JAXAが5月21日に打ち上げた金星探査機に、T-Kernel ベースの

ソフトウェアプラットフォーム 「eCROS」 が採用されました。


先日の「はやぶさ」で実証された偉業に次ぐ成果が期待されます。

さすがTRON、やはり世界最強のOS・プラットフォームですな。


金星探査機「あかつき」に T-Kernelベースソフトウェアプラットフォーム「eCROS」が採用

http://www.esol.co.jp/company/press/emb_press100601.html

藤井講師研究室

http://www.ilovepc.jp

ちょっと考えてみましょう。

極めて過酷な環境である宇宙空間で、実に7年以上の間、正常に稼動し続けるシステムのことを。


一方、来る日も来る日も毎日数回、再起動などしなくてはまともに動作しない危なっかしいOSのことを。

さらに数日ごとにバグフィックスを繰り返し続けなくてはならないバグだらけの不安定なOSのことを。


世界最長の宇宙航海の成功、月以外の天体からの帰還成功、

純和製OS、TRONにしか成し得なかったこの偉業、

さすがTRON、やはり世界最強ですな。



藤井講師研究室

http://www.ilovepc.jp


今日、全世界で6,000種類近くの言語があるといわれています。
しかし、「グローバル化」という名の下に、その内2,500種類ほどの言語が絶滅の危機に瀕しているともされます。
つまり、その言語を使用する者が少なくなってきたということなのですが、言葉というものは文化です。人間は単なる通信手段として言葉を使っているのではありません。


2,500種類もの言語の喪失ということは、それだけの数の文化の消失とほとんど同じくらいのボリュームがある事態だと考えてよいでしょう。ある意味では状況次第ではそれは民族的危機と捉えてよいかもしれません。
文化の消失という意味ですぐに頭に思い浮かぶのは、なぜアフリカ諸国でスペイン語を話す国家があんなにたくさんあるのだろうということです。


かつてスペインに滅ぼされたインカ文明やアステカ文明の例を引き合いに出すまでもなく、ポルトガルによるブラジル侵略も世界史上の悲劇のひとつであり、現代の中南米でもアルゼンチン、メキシコ、エクアドル、ペルー、チリなどは、全部カトリック教国であり、ブラジルも含めてスペイン語が話されています。

一体、彼らの固有の宗教、文化、言語はどうなってしまったのか?


言うまでもないことですが、欧米列強による植民地支配はつい先ごろまで続いていた人類史に残る悪夢です。またこれは欧米的視点からは絶対に公平に見ることは出来ない問題でもあります。
日本は時代の趨勢を鋭く捉えた徳川幕府による「鎖国政策」という優れた「防衛手段」によって、こういった当時アジアにまで侵略の魔の手を伸ばしていたスペインやポルトガルを見事に水際で阻止し、さらにプロテスタント国家であるオランダのみと「キリスト教の布教をさせない」という前提で友好関係を構築※するというアクロバチックな外交手腕を見事に実現することによって、日本固有の文化の保護を見事に達成しました。


今日、例えば日本各地に散在している神社仏閣はもとより、日本語の存在、日本独特の風俗・習慣が残っていること、そして長い歴史を誇る日本の文化が「言葉」とともに現存し、1千数百年前に成立した多くの文書とともに今日に至るまで私たちが目にすることができ、利用し続けているという事実は、世界史的に見れば奇跡にも等しいものなのです。


※学校における歴史教育のナゾの一つに、「幕府によるキリスト教禁教」がある。
例えば幕府軍1,900名、キリシタン側27,000名という日本最大の宗教戦争「島原の乱」は、常に幕府対キリシタン的視点から解説される傾向があるが、この当時のプロテスタント国家オランダはすでに明確に幕府支援を打ち出しており、この戦いは幕府による「キリスト教弾圧」の側面を強調し過ぎ、本質的な部分でカトリック対プロテスタントの代理戦争的な性格が強かったという歴史的事実をほとんど教えていない。これも不思議である。




坂村博士がTRONプロジェクトの一環としてTRONチップの開発を始めた際、本来の技術開発以外の部分で非常に無駄な時間を浪費してしまったと慨嘆しています。それは特許の問題に関するものでした。
特許の持つ恐ろしさ、技術開発にまつわるネック、障壁というものに大変手間がかかったといいます。TRONチップはその設計に着手してから2年間、特許のチェック以外に何もすることができなかったといいます。


