惣一と同じく勉強組のつばめの初日。
 

課題はこれまで金橋が出してきた漢字テストと名文暗唱テストの内容総ざらい。
発表された際に20ページ程度の漢字プリントと

金橋曰く「名文」という百人一首やら小説の書き出しやら詩やらがびっしり印刷された10ページ程度のプリントの束を渡されていた。

最後の確認テスト7割でクリアは惣一と条件が同じだ。
 

風丘には「とりあえず漢字は5ページ目まで、暗唱は2ページ目までさらっておいで」と言われていた。
気になるのはその後付け加えられた

「今までの結果、金橋先生から聞いてるけど、結構ハイペースでさらってかないと間に合わないから荒療治でいくからね。

ちゃんとやってないと本当に泣くことになるから悪いけどそのつもりで来てね。」という恐ろしい言葉。
あの風丘がわざわざ「荒療治」と言ってくるなんて、どんなことになってしまうのか…。
さすがにおびえながらも、やっぱり漢字も暗記も苦手なつばめは、

少しはプリントに目を通しはしたものの、「ちゃんとやる」とはとても言えない程度の勉強で初日を迎えてしまった。
 

 

 

「失礼しまーす…」

「はい、どうぞー…ってほんとに嫌そうな顔だねぇ。」

「嫌に決まってるじゃん! 自分の特に嫌いなジャンルの勉強で、しかも風丘と二人っきりこの場所なんて!」

つばめは風丘が担当のため、部屋は必然的にいつもの「風丘の部屋」。嫌な思い出の詰まった場所だ。

「自業自得でしょ。はい、座って。」

この部屋では滅多に使われない一般教室仕様の机と椅子を示され、

つばめが渋々席に着くと、風丘はそこに両面刷りのプリントを1枚置いた。

「プリント5ページ目までの範囲で作った漢字テスト。全部で30問。制限時間は15分ね。」

「えー、いきなりテスト…」

「文句言わないの。はい、スタート。」

仕方なくシャーペンを握ったつばめだが、半分以上うろ覚えの漢字ばかりだ。

読みはなんとなく昨日通し読みした記憶と前後の言葉の雰囲気で埋められるが、書きはどうしようもない。

(「支離メツレツ」…? 「一意センシン」…? 「ゼンジン未到」…? もー、四字熟語ばっかり分かんないよ!)

ほぼ自棄になって適当な漢字を書き入れて、つばめはあっさり諦めた。
「もういいの?」との風丘の問いに、「うん、もう考えても分かんないもん」と馬鹿正直に答え、風丘はため息をついた。

