DAWN OF THE DEAD | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

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テレビ放映だからしかたないのか、あまりに残酷なシーンはカットされたりモザイクかけられたりしていましたね。まあそれはべつにいいけど、オープニングのテレビのリポーターがおそわれる場面までカットしていたのはいただけないなあ。「世界、終わったかも」っていう終末感を与えるすばらしい演出なのに。

それから主演のサラ・ポーリーは、知性が感じられて、やっぱりきれいだった。主義的に大衆作品(と呼んでいいのかわからないが)には出ない種類の女優なのだそうだが、これはなんでオッケーしたのかな?


それにしても、ゾンビ映画って不思議だよな。

どう考えても悪趣味以外のなにものでもないし、ゾンビのあのかわいた粘土みたいな顔も僕なんかはむしろ気持ち悪くみてるのに、なんでこんなおもしろいかね。



死者がよみがえるというのはどういうことなのか?


生きるということは、いつかこのさき死ぬということであり、まただからこそ価値がある。聞いたようなことばだが、これは精神論ではない。たんじゅんに死なない(おわらない)人生というものを想像してみればいい。今日できなくても明日やればいい、世界はあまねくそういうものになるはずだ。なにしろ、死ぬことがないのだから。「いつかやればいい」ということばが言い回しや慣用句ではなく、そのままの意味となってつかわれる。その、やろうとしていることを仮にやらなくても、問題はないのだ。いずれ死ぬからこそ、にんげんは成長しようと志向するし、したいことをしようとうろうろ動きまわり、徒労を重ね、にやにや酒飲みながらくだらないことを言い合って、ほくほく気分で朝帰りする。もちろん「成長」ということの価値じたいが、「死への恐怖」をうちけすために創造されたものだということもできる。つまり、不死なら不死で、成長なんていう概念は考え出されもしなかったかもしれないのだ。しかし成長ということもつきつめればある欲求の達成ということに至るのではないだろうか。


そして、たまたま今日の『範馬刃牙』の感想にも似たようなことを書いたが、ある事象の「価値」ということは、「そうではないこと」との比較があってはじめて成り立つのではないだろうか?それはもちろん、芸術作品の美しさは本源的なものであって、醜きとの比較で成り立つわけではないというふうにいうこともできるだろう。たしかにそうなのかもしれない。だが、身の回りにあるものすべてが目がくらむほどの本源的な美しさをそなえていたとして、僕らがその絶対的価値に気づいていたかどうかは疑わしい。


ゾンビ映画における死者のゾンビ化現象とは、たんじゅんに死が失われるということとももちろんちがう。あたまをうちぬけばゾンビだってちゃんと死ねる。だが、そのゾンビの死は与えられる死であって、誰かに殺されないかぎり死はやってこない(いや…、たぶんですけど。ゾンビの生涯をゾンビ主観で描いた作品なんか見たことないから)。もしここで、まあ僕はそんなにゾンビにくわしいわけではないからぜんぶ仮定で読んでもらいたいのだけど、共食いをすることもなく、餓死もないとすれば、これを殺そうとする生者がいない限り、ゾンビは永遠にゾンビであるはずだ。もしいつかほんとうに死んでしまうものだとしても、生と死のあいだにもう一段階「非生」とでもいうべきたましいのありかたが出現することに変わりはない。そしてこの新しい段階とは見るもむざんなあんなものである。みずからの生の果てが目の前にうろつくあのようなものだと、目に見えてわかってしまうのである。この『ドーン・オブ・ザ・デッド』を見てもわかるように、ひとは死よりむしろゾンビ化を恐れている。なぜなら、ゾンビになるとちゃんと死ねないからである。


死にたくない、生きたいと願う、その感情がもし、生が死によって限定され、太字でふちどられることで生まれてくるものだとしたらどうだろう。死の価値を認めているからこそひとは生きようとするのではないだろうか。


だから、驚くべきことに、ゾンビ映画における「サバイバル=生の獲得」の目的とは、過不足のないきちんとした「死」を獲得し、失われた生の価値を取り戻すことなのだ。


…おもいつきでなんだか熱くなってしまったけど、ほんとにこんなことがゾンビ映画の本質なのかなあ。というかこんな真夜中にゾンビを熱く語るおれって…。



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