演奏のための参考CDについて・若しくは自分の演奏を作り上げるということについて
演奏のための参考CDを教えてください
という質問を頂きました。
お子さんのピアノコンクールのためのようです。
先にお断りしておきますが、私はピアノコンクール、特に
お子さんの部門については現在生徒さんを直に指導してません。
そのことをご了承の上、お読み下さい。
「表現を付けるために、参考音源を探している」とのことですが
私のピアノの先生方から頂いたアドヴァイスを元に
話を進めさせていただきます。
今まで一定の長さ以上、きちんとピアノを指導していただいた
先生は全部で6名いらっしゃいます。
ジュニア科のころグループレッスンで、曲によってはピアノでも
弾いたことを除くと、私がちゃんと「ピアノの先生」に就いて
レッスンを受けたのは高校1年からです。
ですのでそのアドヴァイスも「大人」に対するものだという
認識を持っていただけたらと思います。
乱暴に言えば、まずほとんどの先生が「CDを聴いてはいけない」
というスタンスでした。
特に、今習っている師匠は大学の演奏学科の教授を
されているのですが、「今の学生はすぐCDを頼りにして自分で
考えようとしない」と嘆かれています。
私が受けてきたレッスンは
・その曲が書かれた時代(世界史を含む)
・音楽様式
・当時の楽器の特徴(楽器は常に進歩しているので)
・作曲者の作曲時の年齢と置かれていた立場
・その曲が書かれた意義や経緯
こんな事をしっかり調べ、理解した上で楽譜から全てを
読みとりなさい、ということでした。
バッハのインヴェンションとのことですが、上のことに
照らし合わせると
・バロック
・対位法(カノン)
・音楽を職業とした一族に生まれ
宮廷楽団に就職 教会・宮廷オルガニスト 宮廷作曲家
を歴任
・既に結婚し子供が居て音楽家としても認められていた
・器楽曲の1ジャンルで2声体の鍵盤楽曲
・自分の子供のために対位法を最も解りやすく
身につけられるよう、簡潔に、そして全ての調を網羅して
書かれた練習曲
ということになります。
お子さんに調べなさいというのは無理な話でしょうが
チェンバロやクラヴィコードは現在のピアノとは全く
違います。
ここでその違いを書き始めるとキリがありませんが
・音の持続性が現在のピアノより短い
・ダンパーペダルがない
・音量も小さく強弱はつきにくい
解りやすい範囲ではこういったところでしょうか?
実際にチェンバロなどを聴く機会が有れば良いのですが
なかなかそうもいかないことが多いので
私は良く、グレードを受ける大人の生徒さんに
エレクトーンのチェンバロの音でバッハを弾いて貰い
その出音の感触を掴んで貰ったりしています。
私も好きな演奏家は居ますのでCDはそれこそ
数え切れないほど持っていますが、自分が演奏するときに
そのどれか、または数枚を組み合わせて表現の
参考にすることはありません。
例えば私は川畠成道さんのヴァイオリンが大好きですが
先日コンサートで「チゴイネルワイゼン」弾いたとき
私の頭の中には彼の演奏表現は全く在りませんでした。
あるのはその曲を分析した知識とその時、その曲を
通して伝えたかった「私の感情」だけでした。
そうでないと「演奏家はたった一人居ればいいことに
なってしまうだろう?」とよく大学の恩師に言われたからです。
現在指導している小中学生のJEFに出る子達にも
音色を作るため「CDを良く聴いて」とは言いますが
必ず複数買うことをお願いしています。
一枚のCDで音作りをすると、演奏までそれに支配
されかねないからです。
そして本番前、音色ができあがった頃には
CDを聴くのを止めて貰います。
影響が抜けなくなるからです。
本来演奏とは自分で構築するものですから。
現在のピアノの師匠の公開レッスンを見たことがあります。
対象は小・中学生。
バッハの指導もありましたか、子供にでも対位法の意味を
解りやすく説明し、導いていらっしゃいました。
表現方法は先生と相談されるのが一番良いのでは
ないかと思います。
全く答えにならず申し訳有りません。
しかし、コンクールやフェスティバルを前に「演奏とは?」
ということを読んでくださる皆さんにもう一度考えて頂きたく
敢えてこういう返答を選ばせていただきました。
どうしてもCDをと言われる場合は、自分の好きな
演奏家の物を買われると良いのではないでしょうか。
若しくは「ショパン弾きのだれそれ」とか良くそのジャンルが
得意と世間で評されている方がいらっしゃいますから
売り場でお尋ねになられるといいと思います。
心証を悪くされたなら申し訳有りません。
でも私は自分の師匠方が言われたことを正しいと思って
いますし、自分も今、演奏に向かうときはこのスタンスを
崩すことはありませんので、これをもってお答えとさせていただきます。