「じゃあ採点するけど。つばめ君、昨日漢字の勉強どれくらいやった?」

「えー…じ…や、さん…じゅっ…ぷん…くらい…」

「ふーん?」

本当は10分にも満たない程度だったが、流石に風丘の視線が痛くて誤魔化した。
その間にも風丘はあっさり採点を終え、数十秒の沈黙の後、唐突に聞いてきた。

「高村光太郎の『道程』。言ってみてー」

「え?」

風丘の意図が理解できず聞き返してしまったつばめ。それにまた風丘はため息をついた。

「…ふぅ。プリントに何が載ってたかすら覚えてない、と。オッケー、おいで、太刀川。」

「え゛っ!? や、やだ!!!」

名字呼びにすかさず反応して、つばめは分かりやすく飛び退いた。その素早さに風丘は苦笑する。

「こっちの理解力は驚くほど早いね。だったら昨日の時点で想像力もう少し働かせるべきだったね。
俺がわざわざ『荒療治』なんて言うの、これしかないでしょう?」

と言って、風丘はあっさりつばめの腕を捕まえ、ソファに座った自分の膝に横たえた。

「やだやだやだ!! だったら最初からそう言えばいいじゃんーーーっ 聞いてない!!!」

「多少脅してある程度努力する姿勢が見えたら、

こんな本格的なお仕置きスタイルにするつもりはなかったんだけどねぇ。
漢字テストは30問中10問、しかも読みだけで書きは全滅。

30分なんて勉強してないでしょ。誤魔化してもバレバレ。

暗唱は範囲内の作品のタイトルすらピンときてない…。
これだけ分かりやすく『勉強してないです』って見せつけられちゃ厳しくせざるをえないね。」

「っ…そんなのずるいーーっ」

「何とでも言いなさい。これからの方針決めました。

とりあえずまず毎回最初に漢字テストをします。で、間違えた分だけ…」

そう言いつつ、風丘はつばめのズボンを下着毎下ろすと…

バシィィンッ

「いたぁぁぃっ」

「1問1発お尻ペンペン。」

バチィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ

「うそっ…ああっ やぁっ…むりぃっ そんなのむりぃぃっ」

「無理じゃありません。」

バチィンッバチィンッバチィンッバチィンッバチィンッ

「いたいいたいいたいぃぃっ やぁぁっ」

バチィンッバチィンッバチィンッバチィンッバチィンッ

「まってぇっ いたぁぃっ ああっ すとっぷぅっ」

「待ちませんー。」

今回はお説教も何もないからか連打が多くてスピードが早い。
落ち着く前に痛みが降ってきて、つばめはいつもよりも痛く感じてすでに足をばたつかせていた。

バチィンッバチィンッバチィンッバチィンッ バシィィンッ

「いっっっ! ぁぁっ…やぁぁぁっ …っいったぁぁぃっ!!」

漢字テストの誤答分の精算が終わると、つばめはあっさり膝から下ろされた。
この辺りがいつものお仕置きとは違うところだ。
涙目でお尻をさすっているとつばめを見て、あーあー、と風丘は苦笑いだ。

「だから言ったでしょー、ちゃんとやってないと酷いって。」

「ひどいよっ…こんなのっ…」

「はいはい、さっさとお尻しまって、席戻って。」

恨み言を言うつばめを流して、

風丘はノートパソコンを何やらカタカタと操作し、あっという間に印刷したプリントを机に置いた。

「ほらー、時間ないから早く。」

まだソファでぐずっているつばめを立たせ、服を無理矢理戻してきた風丘に、つばめは文句を言う。

「ちょっ…お尻まだ痛いっっ」

しかし、次に風丘から告げられたのは信じられないことだった。

「何言ってるの。まだ漢字テスト終わってないんだよ? 休憩は全部満点取れてから。」

「え…えぇぇぇっ!?」

見れば、机の上には先ほど分からず適当に埋めた四字熟語をはじめとした書き取り問題の数々が印刷されているテスト。
読み問題はごっそり削除されているから、間違えた問題だけ残されているのだろう。

「これ、さっきの結果ね。今から15分後に間違えた問題だけ再テストするから、しっかり勉強するんだよー。」

「ま…まさか再テスト間違えたら…」

 

嫌な予感がする。つばめが恐る恐る尋ねると、その予感は見事的中した。

「次は間違えた分1問につき2発。再々テストは間違えた分1問につき3発。全部出来るまで続けるよ。

その後は暗唱を俺のお膝の上で言えるまで下ろさないからそのつもりでね?」

つばめはサァッと血の気が引くのを感じた。今、自分はとんでもない状況に立たされていることをようやく理解した。

「そ、そんなの死んじゃうっ…」

「俺も無理矢理勉強させるのは不本意だけど、

つばめ君みたいな勉強大っ嫌いな子が短時間で成果上げるには、
残念ながらこの方法が一番手っ取り早くて効果的だって立証されちゃってるんだよねぇ。」

「なにそれぇぇぇっ」

そんな余計な立証してくれた奴は誰だ!と心の中で誰とも分からぬそいつを恨みながら、
今は「お尻痛くなるの嫌なら勉強しなさい」という風丘の言に従うしかない。
つばめはもう涙目のまま持ってきたプリントとノートを取り出し、慌てて書き取りを始めた。
そのノートはプリントと共に支給されたものだが、まっさらで開いた形跡もなく、

漢字の勉強なのに一文字も書いていないで臨んだつばめのあまりの潔さに風丘は心の中で笑うのだった。



結局、その後も散々だった。

完全に一からの勉強で、漢字苦手なつばめが15分程度の勉強で書き取りばかりの20問の再テストに満点合格などするはずもなく、

満点をとれたのは再々々テストになってからだった。
その時点で叩かれた回数は50発を超えていて、かなり赤く色づいていたのにそこから暗唱が始まる。これがまた酷いもので。
とりあえず『道程』1つでいいからまず覚えなさい、と風丘に言われまた15分与えられた。
暗記タイムが終わると今度は有無を言わさず膝に乗せられ、ほんのり赤いお尻に風丘の平手がスタンバイ。

