■『SPECIAL FORCE』
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全体としては悪くないとおもう。というか、やっぱりレベルは高い。少なくとも、2ndの、完成度のわりにどこかものたりないという感じは、わずかではあるが、解消されている。
「すっぴんマスター」の方針として、とりあえずなんでも認めてみよう、いいところを探して指摘しようということが第一にあるのは、これまでにも何度か書いてきました。でもやっぱり書こうとおもう。XBSとBIG-Z、特にBIG-Zは、他のメンバーの足を引っ張っている。これまで何度も彼らのよいぶぶんを指摘してきたし、あれはまったくの本音なのだが、八人が並ぶと、やっぱりちょっと、お腹のなかにわだかまりが残るというか、消化不良の感じが目立ってしまう。いや、たとえばBIG-Zに関していえば、作品を経るごとに、明らかに上手くなっているとはおもうんです。しかし…。ちょっと想像力に欠けるぶぶんがあるんじゃないかとおもう。
XBSの言葉には、みずからの影、「XBS臭」とでもいうべきものが欠けているとおもう。これは「詞」に、特に名詞に終始しているためとおもわれる。言語学者の時枝誠記は、日本語とは「詞」と「辞」の関係で成り立つとしている。
「かつてフッサールは、意識というものを、それがつねに『何ものかについての意識』という構造をとるものとしてとらえていた。つまりそこには、『何ものか』と『についての意識』という二つの契機、あるいは、二つの異なった次元の存在の仕方があり、そのそれぞれを『ノエマ(志向対象)』と『ノエシス(志向作用)』と名付けていた。
時枝は、(略)、それらのあり方を、おのおの「詞」と「辞」とに対応させている」
加賀之井秀一『日本語の復権』(講談社現代新書)より
「詞」とは、ある対象、ある物事を概念化し、客観的に述べるぶぶん。たとえば「タバコ」という名詞は、いま僕が右手にもつ、この、これを指すわけではなく、《タバコ》一般というもののぜんたいの概念=イデアを、そう呼ぶわけである。これは「まずい」という形容詞も同じ。この「まずい」という言葉ひとつは、僕が吸うこのタバコのまずさを示すわけではなく、《まずい》ということの一般を、概念化しているわけである。
そのいっぽうで「辞」とは、「詞」どうしの関係を明らかにし、これに主観的な機微を加えるもの。具体的には助詞や助動詞。長くなったが、XBSはこの「辞」についての意識が低い、あるいはあえて排除しているようにおもえるのだ。
しかしじつはこんなことはささいなことかもしれず、このようにさらっとした、くどくない感じが彼の魅力だといわれれば、僕はそれにも大きく頷く。
しかしBIG-Zに関しては…。そんなに追って聴いているわけではないのでたしかなことは言えませんが、XBSとは逆に、わりと長いラインも用言(動詞や形容詞)で結ぶ傾向があり、これがフロウを単調にし、ことばの連なり、発声された単語が次の単語に移る際、こちらのイメージや感性に訴えかけて生成する、いわば「音楽的物語」を制限してしまっている。文章がそれぞれで完結しているのです。これはたぶん、「言いたいことを言わなくてはならない」というような意識・気合いが、空回りしているからなんじゃないか。それはそれでかまわない。どのようにスキル主義な、中性的なものであっても、メッセージ性を欠いた言葉なんて存在しないし、だったらラップをしないで楽器をやればいい。しかしもう少し吟味してほしい。ラップは、音楽以前に言葉であると同時に、言葉以前に音楽だからおもしろいし、政治家の声明文にならず、音楽として意味があるんじゃないですか。
とはいえ、メンバーの平均レベルは非常に高いものなので、水準以上のものを聴かせてくれることはまちがいない。結局あの、1stの、CDじたいが鼓動し、脈打つような悪魔的存在感と比べてしまっているからなんだろうな…。デューク・エリントンがジョン・コルトレーンに諭したとされることば…、「スポンティニアスな演奏はいちどしかされない」というのは、なにも即興演奏に限ったことではないのかもしれない…。
通して聴いてみると、メンバーの参加比率のばらつきが感じられる。DABOやBIG-Z、それに珍しくGORE-TEXなんかはよく声を聴くのだけど、たとえばSUIKENなんかはほとんど目立ってない。また例によってばらばらに、上手く集合しないままに録音はじめたのかなーなんておもいます。
そして、今回はかなり凝ったフックがよく目立つ。そういうぶぶんには、かなり新しいものを感じます。
表題曲の「SPECIAL FORCE」は、以前にも記した通り、DJ VIBLAMのトラックがすごい。これにプッシュされたのか、各自のラップもすさまじいことになっていて、ここではBIG-Zも非常に柔軟に、気持ち良さそうにうたっている。いつもこうならいいのに…。
「NIGHT RAID」は、エフェクトというかモザイクのかかった声による「かぶせ」がかっこいい。前からおもっていたけど、S-WORDやXBSの声って、シンセサイザーの無機質な音と相性がいいですよね。
酔っ払ってつくったという、MUROプロデュースの「ONE NIGHT」もおもしろい。DELIのこういう、終始ふざけているような、ニヤニヤ斜に構えたような感じが大好きです。じっさいニヤニヤしながらつくっているにちがいない。
「THE PRESENT 4 REAL」はDELIの相棒、YAKKOプロデュース。ほんとにいい仕事するよこのひとは。ヤッコのトラックが生み出す、無駄な肉を削いだようなシャープな緊張感がラップまでタイトにしている。
いちばんの感想としては、ダボとゴアテックスのすごさが際立っていた。『SAMURAI』のインタビューで誰かが、もうとうぶんニトロはいいや、みたいなことをコメントしていたけど、まあじっさいそういう感じです。たまに集まって、なんとなくつくりはじめるから、なんとかこのレベルを維持できるんだろう。特にリーダーや秩序をもたない、個性のかたまりみたいな八人の集合ですから。年一枚ペースじゃもたないでしょう…。
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