From:ななころ
プライベートオフィスより
◆TATERUは1週間の業務停止処分
新聞各紙の報道の通り、TATERU社に対して業務停止処分が下されました。
期間はたったの1週間。
小学生がインフルエンザでお休みするぐらいの期間の短さに、驚いた方も多かったのではないでしょうか。
・業務停止期間:2019 年7月 12 日から 2019 年7月 18 日までの7日間
~ 記事一部抜粋 ~
TATERUに業務停止命令 融資資料改ざん
アパートの施工、管理を手掛ける東証1部上場のTATERUが建設資金の借入希望者の預金データを改ざんしていた問題で、国土交通省は28日、宅地建物取引業法に基づく業務停止命令を出した。期間は7月12~18日の1週間で、同法に関わる業務ができなくなる。組織ぐるみの改ざんや不正が全国に広がっていたことを悪質と判断した。
国交省は2015~18年、同社が10都府県の不動産取引336件について、銀行に提出した資料で借入希望者の預金残高を水増しするなどの不正をしていたと認定した。
(2019/6/28 日経新聞記事より)
~ ここまで ~
◆停止1週間は処分が軽すぎる!?
今回のTATERU社の業務停止1週間というのは、処分として妥当なのでしょうか?
TATERU社は、処分決定前の聴聞の場において、被害者は存在しないため業務停止処分は重すぎると訴えていました。
~ 記事一部抜粋 ~
アパート融資不正のTATERU代理人「被害者は存在しない。業務停止命令は裁量逸脱」
TATERUの代理人弁護士は「700人に及ぶ投資家に損害を与え、自殺者も出たこの事案と比較して重大さは低く、業務停止命令を下すことは監督官庁としての裁量を逸脱している」と主張。「TATERUが管理するアパートは現在の入居率が98.8%と高く、オーナーから要望があれば不動産の買い取りなどの対応もしている。破産に至ったりローン返済に窮したりしているケースはなく、関係者に損害が発生していないから被害者は存在しない」と述べた。
さらに「業務停止命令となれば経営が悪化して企業存続が困難になり、オーナーにも損害を与える可能性が高い」と指摘。「業務が全部停止されると募集業務ができなくなり、空室が増えてオーナーのローン返済が困難になるかもしれない。業務停止の場合でも、停止を売買業務のみに限定してほしい」と訴えた。
(2019.6.21 楽待新聞記事より)
~ ここまで ~
しかし、今回のTATERU社の処分は、過去の事例と比べてどうなのでしょうか?
果たして1週間の業務停止処分は重すぎるのでしょうか?
過去どういった業者が処分されているのかを調べてみると、2018年は東京都だけで30件以上の業者が処分(免許取り消し、停止、指示)を受けていることが分かります。
また、「業務停止7日」に絞って、東京都の事例を探してみると、下記のような内容です。
【例・業務停止7日(東京都)】
・2016年2月2日 処分2社
「区分所有建物1室の定期建物賃貸借契約の媒介業務において、専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがある物件にもかかわらず、法第35条に定める書面(重要事項説明書)に管理規約の内容を記載して説明しなかった。」
・2017年3月23日 処分2社
「自ら売主として、販売代理業者により締結した宅地・建物の売買契約において、物件に中古住宅瑕疵保険等の「建物保証」が付されていないにもかかわらず、「安心の建物保証付き」「住宅情報センター 受付 0120-××-×××× 担当○○」と記載されたもの、「建物保証付」「住宅情報センター 受付 0120-××-×××× 担当△△」と記載されたもの等、従業者名と不実の記載がなされた広告を、販売代理業者を介して、売買の相手方に交付した。これらの広告につき、不実の記載の削除等の措置を講じないまま、販売代理業者により交付したことは、「著しく不当な行為」に該当する。」
・2019年1月10日 処分1社
「自ら売主として締結した宅地の売買契約について、以下の法違反があった。重要事項説明書の 1 都市計画法・建築基準法等の法令に基づく制限の概要及び 2 飲用水・ガス・電気の供給施設及び排水施設の整備状況について、「不明」とのみ記載した。 3 契約の解除に関する事項、 4 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項、 5 支払金又は預り金の保全措置を講ずるか否か及び 6 宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任に関する保証保険契約等の措置を講ずるか否かについて、記載しなかった。」
◆業務停止の影響は?
それでは、業務停止処分の影響が気になるところですよね。
今後TATERU社にどういった影響があるのでしょうか?
冒頭でも触れた通り、停止1週間というのは、ほとんど影響が無いと言ってもいいかもしれません。
すでに主力事業であるアパート販売はストップしているような状況ですので、直近の業績になにか影響するといったことはほとんど無いでしょう。
しかし、たとえ1週間であっても、停止処分が下されたという事実が今後のTATERU社に重くのしかかるのではないかと私は考えています。
取引してくれる業者も限られてくるでしょう。
そもそも融資してくれる銀行がもう見つからないのではないでしょうか・・・。
内容も融資資料の改ざんですからね。
一度失った信頼を短期間で取り戻すのは容易ではありません。
TATERU社が融資に頼った事業を手放なし、まったく新しい事業を見つけない限り、遅かれ早かれ立ち行かなくなることでしょう。
◆不動産の買い取りも対応している?
また、停止処分に関する聴聞の際、TATERU社の弁護士に気になる発言がありました。
「TATERUが管理するアパートは現在の入居率が98.8%と高く、オーナーから要望があれば不動産の買い取りなどの対応もしている。」
えっ?
オーナーから要望があれば不動産の買い取りなどの対応もしている?
ということで、さっそくオーナーからTATERU社に問い合わせしてみました。
すると、なんともまぁ酷い回答が返ってきました。
TATERU担当者の回答「決済前のものについては前例がある」
「決済前のものについては?」
「決済前のもの?」
「決済前?」
もう言葉を失いますよね。。。
全国で2000人以上のTATERUオーナーがいるとのことですが、「預かり賃料の持ち逃げ倒産」だけは避けるように気をつけて欲しいなと願っている次第です。
◆編集後記
「サンクコスト効果」という言葉を聞いたことありますでしょうか?
人は苦労すればするほど、その事柄が貴重で価値があることだと思いこむ性質があります。
例えば、仕事では給料が低く重労働であるほど自分の働きに誇りを持っていて、やりがいを感じる傾向があるといいます。
これは恋愛でも同じで、普通の人よりもダメ男の方が付き合い始めると、手放したくなくなる心理が作用するそうです。
自分が投じた労力や投資分を取り返したいという気持ちです。
時間やお金、特に男女間では体の関係があったりすると、それらのコストの元を取らなければ、自分の行動が無駄になり否定されてしまう。。。
過去の自分を正当化するために交際相手がイケメンだと思い込もうとする。
それを、「サンクコスト効果(埋没効果)」と呼ぶそうです。
私たちもこの「サンクコスト効果」に陥っていないか、常に見直すことが必要なようです。