『MERCY,MERCY,MERCY 』 | すっぴんマスター

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『MERCY,MERCY,MERCY』CANNONBALL ADDERLEY


アルト・サックスのキャノンボール・アダレイ、彼のクインテットによる1966年ライブ演奏。久しぶりに棚から引っ張りだしてみて、埃のかぶりかたが尋常じゃないのを発見し、軽くへこみました。気付かないうちに、あんまり聴かなくなってたのかなー。

キャノンボール・アダレイには、一般的に、チャーリー・パーカーの後継者としての、つまり即興演奏者としての認識と、楽しく、酔っ払いながら、ファンクの具現となって吹きまくるものがあるようですが、僕は個人的には後者のキャノンボールが大好きで、この作品もそういう彼の代表作です。
このクインテットで特筆すべきは、ピアノがジョー・ザビヌルであることです。このブログでも何度か紹介している、ウェザーリポートのキーボードだった男。マイルスのアルバムを除けば、彼のストレートなジャズ演奏を聴ける機会というのは少ないので、そういう意味でもこれは興味深いものです。(余談ですがウェザーリポート『ブラック・マーケット』に収録されている「キャノン・ボール」はジョーが彼に捧げて書いたものです。この曲にどうしてもフロリダ・サウンドが欲しくて、ベースのジャコ・パストリアスを採用したとかしないとか)。
表題作「MERCY,MERCY,MERCY」はジョーの作品。ファンキーな「お前のしるし」ってところか。名曲です。アルバム全体で唯一、彼はエレクトリック・ピアノを弾いています。この、かすれたようなサウンドが、とても白人のジョーが演奏しているとは思えないほどファンキーに響いています。
このクインテットのもう一方のホーンは、キャノンボールの弟であるナット・アダレイが、コルネットをもって務めています。トランペットの小さいやつですね。ちょっと明るすぎなくらい、天真爛漫な音を聴かせていて、疲れているときなんかはちょっときついかもしれませんが…。いや、楽しそうです。この二人は、ピアノにボビー・ティモンズをむかえて『IN SAN FRANCISCO』という、こちらもライブ演奏を残していて、同様の音を聴くことができます。うーん、この兄弟は…なんでしょう。うるさいなーコムズカシイことはまああとで考えようぜ、とりあえず吹いてみよう、みたいな…(笑)これじゃ説明になってないか。ジャズの本質って、「即興音楽」という意味ではもちろんそういうところから始まっているんだろうけど、アンサンブルでやる以上、システマティックな、ある種あたまで考えた部分も必要で、ジョーなんかは完全にそういうタイプなんだが、アダレイ兄弟は…。逆に考えれば、だからこそジョーのピアノが選ばれたのかなって気もしますが。
アルバムじたいは、最初から最後まで明るい雰囲気尽くしって感じで、「優れた」って書くとちがうけど…うん、いま聞き返してみても、「楽しい」ことはまちがいない。いい作品だと思います。