この状況でさぁ、言ってみろというわけで。

「こ、こんなの覚えてたってプレッシャーで間違える!!」

しかしつばめの抗議も一蹴される。

「本番金橋先生の前でいきなり言われたお題をすぐに言わなきゃいけないんだよ?
これくらいのプレッシャーでちょうどいいでしょ。」

「うぅぅ…」

更に、少しでも間違えれば軽くとはいえすぐに準備万端な平手が振り下ろされた。

「僕の前に道はない、僕の後ろに道は出来る、ああ、自然よ、…父よ、僕を…僕を…

バチィンッ

あぁぁっ!」

「『僕を一人立ちさせた広大な父よ』。」

「僕を…一人立ちさせた…広大な父よ…僕を、一人立ちさせた、広大な、父よ…」

「はい、じゃあ最初から。」

間違えたフレーズを何度か復唱したら、最初から。
これを何度も風丘の膝で繰り替えさせられ、ようやく通して言えたと思ったら3回連続で言えるまでダメ、と下ろしてもらえず。
何とか解放された頃にはつばめは脳も体もヘトヘトだった。

「はーい、お疲れさま。」

今日の分のノルマがようやく終わると、風丘はつばめをソファに寝かせ、冷やしタオルをお尻に置きながら頭を撫でてくれた。
もはや恥ずかしがってる余裕もなく、つばめはソファの座面に突っ伏した。

「明日は漢字8ページまで、暗唱は3ページまでね。前の日までの範囲に少しずつプラスしてくから。」

「地獄だよぉ…」

つばめの呟きを風丘は拾ってはくれず、ただ頭を撫で続けるだけだった。



翌日放課後。あと15分くらいで補習の時間。
流石にもう手つかずは怖かったのでそれなりの勉強をしたつばめは、
ただもう昨日の地獄のような時間がもうすぐやってくる、という現実から目を背けたくて、

そして昨日どれだけ酷い目にあったかを共有したくて、カウンセラー室に突撃した。
なんとなく、お互い話題にしたくないだろうこの補習に関することを惣一たちに愚痴るのは気が引けたのだ。

「海ちゃん聞いてよぉぉぉぉっ」

「おー、聞く聞く!! どうしたどうしたーっ」

つばめは波江が赴任してきてからカウンセラー室の常連だった。
風丘との事情もよく知っており、ノリ良く何でも親身に聞いてくれて

その軽そうな感じとは裏腹にバッチリカウンセラーな波江をつばめはとても慕っていた。
突然飛び込んできたつばめに驚くこともなく、波江はニコニコ笑顔でつばめに続きを促す。

「風丘が酷いのぉぉっ」

そうしてつばめが昨日の一連の出来事をマシンガンのように話していると、不意に波江が気になる相づちを打ってきた。

「あー。はーくんのそれ、心やられるよねぇ…」

「そうなんだよ! 特に暗唱の…とき…って。」

その相づちはまるで。

「海ちゃん経験あるの!?」

波江がなんとなく同じ感じで風丘たちに叱られていたであろうことは、この前の球技大会の一くだりのところやら
普段の波江の言動やらで感じてはいたものの、まさか…。
そして、波江は隠すでもなく、あっさり認めた。