つまり、完全にオリジナルであるTRONプロジェクトを推進していく以上、仕様を公開するためにすでに先行して開発されているCPUのアーキテクチャを徹底調査し、特許によるライセンスの取得の有無を調べ上げることによって、他社から許諾を得る必要なく製品化を可能としていたのです。

つまりどんな特許があるのかを徹底的に調べるためにそれだけの時間を要し、予想外の時間と手間がかかってしまったとのことです。
あらゆる特許をクリアする必要があるということからそれだけの期間を要したわけですが、もちろんそこには他の開発の場面では見られない特別の原因がありました。
それは、TRONはコンピュータにまつわる既存のものを全否定するところから開始されたものであり、どこかの誰かのアイディアに便乗するだけではそこからは何ら新しいものは生まれないという考えから構築された発想だからなのです。


モノによっては非常にくだらないレベルの技術(とはとても呼べないもの)まで特許を取得し、メーカーや技術者同士がお互いに特許でがんじがらめとなっている状態を坂村博士は非常に憂いていました。
坂村博士はこのことを「電子の壁」と呼んで嘆いています。
コンピュータ技術開発の道のりには、もちろん技術開発の難しさや法律・社会がもつさまざまな障壁があるでしょうが、そこに立ちはだかる大きな壁のひとつがこの特許の壁だったのです。

そしてTRONチップそのものは決してTRON専用のCPUではなく、TRON以外の他のOSも実装できるCPUアーキテクチャとして設計されました。

もちろんその仕様は公開され、どのメーカーであっても公開された仕様に基づいてCPUを製作することが認められており、実際に三菱電機のM32、富士通のF32、日立製作所のH32などが共通のGmicroシリーズとして、さらに松下電器のMN10400、東芝のTLCS-90000/TX(TX1、TX2)、沖電気のO32などもありました。


しかし、TRONプロジェクトに対する外圧によって、各メーカーによる商品化は、結果的に製品段階において普及に至るまでに到達することはありませんでした。
TRONチップは、CISC※アーキテクチャとして設計されながらもすでに汎用命令と別に縮小命令セット(使用頻度の高い固定長の命令群)を装備していたことから、RISC※の特徴も兼ね備えていたのです。

さらにメーカーによってはパイプライン制御※によって高速化を実現したものもあり、かつGUI処理をCPU自身の処理能力に依存する仕様であることからビットマップ転送命令までを備えており、当時としては先進的かつ画期的なマイクロコンピュータであったことは間違いありません。


※CISC(Complex Instruction Set Computer・複合命令セットコンピュータ)
RISCよりも多くの種類の命令と複雑なメモリ管理機構を持ち、1つの命令で高度な処理を実行できるタイプであり、主にパソコンの分野で圧倒的に多く利用。


※パイプライン制御
複数の命令を平行して同時に処理する仕組み。


※RISC(Reduced Instruction Set Computer・縮小命令セットコンピュータ)
厳選した命令を単純化(縮小命令セット)して持ち、やSIMD(Single Instruction Multiple Data・複数のデータを同時に処理できる方式)の採用、多数のレジスタの内蔵など、処理を高速化する技術を盛り込んだタイプで、主に組み込みコンピュータの分野で広く利用。

BTRONでは何らかの操作を行うときに、まるで情報そのものを自分の手で握って動かすような直感的動作によって実行するように推奨されています。

このような操作方法を「ダイレクト・オペレーション」(直接的操作)と呼んでいます。その意味からもBTRONにおけるマウスポインタのデザインは、人間の手のひらの形になっています。

コンピュータによる作業の最も大きな利点の一つがデータの再利用であり、一度作成した文書などを他の資料を参照しながら手を加えて新しい情報を盛り込み、加工することが容易にできます。

