もちろん反省すべき点はあるけれども”楽しい試合だった”というのが率直な感想である。
天候にも恵まれ、素晴らしいスタジアムで、ゴール裏エリアでの声出し応援も解禁され、そしてその中での素晴らしい3ゴールと勝利、さらに栗島の長期離脱からの復帰まで加わり本当にお腹いっぱいの一日だった。
振り返ればレッズレディースは興行的にここぞという試合で勝負弱い印象もあったのだが、ここ最近はそれも払しょくされ、この試合も5000人近い観客の前でしっかりと勝利を飾ることが出来た。
少しは大人のチームになってきたのかもしれない。
さて、試合をなぞると、まずシステムは4-2-3-1。
塩越をダブルボランチの一角に据えるなど優勝したリーグカップ決勝を継続。連続出場を続けていた左SB佐々木の欠場は心配だが、リーグカップでの同カードでらしさを見せた上野にも期待。
試合開始直後から目についたのは攻撃の積極性。
これまでも積極的に仕掛けのスイッチを入れようとする試合はあったが、この試合はさらに一歩踏み込んでスイッチのパスが入ったらそのまま崩し切ろう、ゴールへ向かおうという意思が感じられ、先制点も少し強引ではあったがワンタッチのアクロバティックなパスで長野の中盤を突破しそのままゴールへと向かう素晴らしい得点だった。
さらに畳みかける様に清家の技ありのシュートで追加点を挙げ、早い段階で2点をリードする上々の滑り出し。
レッズレディースは守備面でも積極的で球際も厳しく、2得点とも相手陣内で奪ってそのまま攻め切る形だったことも評価したい。
2点目を奪った直後、おそらく猶本だったと思うが「もう一点取りに行こう」という声が聞こえたのもポジティブに感じたのだが、その直後に失点してしまったところが一つのターニングポイントだった。
相手ゴールキックから裏へ走られ、石川と福田の対応が中途半端になったところを突かれて一点を返される。
この失点によりレッズレディースがどうこう以上に長野側に落ち着きと勇気を与えてしまった。
長野はリーグカップの直接対決と同じくコンパクトな陣形から奪って瞬発力のあるツートップを裏で勝負させるという戦術が浸透しており、さらにこの試合では前回の対戦よりさらにフォアチェックが増しているように感じた。
埼玉スタジアムの観やすいスタンドからはボールの出しどころの少なさが尚更分かりやすかった。
一方でレッズレディースからも昨シーズンとの違いが感じられた。
森体制では相手がコンパクトにスペースを消してきても狭い同サイドをショートパスで執拗に突く攻め方が主体で、楠瀬監督の言葉を借りるとノッキング、いわゆる詰まってしまう状態があった。
しかし今シーズンは狭くなったら無理せず最終ライン経由で逆サイドへ展開し、さらには相手陣内でも横パスで相手を揺さぶるシーンが多くなり、オーソドックスではあるが私はこれが楠瀬監督の一つのスタイルだと認識しており、それゆえシュート数が少なくともノッキングといった印象は感じない。
失点後にシュートシーンが作れなくなったのはどちらかと言えばパスのクオリティの問題で、狙いは伝わるがパスの精度や受け手とのタイミングがずれてしまうシーンが散見された。
これについてはもちろんトレーニングで向上させなければならないが、私は実戦でチャレンジを続けることでフィットしていくという側面も大いにあると考えており、これまでボールを大事にし過ぎる傾向のあったチームが、多少強引にでも崩しのチャレンジをする姿勢を歓迎し、継続してくれることを期待する。
後半頭から上野に代えて水谷を投入。
上野は前半から何度かポジショニングの注意を受けていたのでその修正だと考えるが、水谷を左SBで起用するとは驚きだ。
水谷は開いてボールを受けタメを作って起点になろうとするが、慣れない左SBで右利きでもあるため、視野が限定されなかなか効果的に攻撃に絡めない。
そして仕掛けのチャレンジがあった前半とは異なり、外回りでボールを動かすだけで中央へのパスはほとんどなく、清家と猶本のポジションが頻繁に入れ替わりツートップ気味になる場面もあったが、シュートもセットプレー絡みだけで流れの中からは公式データを見返しても思い出せないくらいだ。
逆に外回りのパス回しだったからこそ前回の直接対決の様な長野の守備に引っ掛かりショートカウンターを受けるシーンがなかったとも言え、物足りなさはあるものの結果論で言えばミスがらみの失点シーンを除くと被シュート数は完ぺきに近い出来である。
さらに栗島の復帰と島田の豪快なシュートで終盤の見せ場もしっかりと作れたことで失速感も少なく試合を終えることができた。
まずは開幕戦勝利という結果を喜びたいし、ホッとした思いもある。
大いに反省すべきミスもあったが、ポジティブな部分に光を当てたい。
ここからどこまで強くなれるか楽しみにしている。
以上。