレビューなどを見てもなかなか印象がよく、ふつうに読みたい感じだ。こうしたことは、できる限りあたまを冷やして、淡々と語るのが好ましい(ここまでのぐちゃぐちゃしたじぶんの文章を読み返してみるとわかる…)。
- ポロポロ (河出文庫)/田中 小実昌
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- 猫だましい (新潮文庫)/河合 隼雄
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