BTRONでも他のパソコン用OSと同様に、画面上で何らかの操作を行うときは基本的にマウス(ポインティングデバイス)によって実行します。

ウィンドウのサイズ変更や範囲選択した文字列や図形なども「つかんでポン」、つまりいわゆるドラッグアンドドロップによって移動したり複写します。


そして他のパソコン用OSがOLE機能を実現するより前からBTRON仕様OSでは「つかんでポン」ができました。OLEとはアプリケーションソフトウェア間におけるデータのやり取りを実現する便利な機能ですが、ダイレクト・オペレーションを当初から重視していたBTRONでは、例えばある文書の特定の箇所を選択してマウスポインタでつかみ、移動先の別のアプリケーションソフトウェアのウィンドウ内で離せば仮身や図形、表であっても相互に「流用」することが可能だったのです。

BTRONの画面上にはアプリケーションを表すアイコンやショートカットなどは一切存在しません。

何らかの情報を処理する場合に、ユーザーによってアプリケーションを起動させるという本来の編集作業以外の手間をかけさせるという従来のOSの手順は根本的に人間の思考にとって良くないのではないかというのがBTRONの考え方なのです。
そのため、BTRONでアプリケーションソフトウェアを利用する手順は、その他のOSとは大幅に勝手が違っています。例えば私たちが何か文章を書こうと思ったときには、普通はまず原稿用紙(紙)をどこかから取り出し、そしてそこに書き込むという手順で行いますが、そこにはパソコンの世界でいう「アプリケーションソフトウェアを立ち上げ」という動作が介在していません。文章という「データ」を入れる入れ物となる紙を引っ張り出して、直接書き込んでいきます。


例えば新たに文章を書こうとする場合には「原紙集め」という仮身を開いて、その中にある「原稿用紙」という仮身を任意のウィンドウにドラッグすることによって新しい文書の仮身を作り、そこに書きこんでいくという手順で行います。これは現実世界に例えるなら、用紙の束の中から原稿用紙を1枚取り出して机の上に置く、ということとまったく同じ動作手順となります。
その意味で現実世界と仮想世界との対応関係が一致していることから直感的な操作となり、「アプリケーションソフトウェアを起動する」という作業を開始するための「環境設定」の操作が不要であることから、文章を書く主体となる人間の意識(アイディア)が途切れることなく、論理的な思考への手助けとなります。
データの作成そのものよりもその管理のための手間に大きく意識を持っていかれてしまうというシステムは、やはり人間の自然な基本動作とは相容れない「デジタル」的な手間のかかる部分を残しているといえるかもしれません。
現在ではパソコン用の他のOSでもアプリケーションソフトウェアを起動してから作業を開始するという操作を省略(ショートカット)するために、いわゆる「ショートカット・アイコン」をダブルクリックすることによって既存の文書を開くことができますが、BTRONでは実はこの方法がメインであり、原則となっているのです。



BTRONが標準的ファイルシステムとして備えている実身仮身モデルは、「パソコンに初めて触れる」というコンピュータ初学者にその操作をスムーズに習得できることを重視してデザインされている面もあります。そのために、別のOSのパワーユーザーはそのあまりの基本的設計思想の違いに面食らってしまうこともたびたびあるでしょう。


実身仮身モデルの理解には「ウィンドウ内に表示されているものはすべてそこに存在している」と考えると分かりやすいと思います。必要な情報を新聞や雑誌から切り抜いてノートに貼り付けたスクラップブックがまさにそのイメージです。

OSの内部構造やファイル管理の意識を持つ必要がない、ユーザーに優しいシステムこそBTRONが目指していたものですので、そういったことを考えてしまうとハイパーテキストが難解なものと感じることになるでしょう。


実身とは情報のことであり、例えばテキスト文書やグラフィックなどが該当します。そして実身は仮身と呼ばれるタグによって参照され、さらに実身にはこの仮身を組み込むことが可能となっています。

実身はデータの本体そのものですが、BTRONでは実身を直接操作することはできず、必ずその実身を指し示す仮身を通して操作する仕様となっており、仮身は実身への入り口の役割を果たすと同時に実身を操作するときの手がかりともなる存在として設けられています。


またOS仕様上の制限としては、いわゆるファイル(実身)を識別するIDを16ビットで管理していることから、単一のディスク上では、最大65,000個の実身しか置くことができません。

また、同じ場所に同じ名前の実身をおくことが可能です。これは実身名とOSが実身を管理するためのIDが区別されているためで、これによって仮に実身名を途中で変更したとしてもリンク切れのような問題は起こらないようになっています。

