今週の闇金ウシジマくん/第134話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第134話/出会いカフェくん⑫


ニューリッチたちとの勝負をなんとか終えた美來が、同じく生き残った幼なじみのアキトとともに自転車で街のなかを行く。ちょっとした会話からも、明らかなミコの成長がうかがえる。

ふたりの会話からJPがまた少年院に入ったということが判明する。あのホテルでひとを刺したというのだ。この内容では、それが“彼等”なのかはよくわからない。アキトは勝負のことをたぶん知らない。知っていればミコは彼等とかニューリッチとかいう言い方をしたかもしれないが、だからここではただ「人」と言っている。ミコとアキトの関係への嫉妬が正しい理解によって浄化され、JPにとってあれ以降の行いはただ自滅的な意味をもっていたとおもうのだが、誰でもいいというわけではなかろう。…でも彼等が見つからなかったらとりあえずやりかねないけど。

同時に、一年前JPを警察に売ったのが冬美だということも判明する。



「冬美、JPのコトが実は好きで
少年院にとじ込めるコトで独占したかったのよ」


冬美は相変わらず売春を続けている。セイウチのように横になるふーみんに客がもう一回しようという。ふーみんはお金払えばいいと。


「本気で好きになったらどーするの?」

「お金が間にあったほうが、


お互い気が楽でしょ?」



先週のミコいわく、冬美は性格が悪いのではなく、損得でものを考えるだけなのだそうだ。ここでいう損得の貨幣とは、もちろん金のことだろう。しかしそういった関係性を超えてしまう感情というものもある。冬美にはたぶんそれがJPなのだろう。ミコの口を介してあとに出てくる「キスは恋人とするものだから」というオトメなことばからもそれはわかる。

シャワーをあびてなにかを感じた冬美は、ごみ箱をあさって使用済みコンドームの様子をたしかめる。やはり穴があいていた。表情を一変させたふーみんは、息を荒げて怒りをあらわにし、罰金20万よこせと男に迫る。あまりにパワフルな冬美に気圧され、男も焦るが、ふーみんはほとんど本職のひとみたいに男の胸倉をつかみ、免許証と名刺をうばい、ホテルの外に出て金を下ろさせようと引きずっていく。



…たくましい!


男を引きずっていくふーみんを、Kが遠くから好意的な微笑みを見せながら見送る。
Kは、若さを切り売りする、リスキーな出会いカフェや売春に否定的だったはずだが、この微笑みはなにを意味するのだろう?今週の登場人物紹介の冬美のところに「JPによって、アキトとともに倉庫に監禁されたが、貪欲にサバイバル」と書かれていてちょっと笑ったが、おもえばたしかにあれは、小さな次元ながら、社会性や常識が失われ、規定するものがなくなってすっぴんとなった人間のサバイバルだった。Kが駆け付けたとき、アキトは意識不明の重体だったが、同じ条件ながらふーみんはKを怒鳴りつけるほど元気だった。今回の売春の描写もそうだ。ちょっとタフすぎるくらいだ。殴られても殴りかえしそうな強靭さである。ホームレス一歩手前までいき、それが怠惰であれ不運であれ、原因はともかく、死を間近に覚え、ただたんに生きるということの大変さを知っているKには、ふーみんのタフネスは、歪んだ希望のようなものに見えるのかもしれない…わからんけど。



ミコの携帯に丑嶋から電話だ。やっと出てきたかシュジンコウ。いっつも電話越しだな。

あまりに登場が少ないから、途中から読み始めた読者は肉蝮ばりに「誰?このめがねくん?またともだち紹介してくれんの?」って感じだろう。

あれ?髪切った?



ミコは母親の借金を肩代わりしている。出会いカフェ通いをやめて、まじめにファミレスで働いているミコの、今日は最後の返済日だ。


ついでに高田も登場だ。武闘派のカウカウ・ファイナンス社員では唯一の優男だ。これも久しぶりだなー。いま一瞬「高田」って出てこなかったよ。

ミコは今日で完済だが、また貸し付けるのかと訊ねる高田にうっしーが応える。



「いや…


あいつはもう借りねーだろ!


