◆前回までのあらすじ
前回の記事では、
・預金流出によって自己資本比率が急激に低下
・貸出残高も減っている
・貸出残高の減少以上に、預金が流出していっているため、
預貸率は跳ね上がっている
ということをお伝えしていきました。
預貸率と聞いても、
金融関係に勤めた経験の私達にとって、
馴染みのない言葉ですよね。
ピンと来ません。
しかし、この預貸率と、
引当金の中身をみていくと、
スルガ銀行の危うさが分かってきたのです。
◆預貸率とは?
そもそも「預貸率(よたいりつ)」とはなんでしょうか?
預貸率とは、
「銀行が集めた預金を、どれだけ貸し出し(融資)に回しているか」
という指標なわけですが、
たとえば、100の預金を集め、
70の貸し出しをしているのであれば、
預貸率は70%になります。
預貸率が100%を超えると、
預金以上に貸出を行っていることになります。
逆に、預貸率が10%になりますと、
預金に対してほとんど貸出を行っていない、
ということなります。
そのため、預貸率が高ければ、
預金以上の貸出を行っており危険度が高く、
預貸率が低ければ、
預金の範囲内で貸出を行っているため、
危険性は低くなってきます。
(預貸率が低ければ良いという話しでもありませんが)
都銀、地銀、第2地銀の預貸率の推移を見ると、
以下の通りです。
・第2地銀:76.23%
・地銀:73.33%
・都銀:59.07%
◆スルガ銀行の預貸率は?
それではスルガ銀行の預貸率はどうかというと、
預貸率は「80%」から「90%」へと、
10ポイントも急上昇しているのです。
しかも地銀平均の73.33%と比べても高めです。
(2018年3月期第2四半期決算説明資料より)
↓
(2019年3月期第2四半期決算説明資料より)
前述の通り、預貸率が低ければいいというわけでも、
「預貸率が高いから危険」というわけでもないのですが、
スルガ銀行の貸出の中身を考えると、
かなり心配になってきます。
◆信用創造というマジック
というのも、銀行は「信用創造」という考えの元、
預金を元手に貸出を行ってきます。
その「信用創造」の仕組みを知ると、
スルガ銀行の危うさが分かってきます。
まず信用創造の仕組みですが、
簡単な図に示すと以下の通りとなります。
(この辺は僕より詳しい方も多いと思いますが)
- Aさんが銀行に、\100の預金をする
- 銀行は手元に \20を残して、Bさんに \80を貸し出す
- Bさんは銀行から借りた \80をCさんに払う(商品仕入や設備投資などの支払)
- CさんはBさんから受け取った \80を、銀行に預金をする
- 銀行は手元に \16を残して、Dさんに \64を貸し出す
- Dさんは銀行から借りた \64をEさんに払う(商品仕入や設備投資などの支払)
- EさんはDさんから受け取った \64を、銀行に預金をする
- 銀行は手元に \13を残して、\51を貸し出す
以下、同様に続きます。
そもそものAさんからの預金 \100を元手にして、
銀行はどんどん貸し出しを増やしていくことができました。
これが大まかな信用創造の仕組みの図解です。
信用創造は、銀行に与えられた重要な役割です。
信用によってどんどんお金を生み出せるのですから。
銀行すごいですね。。。
便宜的に手元に残す割合を「20%」としましたが、
これは預金の引き出しに備えているお金です。
銀行に対する信用が低下すると、
「引き出し騒動(取り付け騒ぎ)」が起きます。
そうなれば、手元に20%ではまったく足りません。
(ペイオフ制度のより、1人につき元本1000万円とその利息までは保証される)
手元に残すおカネを抑えて貸し出しができるのは、
銀行に信用があるからこそなんですね。
◆本当に貸出の中身は大丈夫なのか?
信用創造の考えのもと、預金を元手にして、
銀行はどんどん貸し出しを、
増やしていけることが分かりました。
でもちょっと待ってください!
1つ重要なことに気が付きますよね!?
もともと預金者の預金を元手に、
どんどん銀行は貸出を増やしているワケですが、
スルガ銀行から融資を受けて物件を購入したBさんは、
不動産投資で儲かっているのでしょうか・・・。
果たして収支は回っているでしょうか・・・。
つまり、預金を元手にどんどん貸出できる仕組みは、
逆に、その貸出の中身が危うければ、
銀行に大打撃を与えかねないということになってきます。
スルガ銀行の貸出の中身は大丈夫なのでしょうか?
◆延滞率が低いから大丈夫?
スルガ銀行の決算発表によると、
「大丈夫」という会見でした。
シェアハウス投資については、
返済が滞った時に備えて引当金は十分に積んでおり、
実際に返済が滞っても大丈夫だという発表でした。
また、シェアハウス投資オーナーの延滞率は「30%」に対し、
シェアハウス投資以外の投資では、
延滞率はわずか「0.5%」と低いから大丈夫としています。
~ 記事一部抜粋 ~
赤字転落のスルガ銀、新規貸し出し難しく 厳しい先行き
有国三知男社長は会見で「かなり保守的に見積もった。(シェアハウス関連は)ほぼフル保全だ」と語った。だがシェアハウス以外の中古1棟マンション向け融資などでも不正が指摘されている。延滞率が低いことなどから「影響はかなり限定的ではないか」
(2018年11月15日朝日新聞記事より)
~ ここまで ~
果たして本当に大丈夫なのでしょうか・・・。
次回は、スルガ銀行の決算より、
「貸倒引当金」の中身を見ていきます。
(つづく)
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