さらにTRONプロジェクトにおけるサブプロジェクトの特徴として、TRONコードを含むあらゆる文字を実身名に使用することができます。

一方仮身とは、BTRONの画面上に短冊のように表示されるもので、一つの実身を指し示しており、仮身をダブルクリックすることによって関連している実身をウィンドウに開き、編集や閲覧ができます。

一つの実身に対して複数の仮身を作ることができ、同じディスク上にある実身を指す仮身が一つでもあれば、決してその実身は削除されません。これは元のデータを保護する上で非常に重要な機能であり、ある実身の仮身がすべて削除されたときにはじめてその実身が自動的に削除されます。


つまり仮身とは書籍でいえば背表紙に当たる部分であり、自分が探している情報を閲覧するための手がかりとしてここを見ることでその中に含まれている情報の内容が分かり、実際にその仮身を開くと仮身が指し示す実身つまりデータそのものを見ることができるのです。

しかも仮身が指し示す実身は異なるデバイス(フロッピーやハードディスクなどの記憶装置)においても有効で、複数のデバイス間を横断する論理構造を持っています。

実身仮身モデルでは、一つの実身に対して複数の仮身を置くことが認められたシステムでもあります。

つまり仮身の複製(コピー)を複数作成し、ユーザーにとって必要な場所(実身を参照したい場所)のあらゆる箇所に仮身を置くことができるのです。


結果的に実身と仮身との参照関係というものは、いわゆる木構造(ツリー構造)ではなくネットワーク構造となり、しかもループ状の参照関係があっても構わないという緩やかな構造も備えています。
ツリー構造を持ったファイルシステムだと、例えばAというディレクトリからも、Bというディレクトリからも、Cというディレクトリを参照したり編集したいというきには、ツリー構造では難しいものがあります。参照元のディレクトリにそれぞれCのショートカットを作成しておかなくてはなりませんし、その後にCを移動してしまった場合には参照先が不明となってしまう危険性を内在しています。
一方、BTRONがもつファイル構造では、独自のネットワーク構造をもち、いつでもどこでも好きなディレクトリに移動することが出来るのです。


特定のアプリケーションソフトウェアや任意のデータの所在をあらわすアイコンである「ショートカット」は、いわゆる「リンク切れ」(参照先が不明となってしまうエラー)の問題があります。

しかしBTRONの実身仮身モデルでは、実身と仮身の双方をまったく任意の場所に移動したとしても常にシステムが両者の所在を把握しているため、この問題は発生しません。いわゆるフォルダの概念がなく、すべてのファイルが他のファイルへの参照を行うことが可能であるため、ファイルを格納している絶対位置が不要なのです。
ツリー構造ではその管理の構造上、どうしてもメモリの浪費を招くこととなり、しかもユーザー側に対してどこに何をいつ保存したのかという「ファイル管理の意識」が要求されます。しかし、BTRON仕様OSのファイルシステムはWindowsやUNIX、MS-DOSのようなツリー構造によるものではなく、ネットワーク構造を採用しており、それを実現しているものがBTRONの核となるこの実身仮身モデルなのです。


この実身仮身モデルはユーザーに管理の意識を強要しない直感的なファイルシステムとして、思考の構造化に非常に有益であるとして熱狂的なファンがたくさん存在しています。
このように、BTRONとは普段のパソコンのファイル操作そのものがまるでネットサーフィンをしているのと同様に常にウェブページを作成・編集していることに近い処理を行うシステムともいえます。その意味でもユーザーとって非常に自由度が高いファイルシステムとなっていることにはじめてBTRONを操作する場合、別のOSのパワーユーザーは少々戸惑ってしまうかもしれません。


1985年の坂村氏の論文「BTRONスーパー・パーソナル・コンピュータ」※において、BTRON仕様OSが持つ様々な特徴と機能、そしてBTRONを標準化していくための基本構造モデルが示されました。