「あー…大学受験の時、ちょっとかなりやばくて…アハハ。」

「かっ…」

それを聞けば、思い出すのは昨日のどこの誰とも分からぬ奴に抱いたあの感情。
それが今判明したのだ。ならば言うしかない。

「海ちゃんのせいだぁぁぁぁぁぁっ」

「うわぁぁっ!? ちょっとつばめ声でかっ(笑)」

「笑い事じゃないよぉぉっ 

海ちゃんがそんな無茶苦茶な勉強法で結果出しちゃうから風丘が僕にまでこんな横暴なやり方っ…
僕本番テストまでにお尻痛すぎて不登校になる!!」

元気良すぎる不登校宣言に波江が噴き出しそうになっていると、部屋の入り口から声がした。

「そりゃあ効果てきめんだったもんねぇ、海保?」

「ぎゃぁっ 風丘ぁっ」

「つばめ君ほんとに声大きいよ。廊下まで響いてた。」

クスクスと笑いながら、カウンセラー室のドアから顔を覗かせた風丘に、波江はまぁねぇ…と遠い目をする。

「びっくりするくらい成績上がったよねぇ…

ま、つばめは2週間だけでしょ?
俺なんて夏休みから受験終わるまでずっとだったけど今こうして元気だから。死なない死なない大丈夫っ」

「え…」

あれを夏休みから受験終わるまで…半年以上…?
それを言われてしまえば黙るしかなくて、つばめはうぅ…とうなる。

「はい、つばめ君時間だから一緒に行くよ。じゃないと遅刻のお尻ペンペンからしなきゃいけなくなっちゃう。」

「もー、何でもかんでもお尻叩かなくていいよぉぉぉっ」



結局やっぱりこの風丘独自(?)のスパルタ勉強法は絶大な効果で、

痛いお尻をさすりながら受けたつばめの本番テストは
これまでの結果からは想像もつかない脅威の正答率9割、暗唱テストに至っては満点というとんでもない結果となり、
悲しいかなつばめもまたこの勉強法の効果を立証する一員となってしまったのだった。
 

おはようございます晴れ

結局朝になってしまいました…すみませんあせる

 

「GW何処にも行けないのでフリートークでツイキャスします」
放送予定日時:5月2日 土曜日 21:00~(2時間程度予定)

主な放送内容:フリートーク(マシュマロに来た質問等)

URL : http://twitcasting.tv/tsubameshirase
閲覧パスワード:spa

 

バックナンバー残すかは今のところ未定です。

いつも以上に実のある放送になるかわからないのであせる

 

そして、質問は匿名メッセージサービス「マシュマロ」で受付中です音譜

個人情報に関わることを除いて(笑)

基本全てにお答えしようと思ってますので、

よろしければ下記からご質問くださいニコニコ(一瞬Twitterでお題箱開設していました。

そちらに既にいただいたものについてはそのままで大丈夫です)

https://marshmallow-qa.com/tsubameshirase

 

マシュマロがうまく使えない場合は、ブログのコメントでも大丈夫です!!

(白瀬が承認しなければ公開されないのでご安心くださいー)

それでは、ご都合つく方、是非流し聴きしてやってください(笑)

皆様こんばんはビックリマークお月様

 

さてさて、遅ればせながらメガネ教師ここまでの後書きです星

…というか、35話後編について書いたと思ったら書いてなかったあせる

ので今更ですがちょっとだけ。。

 

思った以上に葉月の独占欲強かったです←

最後の件は賛否分かれそうだなーと思いつつ。

たまに、本当にたまにはこんなのもいいかなと。

最近ほとんどM/F書いてなかったので久々書けて楽しかったラブラブ

仁絵の保護者感がいいですね得意げ

実嵐と仁絵の絡みが個人的な推しポイントです笑

 

そして36話。

プロローグからの惣一編。

とりあえず、試験制度についてはもうご都合主義の極みなので

いつも通りスルーしてください汗

 

惣一編は惣一と魅雪と花月。

魅雪がカーデビューですクラッカー

イメージは「SM女王様」(←え)

ピュアな花月とのコントラストを楽しんでもらえれば。

まぁ、花月の危うい一面も垣間見せましたが。。。

 

お勉強組はストーリーよりもスパシーン重視で進めるつもりでしたが、

書き上がってみたら思った以上にただただスパだけだったあせる

ストーリー楽しみにしてくださった方いらっしゃったらすみませんダウン

 

次回はもう一人のお勉強組のつばめ編。

懐かしの(?)あのお勉強方法が登場します音譜

 

私生活は趣味がとても充実してます。

はまったグループのデビューもあったしねビックリマーク

ちらっといきなりのめり込むと大変かも…と

この界隈をご存じの先輩方から暖かいご心配コメントもいただきましたが

ありがとうございますおねがい

私はいろいろ掛け持ちの新参者のあさーいお花畑ファンなので

今のところ普通に楽しめてます。

今ちょうど個人的に舞台空白期なのでちょうど良くはまれましたラブラブ

これから職場は繁忙期に突入なのですが←

スパと共に良い息抜きの癒やしが1つ増えて幸せですキラキラ

(スパと一括りにすると怒られそうだけど笑)

