第123話/出会い系くん①
管理人の都合により今回ははやめに更新を。未読のかたは注意。
今週から闇金ウシジマくんの連載が新章で再開。18歳の女の子が主人公の「出会い系くん」だっ!!果たして管理人はちゃんと感想を書くことができるのか!?ギャル文字がヒエログリフにしか見えないtsucchiniにはなしを理解することはできるのかっ!??むしろ、理解できるつもりなのか!?
主人公は鈴木ミコ18歳。どこかの駅前ロータリーの地べたに座り、ハンバーガーを食べながら友達を待つ、いまではよく見かけるタイプの女の子である。駅前の風景にものすごい既視感を覚えます。どこだろうな?すげー見たことある気がする…。
高校時代の仲良し四人組でカラオケに行って遊ぶ予定が全員遅刻しているもよう。ミコは携帯をカチカチやりながら友人を待つ。…うむ、よく描けてるとおもう。かわいい。女の子の絵、上手くなったなー。若さがもたらす余裕みたいなこともじゅうぶんに出ている。これが他の女キャラなら、擬音を加えながら例の醜い面でイライラと悪態をつくところでしょう。ミコもぴーぴーヒヨコが鳴くみたいに文句を言ってはいるが、あの逼迫感はかけらもない。タイトル脇やコマ外に挿入されている文章を読んでも、どうやら「若さ」が今回の主題であることはまちがいなさそうだ。
ハルコ、夏希から続けざまにドタキャンのメールが届く。…うん、読めねえ。ドイツ語のほうが速読できそうだ。すごいな、ふつうに書いたり読んだりするよりずっとあたまつかいそうだ。こういうのってバリエーションあったりするのかな。ひとによって使い方が異なったりしたら、まじで読むの大変だ。
久々の再会を楽しみにしていたミコはがっかりだ。あとは“秋”をとばして冬美だけだが、ミコはあんまり得意じゃないみたい。あるよね、そういう、人間関係のバランスって。冬美とふたりっきりというのも気が進まない。ミコは集まりを中止にしようとする。そこへ冬美から到着の連絡だ。電話帳の冬美の写真はやや太めの冴えない感じだが、現れた彼女は大きく変貌を遂げていた。もう脚とかがスッゴイ。もう…スッゴイね。ミコも社会人デビューした彼女に、引き気味でびっくりだ。
変わったね、というミコの指摘に食いついた冬美は、しつこく可愛くなったかと訊いてくる。彼ができてイメチェンしてすごーくぅイイ感じなんだそうだ。ならよし!
ミコには彼氏はおらず、ニートだそうだ。ミコは「美來」と書くようなのだが、ここの一カ所だけ「未來」と表記されている。たんなる誤植だとおもうが、いうまでもなく「未來」=「未来」であり、「美來」という名前はだから若さが孕む、可能性の表現でもあるわけだ。
一万五千もしたというネールや、高そうなバッグや靴など、すでに就職をしている冬美は稼ぎがよさそうだ。他に割の良いバイトもしているらしい。対するミコは週末だけ母親のスナックでバイトしているそう。
「あんたバカ?
若さはお金になるのよ?
もっと楽して稼げる仕事あるよ!!」
冬美のバイトというのは出会いカフェだった。サラリーマンくん編でしおりが働いていたところである。一時間お客と食事するだけで五千円だそうだ。今から行こうと誘われるが、また今度とミコは断る。「行く気になったらメールして」と言い残し、冬美はどこかに行ってしまう。…まあ、行く気になるんだろうな。
ひとり残されてさびしい気分のミコは、なにもせずぼんやり地べたに座っている。このコマの感じも、いいね~。こんなふうに時間を過ごせるのって若い証拠だよね。すらりと伸びたミコの脚に通りすぎる男たちはちらちらと視線を投げかける。
そこへ、残った“秋”、自転車に乗ったアキトが現れる。彼氏はいないということだから、幼なじみ的な感じかな?いずれにせよ仲良しだ。“秋”が示すように、女の友人たち同様ミコの高校時代を彩り、組み立てて、このミクロコスモスのうちで自己規定しあっていたピースのひとつだ。
ミコをうしろに載せたアキトは留年して現在も高校生なのだそうだ。ふーむ。
季節は夏だ。健康的な日差しとセミの声がうつすこの活動的な季節はまさに若いふたりのものだ。ミコを降ろせばかんたんなものを、アキトは彼女を載せたまま急な坂道をふぅふぅ言いながら登りきる。ジブリ作品ばりにさわやかなシーンである。そんなに「若いっていいな~」って言わせたいのか、スピリッツ読者に。言ったけど。
若さあふれる、明るさの具現のように元気なふたりの前を、パチンコ屋から滲み出てきたミコの母親と弟のタケルが通りかかる。前ページのさわやかさと比較してなんという湿っぽさか。典型的「ウシジマ」とでもいうか、卑屈な虫みたいな表情の母親は、やはり借金まみれのようだ。「消費者金融とか親戚のおじさんとか」とミコは言っているが、闇金には借りてないんだろうか。
「あーあ
お金いっぱい欲しいなぁ…
お金があればママもイラ着かないでしょ?」
若さゆえの無知か、このミコのことばにも逼迫感はまるでない。
ミコの自宅前で彼女を下ろし、そっけなく去っていくアキトの背中にまたさびしさを覚えながらミコは帰宅する。「ピーチ姫でも助けに行ってやるか」って、どういう意味?ゲームやろうかな、ってこと?
と、ミコは見覚えのない車が停まっているのを発見する。もちろん、僕らは誰の車か知っている。丑嶋である。
「よォ!あんた鈴木美來だろ?
母親はどこ行った?」
「え!?
つーか…
誰!?」
つづく。
つーか、誰…か。丑嶋はなんと応えるのだろう。
ていうかこれは「出会い系くん」なのだろうか…。まあ出会いカフェもその“系統”であるといえばそうだろうけど。
ドタキャンした仲良したちのメールを読むと、ハルコは大学に、夏希は専門学校にそれぞれ入学している。苦手とはいえいちおうは友人の冬美も就職してしまった。離れながらもミコはこの四人の集まりを大切なものと当然考えている。誰だってそうだろう。しかしハルコや夏希はそれぞれの新しい世界を優先させ、ミコとの約束を軽んじてキャンセルしてしまう。彼女たちは四人でつるんだイノセント・ワールド、閉じた小宇宙を抜け出て、刺激的なオトナの世界に行ってしまったのだ。たまたまなのかなんなのか、特に就職も進学もせず地元に残ったミコは、結果としてはまだアドレッセンスの時期にとどまっている。これを否定的な停滞と呼ぶべきかどうかは僕にはわからないが、いずれにせよ取り残されたかたちとなった彼女がそのことをさびしく感じているのはまちがいない。だから、まだ高校生のアキトといるとき、ミコはあれほどにきらきらしているのだ。
そして冬美の誘う出会いカフェは、「若さ」をお金にする仕事だという…。こりゃおもしろそうですね~
意地悪く読めば、見たことあるような描写の組み替えみたいに言うこともできるけど、まっすぐな感想としては新しいという感じがまずある。なにより主人公の女の子が魅力的だ。こんなふうに手付かずの若さが残ってる、つまりすれてない女キャラなんてこれまでなかった。だからこそ丑嶋との邂逅はどこか滑稽だ。ビビりながらも「つーか、誰」だもんな。フォレスト・ガンプとケネディのやりとりみたいだ。
ちゃんと夏感が残ってるうちにおわるかな…。べつにはやく終了してほしいわけじゃないけど。