美來が今日返済する5万円は
出会いカフェで稼いだ5万円と同じ金額だが…


価値が全然違う」



まあ、金借りてたのはミコの母ちゃんなんだけどね。


自転車ですれちがうのは親友のナツキとハルコだ。嘘で妊娠・中絶・金貸してメールをしたが、ミコとはもう仲直りしているようだ。ということは勝負の事情をはなしたのだろうか?じゃあアキトにもはなしてるのか?そうなるとJPの刺した「人」とは“彼等”ではないことになるが…



娘に借金を払ってもらっている母親からメールだ。禁パチをしているかわりにゲーセンのパチンコで解消しているようだ。ミコは不安げだ。



「ねェ アキト」

「ナニ?」

「恋愛って付き合うか合わないかってのが楽しいよね」

「………
ナンの話?」

「今の話」

「美來。

やっぱラーメンがいいや。
冷やし中華」

「いいよ」



…ほほう。熱くなったキモチを、冷し中華で冷まそうと、こう言いたいわけですか。

なかなか言うじゃないかアッキーくん。



ミコはこれからファミレスでバイトだ。出会いカフェとは比較にもならない安い時給だが、ミコはある真理を学習した。



「お金稼ぐのがすごーく大変な事」



修羅場を経て、ミコはたしかに成長したようだ。ジョジョの奇妙な冒険・第六部「ストーンオーシャン」の主人公、空条徐倫のように。

こちらの世界ではまだ夏が残っているようですね。『ウシジマ』らしからぬじつに爽やかな読後感を残して、出会いカフェくん編完結。


…ほ、ほんとにおわっちゃったYO…。なんにも考察の準備してなかったからかなり焦りました。


巻末の作者コメントには次のようにある。


「次回シリーズ、新連載のつもりで頑張ります」


…深いね。



物語全体の感想は単行本が出てから、書けたら書くとして、たとえばキャラクターについては、特にミコは、よく書けていたとおもう。彼女が性格のいい子だということはよく伝わってきたし、なによりかわいかった。このようなはなしなのに彼女の性的な場面はいちどもなく、いままでになかった種類の、モコにも匹敵する、身も心も非常にクリーンな人物だった。


ミコを中心とした物語のおおまかな流れを整理してみます。


・母親がウシジマに借金している。
・当座の金が必要なので、友人の冬美の紹介で出会いカフェを利用するようになる。
・Kに出会う。(発見される)
・JP出所。
・JP、アキトと冬美を監禁。
・JP、ミコを捕獲。金を要求。
・ミコ、Kに連絡をとり、彼等に会う。
・全員マスクマンという奇っ怪な空間で、要求の3000万円に見合うものを賭けて勝負に出る。
・最悪の事態は回避。JPからアキトたちの居場所を聞き出す。
・勝負は無効。逃げた彼等を追って、JPが外に出る。
・今週…



JPや冬美はもうすこし複雑だが、ミコにおいては、明らかに「若さを食っている」というか、その若さゆえに、残された膨大な未来(=未來→美來)ゆえに、気付かぬまま生を擦り減らしている、というふうに言えたとおもう。さらに、出会いカフェというありかたでふつうでは考えられないような額をかんたんに手に入れてしまい、限りある若さをちょっとずつ浪費していっているということにますます気付けない状況になりかけていた。そこへ、あの異様な空間における「勝負」だ。JPの要求する3000万円に見合うものを呈示することで、ミコはみずから擦り減らしてきた「残り時間」をきわめて具体的な数字というかたちで受け取り、正面から対峙しなくてはならなかった。おそらく今回のテーマは、「若さ」と、受け身ではなく、そこから主体的に獲得される生ということだ。JPはジャン=ポール・サルトルからきているのではないかとあてずっぽで書いてきたが、これをサルトル的投企とすれば、正しかったのかもしれない。ただ、それならそれで、ミコが賭けた担保がもう少し重くてもよかったんじゃないかという気もするが。


そして、そう考えれば本編のタイトルが出会いカフェくんである意味も納得できる。サラリーマンくんで小堀がはじめてギラリ・カフェに行ったとき、「女が商品みたいだ」と言っていたが、ここでは事実女の子はどこまでも受け身だ。受動的なありかたの模型みたいな場所なのだ。もちろん彼女たちにも選択権はある。しかしあつかいは決して対等ではない。男はお金を払い、女は時間と、ばあいによってはからだを提供するが、これはまず男が金を出さなければ成り立たない関係だ。やらせない女とわかったとたんメシ豚女と罵倒されるようでは、とても「人間関係」とも、また「労働」とも言い難い。ミコやウシジマがいう金の質についてもそうだが、なによりこの受動的なありようを脱出し、みずから生を獲得しようと進み出る、その地点への成長が、この物語だったのだ。

とはいえ、正直に書くと、ミコはともかく、JPや冬美のくわしい描写をもっと読みたかった。特にJP。たぶん彼は天然ニヒリスト気質なので、述懐させてもおもしろくならないと考えたのかもしれないが、それでも彼についてはもう少し読みたかったなぁ。いろいろ回収しきれてないところもやや感じられた。


とにかく、かつてないくらい清潔な印象で出会いカフェくん終了。新シリーズは一週あけて10月6日発売の45号から!
真鍋さん!楽しみに待ってます!



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