 

翌日放課後。
 

学業関係の二人はこつこつ勉強しなければならないため、

早速教師陣指導の下補習タイムが始まっていた。…が、すんなり始まるわけなどなく。
 

 

 

こちらは惣一の補習用に与えられた視聴覚室。
早速都合をつけた花月がやってきていた。

「とりあえず、テキスト早めに終わらせちゃおっか。ペーパーテスト対策も兼ねられるし。
どれくらい手つけられた?」

「あー…」
 

惣一とつばめは使うテキスト等が課題発表時にその場で手渡され、

翌日の今日までに自宅でとりあえずやっておくよう指示された課題もあった。
惣一は、テキストを分かる範囲でできる限り埋めてくること、と花月に指示されていた。
だが…

「えーっと…」

惣一の返答に困った様子に、花月が首をかしげる。

「あんまり出来なかった?」

「いや、あのー…」

花月の純粋な視線が居たたまれない。
惣一が徐々に視線を下げていくと、頭上から冷たい声が降ってきた。

「っていうかあんたテキスト持ってきてるんでしょうね?」

「ゲッ…いつからっ」

腕組みしていつの間にか近くで見下ろしていたお目付役の氷村に、惣一はあからさまに顔を歪めた。

「テキストまず出しなさい。話はそれからよ。」

「っ…」

「は・や・く。」

手を出してくる氷村に、惣一はついに誤魔化すことを諦めた(まぁ、誤魔化せもしていなかったが)。

「忘れたっ…」

「はぁ!?」

その言葉に既に青筋が浮き出そうな氷村と対照的に、花月はなんだぁと暢気な声を上げる。

「それなら早く言ってくれればよかったのに。私用にもう一冊あるから、今日はコピーして使いましょ。
どの辺りはやってあるー?」

テキストを広げて見せてくる花月に、惣一はあからさまに狼狽える。

「う…」

二人の様子にため息をついて、氷村が止めを刺しにかかる。

「花月ちゃん…人が良すぎよ。」

「え?」

「正直に言ってご覧なさい。そもそもテキスト1ページでも手をつけたの?」

「…それはっ…」

「…やっぱり難しかった?」

 

まだ疑わない花月に氷村はこの子はもう、と花月にも内心少し呆れながら続ける。

「教科書対応型のテキストでしょ、それ。

ちゃんと問題見れば教科書丸写しで埋められる問題もある。
難しくて1問も分からなかった、なんて通用しないからね。

というか、その様子だとテキスト開いてもいなさそうね。」

容赦ない氷村の言葉に追い詰められる惣一に、

花月はようやく自分が暢気に対応していた自覚を持ちながらも、見かねて口を開く。

「ゆきちゃん、そんな冷たく言わなくても…」

「花月ちゃんはほんとに甘過ぎよ、私たち舐められたの。
どうせ初日だし、忘れた分からなかったって言い張ればそんなに怒られないとでも思ったんじゃない?
昨日だって、私の顔見て嫌な顔しながら、葉月じゃなくてラッキーくらいに思ってたんでしょ。」

「そっ…そこまで言ってねぇだろっ…」

「どうだか。…さて、せっかく来てくれた花月ちゃんには申し訳ないけど、

今日はこのバカを泣かせて終わる日になりそうね。」

 

氷村の言葉にこの後どうなるか悟った惣一は慌てて声をあげた。

「はぁ?! マジでや「やるに決まってんでしょ。そのための視聴覚室よ。

音楽室と音楽準備室以外に中等部校内で数少ない完全防音の部屋!」

「うおっ!? おい、離せっ…ってぇっ」

「ゆ、ゆきちゃんっ」

その瞬間、氷村は惣一の腕をグイッと強く引くと、

近くの机に惣一を組み伏せ、ついでに掴んだ片腕を後ろ手に押さえつけた。

「乱暴は…」

「大丈夫よ。そんな力入れてないし、こいつが大袈裟に暴れてるだけ。
それに、ここからするのはお仕置き。私たちを大いに舐めてくれたんだから、多少の報いは受けてもらわないとね。」

氷村の言葉に、いよいよ始まってしまうことを察した花月は気を遣って扉の方に向かった。

「わ、私外に行くねっ」

 

