第135話/開花
今週の扉絵は椅子にうしろむきに腰掛けた範馬刃牙。内股になっているうえ右のかかとなどは軽く浮いていて、ちょっときもい。アート系の写真家が撮ったグラビアみたい。モデルが女の子ではなく肉々した筋肉男子であるとこが決定的に惜しい。聞いたことはないひとだけど、雑誌じたいにもいちおうアイドルのポスターはついているし、なんかうっすい袋とじもあるにはあるが、表紙は新章で連載を再開したヤンキー漫画『ナンバデッドエンド』が全開だ。収録マンガもまさしくカオス。相変わらずの、テレ東ばりのアナーキズムである。でもそこがいいよね、チャンピオンは。
愚地克巳対ピクル、終了…。
最初はほんきでどうなることかと、成り立つのかと心配した格差対決も、作者の圧倒的としかいいようのない描写力で克巳のキャラを再構築し、炸裂させることで、崇高美すらたたえて完結した。気絶した克巳が担架で運ばれる。担架のうえにはちゃんとタオルでくるまれた右腕もある。くっつくかな?
克巳を運ぶ地下闘技場の職員みたいなひとがふと気付く。ドーム内の客席を占めていた神心会55000が忽然と消えているのだ。それぞれ時間がきたから会社に向かった、わけではない。神心会門下はひとりとして欠けることなくその場に残り、正座をすることで、我らがリーダーに敬意と忠誠心を示していたのだ。
担架が進んだ通路には独歩、ペイン博士、光成、そして刃牙が待っていた。克巳がドームに到着した今朝、妄想ティラノと一戦終えて、血まみれでむかえた刃牙は、「まさかアンタに先を越されるとはな」とくちにしていた。先にピクルとやることになった克巳に対する嫉妬から出た、えらそうな言葉だが、刃牙はこれを失言として悔いていた。
(過去 数多くの局面で―――
この男に失望してきた
お調子者の―――
お坊っちゃまリーダー…
そんな 彼がよもや―――
これほど気高い開花を見せようとは………ッッ)
…なんかハマーが蛇にかまれていっかい死んだときの描写みたいだ。お調子者のお坊ちゃまって、君のことじゃないのかねバキくん。見習ってさらなる成長を遂げてね。主人公なんだから。
たほうの父・独歩は誇っていた。烈海王敗北を伝えたあのとき息子に感じた予感…。見事に化けたのだ。独歩も「かなわねェ」と認めてしまう。
すっかり徳川解説ファミリーの一員となった博士が、光成にピクルの行方を訊ねる。
「聞こえんかね……
この―――
地の底から響くような
遠吠え……
無傷に見えるピクルにとっても……
それほどの闘いじゃったということじゃろう……」
現在の住み処と言っていいのか、地下闘技場にもどったピクルが両手をメガホンにしてひざまずき慟哭する。
つづく。
結局ピクルは無傷か…。
迫力ある解説を除いてピクルの様子だけを観察すると、食べようとしたけどすごい技くらって内臓やられておなかいたいからやめた、ともとれそうだが。
克巳は空手家として完成したが(同時にはじけたが)、その姿を門下生に見せることで館長としても完成した。集めたのは光成だが、彼らのなかでも「館長」と「愚地克巳」はもう完全に一致したんじゃないだろうか。技術的な到達点という意味ではもちろんだが、相手を砕くことや身を護ることではなく、空手家であることに生命をはる姿をげんに目にしたのだ。空手そのものは、もちろん敵を倒し愛するものを護る技術だが、今回の克巳のたたかいの動機はそこにはないし、放っただけで腕がはじけとんでしまうようなあのマッハ突きにしても、そのような空手の基本原理からは逸脱したものである。これは自己表現、自己開示以外のなにものでもなかった。空手家であるということただそれだけを、からだをはって、素手の技で明らかに示してみせたのである。
次の相手は誰か?ピクルが選択を覚えたことで、物語はまた大きく変わっていくかもしれない。下手するとあらゆるものに努力の痕跡を見出だしてしまい、拒食症になってしまうかも。そのへんは博士と光成に任せるしかないが…。とにかくたたかいが今後もあるとしたら、今度こそジャックだろうか?それともあの同窓会のメンバーから誰かまたでてくるのか。独歩はもうないだろう。渋川はたどりつけない。となると鎬弟、寂、ガイア…。えぇ~…。
でも克巳が動きはじめたときもそんな感じだったからなー。わからないですね。個人的には勝敗はともかく、ガイアと寂は楽しみだったりする。その…大晦日の曙的な、イロモノかつサプライズ的なアレで…。
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