◆いつ間にか暗い森に迷い込む・・・
両親に連れられて兄妹は森に入った。
ヘンゼルは小石の代わりに弁当として与えられたパンをポケットの中で粉々に砕き、道しるべとして道々落としていった。ふたりは生まれてから来たことも無いほど森の奥に連れて行かれた。お母さんたちは夜になったら迎えに来ると言い残して去って行ったが、昼が過ぎ、夜になっても誰も現れなかった。
月が昇り、ヘンゼルは目印となるはずのパンのかけらを探したが、パンのかけらは森の何千もの鳥がついばんでしまったため、見つけることができなかった。ヘンゼルとグレーテルは野いちごで飢えをしのぎながら3日間森の中をさまよった。
3日目の昼頃、森の中で屋根がケーキ、壁がパン、窓が砂糖で作られた小さな家を見つけた。ふたりが夢中でその家を食べていると・・・
(グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」より)
この話しをご存知の方は多いかと思いますが、
有名なグリム童話「ヘンゼルとグレーテル」のお話しです。
不動産投資は、この話しに似ているところがあります。
最初は怪しいと思いつつも、
業者やコンサルタントに連れられて、
森の中を進んでいきます。
「怪しいところがあったら引き返そう。」
いつでも引き返せるように心構えをして、
進んでいきます。
しかし、いつの間にか、
業者やコンサルタントの言うがままに。
「戻りたくてももう戻れない。。。(不安)」
いつの間にか迷子になり、不安だけが募り、
後戻りできない状態になっている。
それでも、不安を抱えながら、
勇気を奮い立たせて進んでいくと、
「消費税還付」
「オーバーローン」
購入したらすぐに大金が入ってくる、
甘~いお菓子も用意されている。
「不安だったけれど、あぁ~、やっぱりこれで良かったんだ!」
最初にたくさんのご褒美が与えられます。
しかし、しばらくして目覚めると、
「あれ?思ったほど儲かっていないのでは・・・!?」
「あれ?もしかして失敗してるのでは・・・???」
いつの間にか、まるまる太らせて食べようとする
魔女に捕らえられてしまっているのです。。。
◆前回記事のあらすじ
さて、前回の記事では、
NHK番組「クローズアップ現代」に登場した、
女性不動産投資家の収支についてお話ししました。
この女性投資家が購入した物件の収支は、
利回り約7%。
2億3500万円のフルローンで、
3棟のマンションを購入し、
手元には毎月57万円余り残る計算。
しかし、収支の中には、
いろいろな経費が抜けている可能性が。。。(汗)
2億円超の借金をして、
毎月30万円の手残りが良いところ。
(そもそも2億円超の借金で、
月57万円の手残りでも少な過ぎるのですが・・・)
さらには、
「“満室”にこだわらないと、賃貸事業として成り立たない。」
「しっかり満室にしていけば(運用)できるんだなと思った。」
という発言を聞いて、危ういと感じたのです。
もちろん大家として満室維持は目指しますし、
満室に向けて最大限の努力をします。
しかし、これからの人口減少の日本あって、
「今後30年以上ずっと満室でいる」
のはどうしても難しい局面もあるでしょう。
ですから、空室は予め想定しておき、
「“満室”でなくても、賃貸事業として成り立つ。」
「”満室”にできなくても、運用できる。」
といった考え方が必要なのだと、
僕は考えている次第です。
(前回の記事)
◆空室リスクに備えるために部屋数を増やす?
そしてこの後、女性不動産投資家は、
さらに危うい発言をされます。
~ 番組より一部抜粋 ~
◯◯さんの最終的な目標は、マンションを6棟に増やすこと。部屋が埋まらないリスクに備えるためには、部屋数を増やすことが必要だと考えているからです。
「走り出したら不動産業は、どこかで立ち止まるより、ずっと(不動産を)持っている限り続いていく仕事だと思う。」
~ ここまで ~
さらに3棟、同じような収支の物件を購入してしまったら、
空室リスクを減らすどころか、
より大きなリスクを抱えることになってしまと考えるのは、
僕だけなのでしょうか・・・(汗)
たとえ空室がなく、
30年間満室を維持できたとしても、
金利が1%でも上がったら、立ち行かなくなります。
家賃が10%でも下落したら、立ち行かなくなります。
※この女性の名誉のためにお伝えしておきますと、
あくまでもこの番組の放送からの収支計算であり、
実際とは異なる可能性もあります。
◆物件数が増えれば問題発生率は上がる
さらに、マンションですから、
建物や設備に問題があると、
あっという間に大金が吹っ飛びます。
物件所有数が増えれば増えるほど、
設備の問題発生率は高くなります。
よくある機械やシステムが、
どのくらい問題なく稼働するかを、
「信頼度」で表したりしますが、
たとえば、
信頼度0.9の設備のマンションが3棟の場合は、
(まったく故障しない場合を「1」)
0.9 × 0.9 × 0.9 = 0.729
です。
これが、6棟に増えると、
0.9 × 0.9 × 0.9 × 0.9 × 0.9 × 0.9 = 0.531
にまで信頼度は低下していしまいます。
※実際は個々のマンションの設備は連動していませんが、
大家業のシステム全体は連動としていると考えて、
乗算しています。
◆5億7千万円の借金をして得られるお金は?
それだけのリスクが増えて、
単純にすべての数字を倍にして考えると、
5億7000万円の借金をして、
ようやく手元に残るお金が、
よくて「月70万円」程度です。
ですから、
「ずっと満室経営を続けていかなければならない」
という主旨で発言をされたんだと思いますが、
「走り出したら止まれない」
「物件を増やしていかないといけない」
このような収支の物件を増やしても、
リスクを増やすだけになってしまいます。
NHK番組で不動産投資の成功モデルのように、
取り上げられた事例。
もしその番組の内容を、
鵜呑みにしてしまうような人が出てしまったら、
かなり危険だなと感じた次第です。
◆あとがき
ヘンゼルとグレーテルのお話しは、
機転をきかせて魔女の手から逃れ、
無事お父さんの元に帰ってきました。
不動産投資の世界にも、
親切なふりをして森へ連れていく近しい人。
騙そうとする人で溢れています。
不動産投資で勝ち残っていくために、
・知識と機転
・ぶれない軸
を大切にしていきたいですね。
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