花月の声かけに、何をされるかバレてしまっている恥ずかしさよりもホッとした気持ちが勝り、

惣一が心の中で胸をなで下ろしているのも束の間。
氷村が何言ってるの、と花月を制した。

「ダメよ。花月ちゃんの前でお仕置きされるから意味があるんでしょ。」

「はぁぁぁぁぁぁ!? この変態ヤローまじで離せ、んなのダブルでセクハラじゃねぇか!!!!」

「ちょっとあんまり暴れないでくれる?」

ビシィィィッ

「きゃっ」

「いっっっってぇぇぇぇっ!! っにすんだマジでこのババア!!!」

氷村が現れた瞬間から持っていて、嫌な予感はしていた指示棒が思い切り振り下ろされ、

あまりの痛みに反射的に惣一は怒鳴り声で噛みついた。が、それが更に火に油を注いだ。

「なーに、その口の利き方!」

ビシィィィィンッ

「ってぇぇぇっ…っじで…ありえねぇ…」

更に威力を増した指示棒に惣一は更に噛みつきそうになるのを必死で押し殺した。
花月の前ということもあるし、さすがにこの辺りは3年間葉月に躾けられて学んでいた。

「あんたがセクハラとかふざけたこと言うからでしょ?
まぁ、でもそうね、花月ちゃんがどうしてもって言うなら後ろ向いてていいわよ?
まぁ、元々ズボンだけ下ろして、パンツは許してあげるつもりだったけど。

さすがに花月ちゃんも見たくないだろうし。」

「わ、私後ろ向いてます!」

花月はそう言うが早いか、二人に背を向け、更に目を瞑り下を向き、仕舞いには耳を塞いで縮こまってしまった。

「そこまでしなくても…その体勢でずっといるのきついでしょ?」

氷村の問いかけに、聞こえていないのか聞こえないふりをしているのか無反応の花月に、

まぁいいか、と氷村は押さえつけている惣一に視線を戻した。

「花月ちゃんにここまで気を遣わせたことも大いに反省すべきね。それじゃ、本番行くわよ。」

「っ…」

器用にズボンを下ろされ、惣一は顔を真っ赤にして奥歯をかみしめた。
 

確かに多少は舐めていた。

いくら葉月から鞭役を仰せつかったと言ったって、

初日、しかも思いっきり外の人間である花月のいる前でそこまでのことはされないだろうと高をくくっていた。
まぁその上テキストを持ってきてもいなかったのは元々勉強道具を持って帰るなんて習慣がほぼない惣一が

昨日受け取った流れでそのまま持ち帰ってしまい、純粋に家に忘れてきたただのミスなのだが。
 

そして蓋を開ければこの状況。

まだ2発制服のズボンの上から打たれただけなのに打たれたところはいつまでもジクジクと痛むし、
容赦なくズボンを下ろされ、ここから本番、なんていう嫌な言葉。
後悔先に立たずという状況はもう毎度だが、それにしたって今回はまさにその通りだった。

ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ

「ぎゃぁっ っぁぁっ…ちょっ…」

ビシィィンッ ビシィィンッ

「いってぇぇっ…ストップすとっ…」

「馬鹿じゃないの? お仕置きにストップはない!」

ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ

「あああっ マジでっ…いてぇぇっ」

「せいぜい後悔して反省することね。女を舐めると怖いわよ?」

ビシィィィンッ

「っぐ!! っ…」

テメーは女じゃねーだろ、と頭の中では叫びながらもそんなことを口に出来る勇気も余裕もなかった。
威力は葉月のお仕置きに比べて特別強い、ということはなさそうだが、
惣一にとって指し棒のような細いもので打たれる痛みはあまり慣れていないこともあり、脳天まで響くような衝撃と痛みだった。
痛みで既に涙が湧き上がってきていた。

