第140話/歯VS牙
ついに範馬からピクルの前に立つものがあらわれた。おれたちの…、おれたちの!ジャック・ハンマーだ!
「言葉はワカらんでも
理解(わか)るだろう
ヤルんだよ俺らは」
コレ、パンチラインだな。
ピクルは歓喜していた。この状況を喜んでいた。ここ地下闘技場で座って待つだけで、次から次へと優秀なファイターたちが向こうからかってにやってくる。ピクルにとってそれはステキなことだった。
そして今日あらわれた男は、烈とも、また克巳ともちがっていた。まがりなりにも接触を果たし、闘技場まで招待してぶっとばした主人公は、ここには含まれないのだな…。
なんの前置きもなくふみこんだジャックが、巨大な岩のような拳をピクルの顔面に正面からうちあてる。背負うべき中国拳法も、館長の器もない、ジャックはじつにシンプルなファイターだ。ほんとは誰も、勇次郎ではなくピクルに反応した事実が示すように、その動機の芯にあるものはシンプルなはずなのだけど、いろいろよけいなしがらみのある人間は、シンプルになろうとあえて努力しなければならなかったりする。ピクルはジャックからもっとも直情的な闘争衝動を、まっすぐに、じかに感じ取り、ある種の懐かしさすら覚えていた。
正面からまともにくらいながら、脳へのダメージはおろか出血すらしていないピクルをジャックが評する。まるで範馬勇次郎である。
例の人間ばなれした、まるで四足動物のようなピクルの頚椎である。ジャックはいちどの接触で、ペイン博士の解説も抜きにそれを見抜いた。
しかしジャックにはピクルのからだの構造についてもっと気になることがあった。巨大な犬歯…いや「牙」だ。
「ピクル…
噛みっこだ」
歯をむいて上下をうちならし、ジャックがピクルを挑発する。
やっぱそうきたか…。
とはいっても、ジャックは最大トーナメントでほとんどの歯を失っているはずなので、これは入れ歯か差し歯か知らないが、なんにしても自前のものではないだろう。歯の質でいったら、あんなふうにぶんなぐられて微動だにしないピクルの犬歯とは比較にならないだろう。しかしジャックにはヤシの実を切り裂く咬筋力…ようはあごのちからがある。逆に考えれば、ピクルのようではない、現代人のそれでもってそれだけの咀嚼力を得るまでに至っているわけである。またジャックにとっての噛み付きは、たんに凶器である以上に、戦術戦法的な意味もあるだろう。恐竜の皮膚を貫くのとヤシの実を破るのとどっちがすごいのかはよくわからんけど、なにしろまったく構造のちがう歯を持っている以上、数量的な比較は不可能であって、だからこそ比較の価値がありそうだ。
「言葉を解しないまま赤子が母の心を知るように
言葉を交わさぬまま恋人同士が
接近するように
それぞれの時代を代表する二つの凶器は―――
互いの激突を求めあった」
つづく。
ついにというか当然というか、ピクルとジャックの噛み付き対決が始まってしまった。
ずいぶん展開がはやい気がする。噛み付き対決となると、一般的なファイトのような、たとえば体力の削りあいだとか、技術的な攻防だとかはいっさいなしで、短期決戦は避けられないでしょう。だって噛み付きを防ぐ方法は避ける以外ににないのに、どっちも噛み付きにいっちゃってるんだから。もしやるとしても、もう少し噛み付きにいくまでにジャックの引き出しを開けていってもよさそうなものだ。とすると、最初からこのたたかいを長引かせるつもりはないのだろう。もちろんジャック瞬殺なんてことはありえないから、となるとこのたたかいは半ばで中止となるかもしれない。主人公は「明日」くることになっているので、他の誰かがじゃまするんじゃなかろうか。クリスマス発売の次号はバキ二話掲載だそうだ。うん、これはありえるんじゃない?第二回の最大ナントカ。
しつこいか…
とはいえ、僕は冗談半分でももう半分はほんきでいまだにそれを期待しています。
それはいいけど、次号予告にある「ガイア特別編」って、なんなんだろう…。ギャグで同窓会に参加させてはみたが(勇次郎以外は気づいてないっぽかったけど)、どう考えてもつかえそうがないので、ギャグのまま番外で消化してしまおうというのだろうか…。こちらも、僕はけっこうほんきで、ガイアがピクルとどうたたかうのかを見たかったりします。
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