今年はあまりCDを買わなかった。音楽そのものへの熱量の比重はこれまでとかわるところはないが、たんじゅんなお金の問題から、CDショップそのものへほとんどいかなかった。十枚くらいかな?ほしいものはたくさんあったのだが…。
それでもまあ、すっぴんマスター的な今年の重要作をあげるとしたら、この二枚のベストははずせまい。
- Award SuperNova-Loves Best-(DVD付)/m-flo
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- BEST FICTION(DVD付)/安室奈美恵
- ¥2,709
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ほんとはここにZEEBRAのベストもいれたいところだけど、結局今年は買わなかったな…。来年は一月にDABOのベストも出ますし、ほしいものが減ることはまったくなさそうだ。
- The Anthology(DELUXE EDITION)/ZEEBRA
- ¥4,374
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- I’M THE BEST/DABO
- ¥3,500
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これは特にm-floにいえることだけど、家族に対する義務感にも似た宿命的愛情と同じく、このひとたちに対しては、なにをやっても無条件に認めてしまうというようなところが、正直なところ僕にはある。したがって、本人がいくら冷静になって書いてるつもりでも、内容の深いところにそういった除きがたい偏向がかかってしまうことは、たぶんよほどのできごとがないかぎり、もうしかたないとおもう。しかしそれは逆にいえば、それだけ重要な位置を僕のなかでは彼らが占めているということでもある。したがって、厳密な意味でこのひとたちの僕が認めるぶぶんをことばにして示すことはかなわないが、そのことそれじたいでもって、また文章が孕むエモーショナルな雰囲気を、「僕」という人格を媒体として感知してもらうという、読み手の想像力任せの姿勢に妥協すれば、ふつうとは異なった示し方ではあるけれど、「ふうん、そんなに好きなんだ」というふうに受けとめてもらうことはできるとおもう…。
慎重な書き方になってしまったが、といってなにか否定的に気にかかることがあるというわけでもなく、ただたんに、このようなバランス感覚に秀でたアーティストというものは、ややもすると無根拠に批判されがちなので(そうでないばあいもたくさんあるとおもうし、それならかまわないのだけど)、いつもこんな感じになってしまうのです。
それでまあ、m-floのすごいところは、いま書いたバランス感覚であるということは、もうわかってもらえてるかとおもう。さまざまなアプローチにたえるということは、さまざまな傾向の人物からもよく認められるということであって、これはたぶんあらゆる表現者たちの目指す到達点でありましょう。そして、m-floの示してみせた世界は、そのこたえのひとつであるとおもいます。音楽的にどうだとか、バーバルのラップが、タクのトラックが、ゲスト選びのセンスが、といったことも、もちろんこのひとたちについての批評の対象であって、「批評の対象である」ということは、否定も肯定も可能であるということだとおもいます。しかしこのふたりの「バランス感覚」は彼らの芸術的姿勢にかかわったものであって、彼らの音楽的品質よりもっと本質的なことだとおもいます。
そしてこのひとたちが、ゲストをlovesしてm-floカラーに染め上げながらそのゲストでしかありえない楽曲を創造するという、今作までとっていた方法は、彼らの、「バランス感覚」を希求するアーティストとしてのありかたの実現であって、呈示の方法であったとおもいます。というのは、いろんなミュージシャンを呼んで曲をつくるには、当然音楽的柔軟性が欠かせないわけであって、さらにできあがったアルバムが「コンピレーション盤も同然」といった事態に陥らないのは(つまり、どんな曲を聴いても「m-floの音楽だ」とファンにはかんたんに伝わるという現象がありうるのは)、基調としてm-floイズムとしかいいようのないなにかが底に流れてあるからでしょう。
安室奈美恵はもう、ほんとうにすごいひとですよね。最高に尊敬できる女性のひとりです。パレットのうえで理想の色を求めて次々に絵の具を混ぜていったら、最後には真っ黒になっちゃうといった状況にも似て、このひともやっぱり、かっこよさを伝えようとすればするほど、ちがうんだよなーという感じが強くなってしまう。
このひとは、もちろん音楽もいいのだが、ビデオもすばらしいのだ。これはニトロなんかを見ていてもおもうのだけど、もう現在ではPVというのがたんなる宣伝媒体ではないということがよくわかる。まったく作品だ。というか、特にこのひとにおいては、PVを見ることではじめてその音楽世界が完成するという気がする。
くりかえすようにCDじたいはほとんど買わなかったのだけど、ラッパーではt-Aceでしょうか。
- 弧高の華01/t-Ace
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- 孤高の華02/t-Ace
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熱い男だよこのひとは。
今年のはじめ、知人の結婚式でピアノを弾いたため、ちょっとだけピアノ熱が再燃したりもした。WEST SIDE STORYの「マリア」やME AND MY GIRLの「顎で受けなさい」などの新曲も練習したが、それより「むかし弾けたのにいつのまにか忘れてしまった曲」の練習にはげんだ。坂本龍一の「PAROLIBRE」や「SELF PORTRAIT」など。「ラスト・エンペラー」、「リベルタンゴ」、それからショパンのノクターンやバッハの「主よ人の望みの喜びよ」なども、完全に弾けなくなっているので、来年は復活させたい。