ビシィィンッ ビシィィンッ

「いたぁぁっ…ほんとにっ…」

ビシィィンッ ビシィィンッ

「いてぇぇぇっ…マジで死ぬっ…」

「大袈裟ねぇ。この程度で死なないわよ。」

ビシィィィンッ ビシィィィィンッ ビシィィンッ

「うぁぁぁっ…もうやめっ…やだすとっぷってぇっ」

ダンダンと足を踏みならし必死にストップを訴える惣一に、氷村は呆れ顔で切り捨てる。

「未だに反省の言葉一つも言えないお馬鹿の言葉は聞こえません。」

ビッシィィィンッ

「っあぁぁぁっ」

そうして痛烈な1発。

氷村に押さえられていたから背中は机に残っているものの、腰は完全に落ちしゃがみ込んでしまった。
普通なら体勢を崩したことを叱られながらも痛みは止む。
惣一はその間に痛みに荒れた呼吸を整えようとした。しかし、そうはいかなかった。

ピシィンッ

「あぁっ!?」

位置を落とした惣一のお尻めがけて未だに指示棒がとんでくる。

ピシィンッ ピシィンッ ピシィンッ

「あっ、ちょっ…うぁぁっ」

「で? 結局何もないの?」

体勢が叩きづらいから先ほどまでの痛みはないが、既に何発も食らっているお尻には十分な痛みだった。
惣一は結局叩かれながら、必死で白旗をあげるしかなかった。

ピシィンッ ピシィンッ ピシィンッ

「もうっ…あぅっっ しないちゃんとするっ あぁ! 言うこと聞くよっ…」

「それだけ? っていうかいつまでそんな格好してんの」

氷村はようやく惣一の体勢を元に戻すと、また再びの強さで指示棒を振り下ろした。

ビシィィィンッ

「ぎゃぁっ 悪かったよっ…」

「何よその上から目線」

ビシィィィンッ ビシィィンッ

「うぁぁっ ごめん、うっあ!! ごめんてぇっ ごめんなさいっっ」

「またふざけた態度とったら容赦しないから…ねっ!」

ビッシィィィンッ

「~~~~~っっっっ!!!!!」

強烈な一発に惣一が悶絶していると、氷村はカランと指示棒を投げ捨て、驚くべき切り替えで惣一を引っ張り上げた。

「早くズボン上げなさいよ。花月ちゃんが可哀想でしょ。」

見ると、花月はまだ律儀に最初の後ろを向き俯いて耳を塞いだ体勢をキープしていた。
恐らく目もまだ瞑っているのだろう。
惣一は慌ててズボンを上げると、それを見たか見ていないかの内に氷村は花月の肩を叩いていた。
肩を叩かれた花月は、ハッと顔を上げると、まだ涙を隠せていない惣一に駆け寄ってきた。

「大丈夫!? やだ、泣いてる、ゆきちゃんいきなりやり過ぎたんじゃない…?」

オロオロして心底心配して涙を指で拭ってくれる花月に、

惣一は更にメンタルを削られているような気がして、顔を真っ赤にした。

「そいつが大袈裟なだけよ。ちょっとやっただけで泣き虫ねぇ。」

「るっせぇ…」

「あら、追加をご所望?」

「い、いらねぇよっ」

「もう、ゆきちゃんあんまりいじめちゃだめよ…でも、次までにはちょっとでもやってきてね?
私もずーっと耳塞いで目瞑ってるの大変なんだから。」

そう言うと、花月は惣一のおでこをペチンと軽く叩いて、困ったように笑った。

「ご、ごめん…」

「なによー、花月ちゃんには素直じゃない!! っていうか花月ちゃんほんと葉月の妹よねぇ…」

 

ほんと魔性…という氷村の呟きは音にはなっていなかった。

「うるさい…」「? どうしたの、ゆきちゃん…」



こうして、氷村一人がいろいろ先を見据えて頭を抱える中でのスタートだったのだが、

意外なことにこの後惣一は確認テストの点が足りない分、と数発叩かれることはあったものの

ほとんどお仕置きされることはなく、
結果ギリギリの点数とはいえペーパーテストを乗り切った。

テスト結果を聞いた後、同様にテスト組で一緒だったつばめにどれだけお尻叩かれた?とストレートに聞かれ、
その意外な答えを聞いたつばめの「えぇぇっ!? いいなぁ、なんでぇっ!?」という問いかけに、

惣一は恥ずかしげに答えた。

「お前もあの状況になりゃ分かるよ…

オカマババアにやられるってことより、その場に風丘妹がいるのが俺のメンタル的に無理だった…」

こんな必死に勉強したの久々だ…とぐったりと語る惣一はテストをクリアした充実感や達成感とはほぼ遠い表情ではあったが、
ほぼお仕置き無しで乗り切ったのも事実。
「えー、惣一すごーい…」とつばめにお尻をさすりながら尊敬のまなざしを向けられた。

