第132話/勝利の咆哮
右腕を犠牲にした克巳の真マッハをくらい、ピクルが気絶した。
…
と見せかけてじつは××だった。××にはなにが入る?
答.ただの昼寝。
…ほとんど大喜利である。
刃牙含め観客は皆克巳が勝ったとおもいこんで正拳突きの祝福を続けている。興奮のあまりピクルの寝返りにも気付いていない。克巳は愕然と立ちつくす。
と、解説係ペイン博士の登場だ。
出たよ…
博士によれば、ピクルはただやすんでいるだけだというのだ。ピクルからすれば、決着はすでについている。右腕は骨が完全に見えるほど損傷し、止血をしているとはいえ相手のダメージは決定的。他の手足も使用不可能。これが自然のなかでのファイトなら、もはや克巳に攻撃をする必要はないというのだ。
「たとえ逃げても出血による痕跡は消えまい
ならばどうする…?
野性は決して無駄をしない
相手が息絶えるまで寝て待つ
ピクルにとってそれが最も理にかなっている」
…うーんと…。え?
チョトマテクダサイ…?
えーと…
野性がじっさいどうなのかということは、とりあえず置いておきましょう。まず、克巳の引きマッハは、すでにマッハ手刀で負傷していた右手で行われた。したがって、理論的には、足はともかく、残る左手での引きマッハは実行可能である。
仮にピクルが、動物的な直観で、克巳がすべてを出し切り、同時に同じ攻撃がもう二度とできないということを悟ったとしましょう。しかし、だとしたらどのタイミングで?克巳が引きマッハをはなつとき、ピクルはあの一撃必倒のタックルで向かってきていた。つまり、このじてんでは、負傷しながらも克巳の脅威をピクルは認めていたことになる。決定的に前腕が破裂したのは、当然引きマッハのあと、すなわちピクルがぶっとんでからだ。このじてんでピクルが気絶していて、それから睡眠に移行したにしても、なにしろピクルは克巳の負傷を見ていないのである。視覚のみに限れば、ピクルは克巳の前腕破裂を知覚していないはずなのである。とすればどうやってピクルは「もう攻撃は必要ない」と判断したのだろう?くりかえすが視覚だけに限れば、ピクルにとっての克巳の脅威レベルは、タックル時から変わっていないはずなのである。それとも接触時にすべてわかったということなのだろうか?あの位置で寝ながら血の臭いでも感じとったか?
いずれにせよピクルがげんに寝ていることに変わりはないのであるが、経験的に博士のいうことはあまり信用できないですね。ファイターじゃないからかな。いちど気絶し、あまりの衝撃から反射的な逃避行動かあるいは治癒を目的として眠りに移行したとか、おなじ屁理屈でもそのほうがずっと自然な気がする。
眠るピクルが涙を流す。ピクルはファイターである。と同時に原始人である。彼は狩りをして食事とする。だがファイターとしての彼の天然の気質は、たたかいそれじたいをも好ませることとなる。ファイターにとって、いのちを賭けてファイトを共有した相手というのは親友に等しい。ファイターの性が将来食べることになる相手を親友と規定し、原始人の性がどうあってもそれを食べることを要求する。そうして、食す相手はすべて親友であるという、ピクルの呪われた宿命が成立する。涙はそのしるしだ。
正拳突きの号令をとっていた末堂が異変に気付き、門下生たちを制する。
克巳はピクルの涙を確認し、同じく涙を流す。
(この惑星誕生以来最強とまで言われる雄が…
俺を強敵と認めてくれる
報われた…
この思いに…
どう報いる…
どう応える…ッッ)
目を醒ましたピクルがむっくらと身を起こす。博士の言うことを信じるなら、ピクルは克巳を機能停止、少なくとも戦闘不能とみなしたことになる。見たところ立ちかたに変化はないので、満足感からくる克巳の戦意喪失を感じ取ったのかもしれない。逆にいえば、ピクルが起き上がったということは、克巳が戦意を失ったということでもあるのだ。博士が正しいならね。
神心会門下生にはまだ状況が飲みこめていないものが多いようだ。末堂は震えながら「逃げろ…」とつぶやく。博士は下を向き、光成やバキも混乱した面持ちだ。烈は汗だらだら、郭などは手の平で目を覆ってしまっている。
みずからのすべてを開示しきった克巳は、充足感すら浮かべた晴れやかな表情を見せ、心臓をさし、持っていけと示す。
瞬間、視認できない速度でピクルが克巳の横を跳び抜け、右手を奪いさる。止血に使用していた帯が宙を舞う。背後に着地し、もぎとった右腕をくわえたピクルを克巳が振り返る。
(なぁピクル……
俺は美味(うま)いかい…………)
つづく…。
はわわわ…
ついに克巳くんもやられてしまいました…。
これはもう終わりかな?煽りを読むとまだなにかありそうだが…
カニバリズムとは、そのものを体内に取り入れ、同一化するという行為だ。愛する相手に対するアンビヴァレントな欲求の直接的な表現なのである。烈戦でピクルは、烈の右足を食べた。あのときピクルがタックルの姿勢に入ったのは、肘と膝であたまをはさむ烈の強烈な技をくらったからだ。あの膝がどちらの足だったかは思い出せないけど、今回たいして肉の残らない克巳の右腕にイッたのはある種の敬意と、やはりこの同化ということの欲求のあらわれだろうか。
いまいちばん気になることは…、これ、バキだろうと勇次郎だろうと、倒せんのか?!!ってことです。たたかいは関数ではない…、いかに技の重さを数量的にはかろうとしても、微妙な機微が柔軟に働くたたかいのうちでは、一概にどんな技が最強とはいえない…、それはわかる。しかし克巳のあのパンチに匹敵する技を、勇次郎はともかくバキは手にできるのかという、たんじゅんに読んだ感触のはなしなのです…。まじでどうすんだろ。
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