「のらくろ」って知ってますか? | トリュフ・ラボ-アクマで4コマ-

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 こんばんは。

 今回の記事は雑談をお送りします。

 いきなり漫画のブログ記事が中断されましたけど、この後、テンポよく公開していく作戦です。

 雑談と言っても、今描いている漫画とは結構関連が深いと思います。

 

 

 今は亡き爺ちゃんの家で発見した、この漫画。


「のらくろ」という漫画です。

 作者は田河水泡さん(明治32年~平成元年) 

 

 初版は昭和6年から16年に雑誌「少年倶楽部」で連載。

 太平洋戦争開戦の直前に打ち切りとなり、戦後になってから昭和36年から56年まで「丸」という雑誌で連載されました。

 

 主人公は黒い犬の「のらくろ」

 「猛犬連隊」という軍隊に二等卒として入隊し、活躍を重ね、すごい勢いで昇進していくサクセスストーリー。

 ただし、描写は基本的にコミカル。

 戦争のシーンはありますが、残酷な描写はほとんどありません。

 

 

 爺ちゃんの家で発見した本は、昭和6年から16年にかけて連載された分(便宜上「第一期」と呼びます)を収録したものですが、もちろん当時の本ではなくて、昭和63年(1988年)に講談社から出版された「のらくろ漫画大全」といういわゆる復刻本です。

 

 この「のらくろ漫画大全」は爺ちゃんが買ったという保証はないのですけど、そうだったら興味深いなあとは思ってます。

 

 爺ちゃんは太平洋戦争当時に満州に軍人として派遣されています。

 ただし戦闘の経験はありません。

 昭和20年には東京にいて主計科に務めていたとのこと、最終階級は軍曹と聞いています(そんなに偉くないです)。 

 爺ちゃんからは、戦争の話はちょっとしか聞いたことはないのですが、そのうちブログでも話題にすると思います。

 

 今回はあくまで「のらくろ」がメインの記事です。

 

 今、ブログで描いている「ヨシノとミコト編」は昭和20年が舞台ですので「のらくろ」は第一期が打ち切られてしばらく経ってますが、ヨシノが読んだかもしれない漫画と(ほぼ)同じものを自分が読んでいる・・・と考えると感慨もあります。

 

 ※ただし、昭和63年に出版されている本は完全に原作と同じではないと思います。

 

 まずはメインタイトルと活字(写植)については「横書きの日本語」は左から右に読む現在の様式になっていますし、漢字も新書体になっていてルビが入っています。

 セリフまわしも改められているところがあるかもしれません。

 例えば戦前、戦中は「さようなら」を「さやうなら」と言う感じで古文のように筆記してましたが、本書は完全に今の仮名遣いにて書かれています。

 

 

 その一方で、背景の文字には「旧書体」や「右から左によむ横書き」が多く、初版発行当時の仮名遣いは、これがスタンダードだったのだろうと思います。

 

 

 さて、「のらくろ」第一期の初版の発行時期と当時の歴史的な出来事を並べてみると、興味深かったです。

 そして、作者の田河水泡さんの気持ちに思いを馳せてみたりしました。

 

 歴史的出来事と「のらくろ」第一期を併せて記すと以下のようになります。

 ※Wikipediaで「のらくろ」について断片的な情報があり、それを本書と照らし合わせて書き起こしました。

 ※赤文字は国内の政治経済の出来事

 ※青文字は国際的なニュース

 ※紫文字は戦争や紛争

 ※緑文字は国民生活に関わりの深い出来事

 

 (昭和2 昭和金融恐慌)
 (昭和3 特別高等警察の設置)
 (昭和3 張作霖爆殺事件)
 (昭和4 米ウォール街株大暴落(世界恐慌))
 (昭和5 昭和恐慌)

雑誌「少年倶楽部」昭和6年1月号にて「のらくろ」連載開始

昭和6 のらくろ二等卒
 (満州事変)
 (柳条湖事件)

昭和7 のらくろ一等兵
 (満州国建国)
 (五・一五事件)

昭和8 のらくろ伍長
 (国際連盟脱退)

昭和9? のらくろ軍曹

昭和10 のらくろ曹長

昭和11 のらくろ少尉(小隊長)
 (ニ・ニ六事件)

昭和12? のらくろ中尉~大尉
 (盧溝橋事件、日中戦争勃発)
 (日独伊防共協定)

~昭和16 のらくろ、退役して資源探索のため大陸を探検
 (昭和13 国家総動員法)
 (昭和14 ノモンハン事件)
 (昭和14 第二次世界大戦勃発)
 (昭和15 食料品、生活用品等の配給制)
 (昭和15 日独伊三国同盟)
 (昭和15 大政翼賛会結成)
 (昭和16 ABCD包囲網)
 (昭和16 日本軍、フランス領インドシナに侵攻)
 (昭和16 金属類回収令)

昭和16年10月号で「のらくろ」の連載中止

 (昭和16 東條英機、首相に)
 (昭和16 真珠湾攻撃、太平洋戦争勃発)

 

 

 「のらくろ」の連載が始まった昭和6年は満州事変が起こりました。

 その後、数年のうちに日中間の緊張が高まり、国内では軍の発言力が増大し、昭和12年には日中戦争が勃発します。

 この間、「のらくろ」は愉快な軍隊生活を送りながら、山猿、チンパンジー、カッパ、蛙、熊といった「敵」の軍隊と戦争をし、毎年のように昇進していきます。

 

 興味深いのは昭和12年か13年か(特定できませんでした)・・・その辺りで、のらくろは軍隊を退役して「大陸」へ資源を探索に探検に行くお話になります。

 それまでは軍隊生活と戦争の描写がほとんどだったのが、がらっと変わります。

 

 現実の出来事の方も、国家総動員法、配給切符制度、金属回収など、日本の国力の低さを補うための政策が実施され国民生活にも影響が現れるようになってきます。

 田河水泡さんの気持ちは想像することしかできませんが、このような国の現実に対して何か思うところがあって、のらくろを退役させて資源探索の冒険に出させたのかな?と思いを馳せます。

 

 その「のらくろ」第一期も昭和16年10月号をもって連載中止。

 田河水泡さん自身の解説によれば「印刷用紙統制令」に基づいて執筆が禁止されてしまったということです。

 

<引用元>

 本記事の図は次の書籍から引用しました。

 田河水泡 著 「のらくろ漫画大全」

 1988年 講談社Super文庫

 

 

 
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