【正論】東京基督教大学教授・西岡力 北朝鮮人権法改正案の成立の意義
■国際金融機関の対北融資を阻止する
≪テロ国家指定解除の動き≫
年金問題などで与野党が激しく対立していた6月末の国会で、北朝鮮人権法(拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律)の改正案が自民・民主・公明3党の合意のもと、議員立法で成立した。この改正案の持つ意味についてあまり知られていないのでそのことを論じたい。
金正日政権は現在、米国にテロ支援国家指定を解除するよう求めており、米国は作業開始を約束した。正確にはテロリズム・スポンサー・ネーション指定であり、大韓航空機爆破事件などを契機に1988年法律によって定められた制度だ。指定は年1回、国務省が大統領などの承認を得て行っており、北朝鮮は当初から毎年指定され続けているが、理由はよど号ハイジャッカーをかくまっていることや大韓機爆破テロなどだった。
指定されると米政府はその国に対して人道支援以外の経済協力ができず、そればかりか世界銀行、アジア開発銀行など米国が出資する国際金融機関がその国に融資しようとする場合、米国政府が自動的に反対し、結果として融資は不可能となる。
実は、北朝鮮の指定が解除される直前までいったときがある。2000年金大中大統領が訪朝し南北首脳会談が開催されたが、金大中大統領は北朝鮮に大規模な経済支援を約束していた。そのとき韓国は北朝鮮をアジア開発銀行に加盟させるよう動いた。そして、米国クリントン政権もテロ支援国家指定解除作業を進め、アジア開発銀行からの大規模融資を後押しした。
≪米も「拉致はテロ」認める≫
今から考えると信じられないが2000年10月米国は北朝鮮と「テロ反対共同声明」を出して、協力してテロと戦うと宣言した。その宣言によって北朝鮮はテロ国家でなくなったと議会などを説得しようとしたのだ。あの時の大統領選挙でブッシュ現大統領でなくゴア候補が当選していれば、テロ支援国家指定解除とクリントン訪朝が実現していた可能性は高い。そうなれば日本政府は、米国からも拉致を棚上げにした北朝鮮支援を迫られるという重大な危機に直面していただろう。
家族会・救う会ではこのような米国の動きになんとか歯止めをかけようと、「拉致はテロ」とのスローガンを掲げ、北朝鮮をテロ支援国に指定する理由として拉致問題を追加するよう必死で働きかけた。英文資料を議会調査局や議員スタッフに届けることからはじめ、2001年2月には初めての家族会・救う会訪米団を派遣した。そのときは、お金が足りなくて70歳代の高齢の家族にもエコノミーチケットしか準備できずくやしい思いもした。度重なる訪米と、拉致議連のバックアップ、主として2002年9月以降の日本政府の尽力もあり、2004年以降は毎年、日本人拉致問題が指定の理由として、国務省の年次報告書に書かれるようになった。
≪日本独自の阻止可能に≫
拉致はテロであるから、拉致問題の解決がない段階での米国の指定解除には断固反対すべきだ。だが、米国にばかり依存するのでなく、日本が独自に北朝鮮への融資に反対しなければならない。
米国のテロ支援国家指定制度のような法的根拠を日本でもつくるべきだと、今年3月の家族会・救う会は新運動方針に盛り込んだ。その要求を入れ、自民、民主、公明3党の政策責任者、拉致議連関係者らが動き、昨年議員立法で成立した北朝鮮人権法に「政府は、その施策を行うに当たっては、拉致問題の解決…に資するものとなるよう、十分に留意するとともに、外国政府及び国際連合、国際開発金融機関等の国際機関に対する適切な働きかけを行わなければならない」(傍点は西岡)の条項を追加する改正案がまとまり、6月29日、与野党の圧倒的多数で成立した。共産党と社民党は反対した。
ここでいう国際開発金融機関とはアジア開発銀行など北朝鮮が融資を狙っている国際機関のことだ。つまり日本は「拉致問題が解決されない限り経済支援をしないだけでなくアジア開発銀行などの融資に反対する」ことが法律で明記された。
この改正案によって米国のテロ支援国家指定制度が定めた制裁とほぼ同様の効果が生まれた。金正日政権に対していくら米国国務省と核問題での取引を進めても、拉致問題が動かなければ日本からの経済支援は一切期待できないだけでなく、彼らが狙っているアジア開発銀行などの国際金融機関からの融資も大口出資国の日本の反対により不可能になるというメッセージを伝えられたのだ。
(にしおか つとむ)
(2007/07/11 05:23)
【正論】東京基督教大学教授・西岡力 北朝鮮人権法改正案の成立の意義|正論|論説|Sankei WEB
年内に朝鮮半島和平協議も 外相会合、9月までに期待
【ワシントン11日共同】北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補は11日、韓国、北朝鮮、米国、中国の参加が見込まれる朝鮮半島和平に関する協議について「(寧辺の核施設の)無能力化の開始や完了と関連づけて行いたい」とし、年内開始にあらためて期待を示した。
13日からの訪日を前に、ワシントンでの一部日本記者団との会見で語った。
ヒル次官補は6カ国外相会合の開催は、日程を勘案すると、8月上旬の東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)前後には「困難だと思う。ずれ込むかもしれない」と述べ、9月上旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに行いたいとの意向を示した。
また来週にも見込まれる6カ国協議の首席代表会合の開催日については「18日を想定している」と述べた。
東京新聞:年内に朝鮮半島和平協議も 外相会合、9月までに期待:国際(TOKYO Web)
IAEA監視要員14日に平壌入り 北朝鮮が受け入れ
【ウィーン11日共同】国際原子力機関(IAEA)筋は10日、IAEAが北朝鮮から、寧辺の核施設の稼働停止、封印の監視、検証活動を行うためのIAEA監視要員を受け入れるとの書簡を同日受け取ったことを明らかにした。IAEA広報担当者もこれを確認した。
IAEAのエルバラダイ事務局長は11日、韓国の仁川国際空港で記者団に対し、IAEAの要員が14日に平壌に到着すると述べた。
韓国からの重油5万トンの海上輸送が12日から始まり、第1陣が北朝鮮に到着する14日以降に北朝鮮が核施設の停止、封印に着手する見通し。監視要員の受け入れ表明はこれに合わせた動き。2月の6カ国合意に基づく北朝鮮の核放棄に向けたプロセスがようやく本格始動する。
6カ国協議議長国の中国は、首席代表会合を18日から開催することで最終調整を進めており、同会合では核施設停止などを確認するとともに、核施設の「無能力化」や完全な計画申告など次の段階の措置について集中的に議論する見通しだ。
東京新聞:IAEA監視要 員14日に平壌入り 北朝鮮が受け入れ:国際(TOKYO Web)