これを葉月が意図したのか分からないが、結果的に惣一にとって最も効果的な特別講師となったのだった。
 

こんばんはーお月様

相変わらずの深夜更新すみませんあせる

Twitterでもちらっと予告させてもらいましたが、早速標題の件ですビックリマーク

…実は先日とあるフォロワーさんのツイキャスを聞いて

久々にやりたいなぁとふと思い立ったのです。。

 

「ツイキャス本放送(年納め)」
放送予定日時:12月14日 土曜日 22:00~(2時間予定)

主な放送内容(予定):「最新作(赤井/安室)とこれまでに上げた二次創作作品について」

               「質問箱の回答を基にした雑談」

                「100の質問を使った雑談」

URL : http://twitcasting.tv/tsubameshirase
閲覧パスワード:spa

 

…というわけで、ほぼ雑談のみのラインナップですが(作品上げてないからです←)

年納めのツイキャス、よろしければ覗いていっていただけると嬉しいです音譜

今回は最新作が二次創作なこともあって、

過去に上げた二次創作作品を1つずつ振り返っていってみようかなと思います。

一応バックナンバーも残す予定です。

質問箱については、そこで回答するのではなくて既に回答したものについて補足みたいな感じで

おしゃべりできたらな、と思います。

100の質問はおしゃべりネタ集めです 笑

 

では最後に質問箱(https://peing.net/ja/tsubameshirase)のこれまでの回答をいくつかつけますね!

それでは、おやすみなさい星

 

【小説を書く上で、一番大切にしていることは何ですか?】

一番…と言えるかどうか、そして実際出来ているかは微妙ですが(汗)、 

心情描写は極力丁寧に描くようには心掛けています。 

スパ小説ですがスパシーンそのものよりも、 そこに至るまでやスパ中のキャラの感情を上手く書けたらいいな…と。

 あとは時系列が重要なエピソードを除いては キャラの出番ができる限り片寄らないように…ですかね(笑)

 

【自分のキャラで一番のお気に入りは誰?】

キーキャラではバレバレだと思いますが仁絵。

カーキャラは風丘…と思いきや最近霧山が結構キテます(笑) 

それからメインどころ以外では須王と歩夢も結構お気に入り。 

まぁ結局は自分が産み出した子達なので皆大好きですが←

 

【夜、一人で過ごしている時に聞きたくなる曲は何ですか?】

聞きたい曲…となっちゃうと 結構その日の気分によっちゃうので(;・∀・) 

「夜」でイメージする曲で結構聞く曲をいくつか。 

鬼束ちひろさんの「月光」。 独特な世界観が好きです。 

アニソン(?)ではRADWIMPSの「スパークル」。 『君の名は。』の星空が思い浮かべられます。

あと最近SixTONESに触れている影響で KAT-TUNの「MOON」。

 SixTONES、KAT-TUNのカバー多くて。 

いろいろありましたが、昔KAT-TUNの曲めっちゃ好きで聞いてたので、これを機に聞き直してます。 

アルバム曲ですが和のテイストが効いててとっても素敵な曲です。

 

【自然と聞いて一番に思い浮かべるものは何ですか?】

家のすぐ近くに山と川があるので(超田舎)、 それを思い浮かべますかねー 

泳げないので、 「自然」と言われて想像するのはどちらかといわれると山かなぁ、って感じです。

 

【銀魂はお好きですか?

また今までに書いたことがない版権物で書きたいなと思っているものはありますか?】

銀魂はざっくりした知識しかないんです(;・∀・) 

ある程度のキャラクターは分かるんですが、二次創作書けるほどかと言われると…f(^_^;) 

書きたいなー、と思い続けて 世間的に旬がちょっと過ぎちゃったかなぁと思うのは

黒バスとFree!ですかね…(私にとってはいつまでも旬です(笑)) 

あとは寮生活に萌えるA3!ですかね! 

版権はオリジナル以上に仕上げるのに時間がかかるので 

書きたいな、と思ってから実現するのはほんの僅かです…←