そこで明らかにされている実身仮身モデルとは、「実身」(Real Object)と「仮身」(Virtual Object)というBTRONの世界におけるオリジナルな要素を用いてBTRONにおける基本的な「情報管理」を行うための操作体系と構造であり、「実身」とは情報の本体を示すものとして、また「仮身」とは実身を参照するためのタグ(名札)という役割を担うとされています。この両者はそれまでのどんなコンピュータシステムには登場していなかったオリジナルな、BTRONにおける最も重要な二つの概念です。

今では一般化したコンピュータ用語に例えると、実身がファイルに、仮身がデータを指し示すショートカットに相当するといえます。またBTRONの仮身は、ウィンドウ中に横長の短冊の形で表示されるものとなっています。


※「計算機アーキテクチャ 57-4」情報処理学会計算機アーキテクチャ研究会、1985.3


実身仮身モデルの特徴として、文章や図形を意味する実身の中に他の実身を指し示す仮身を混在させることができるという点です。
この機能を活用して文章や図形の中に仮身を入れ、ユーザーがより詳細な情報を参照したいときにはその仮身を「開く」ことによって実身を見ることができます。つまり、今では一般的に知られるようになったHTMLによるハイパーリンク構造で実現している「ハイパーテキスト」としての機能が、BTRONではOS自体が通常の操作時におけるファイル管理システムとして当たり前の機能として持っているのです。


これによって、ある書籍の各章を個別の実身として分割し、それぞれを仮身で構成しておけば、本全体の構成を俯瞰しながら参照したい章のみをじっくり閲覧することもできます。さらに文章中の特定の言葉に対してコメント(注釈)を入れたいような場合には、コメントは別の実身として作成しておき、本文そのものには実身を指し示す仮身だけを任意の場所に配置しておくことで、コメントを読みたいと思う人のみが読めるような使い方が想定されています。


実は「超漢字シリーズ」は、OSとしてのその基本仕様はすでに20年前にすでに完成の域に達しています。今回の超漢字Vを、例えばこれまでのバージョンの超漢字4、超漢字3と比べても、そのデザインや操作感、各種アプリケーションの基本的な使用方法などについても、例えばWindowsやMac-OSに何度か見られたような、前バージョンと比べて劇的に変化するようなことは過去に一度もありませんでした。


そのため超漢字のみで完結する業務に活用する場合や、旧式パソコンを有効利用したい場合などにはある程度高度なマシンスペックが要求される超漢字Vではなく、前バージョンの超漢字4を単体のOSとしてパソコンに組み込み、「BTRON仕様OS『超漢字』パソコン」として、これからもずっと活用し続けていくことも大いに考えられます。
実は筆者も執筆に専念するときなど、複雑に入り組んだ情報を整理しやすく、人間の持つ有機的な思考と一致した独特のファイル管理構造である実身仮身モデルが落ち着いた気持ちにさせてくれることもあって、自作の「超漢字専用パソコン」を活用しています。
基本的に大変軽量であり、かつ極めて高速に処理が可能なパソコン用OSという特徴から数世代前のパソコン上でも実用上問題なく動作させることができます。古いパソコンを廃棄することなく活用する最良の手段の一つでしょう。


超漢字4以前のバージョンはBTRON仕様OSそのものであったため、パソコンにインストールすれば超漢字だけが組込まれたパソコンとして活用できました。
しかし超漢字VはWindows上で動作するアプリケーションソフトウェアという位置付けへと変化しましたので、以前の様な状態で使用したいというユーザーは、パソコンをフォーマットし、以前のバージョンの超漢字をインストールしなくてはなりません。
また超漢字Vを提供しているパーソナルメディア社によれば、超漢字Vは従来の超漢字シリーズとは異なり、OSとして単独で起動することはできないとのことです。


ただし実際には、超漢字Vの商品パッケージ内に「リカバリディスク」というCD-ROMが付属しており、実はこれが超漢字のOSとしてのシステムそのものであることから、このCD-ROMを利用して超漢字をインストールすることによって、WindowsやVMware Playerを使用しない、超漢字だけを組み込んだ「純粋な超漢字パソコン」を仕上げることができるのです。
これは従来の超漢字シリーズと同じスタイルであり、以前から超漢字を愛用している多くのユーザーにとっては朗報でしょう。しかし、超漢字Vのこのような使い方についてはその動作が保証されておらず、またメーカーによるサポートもないという点は意識しておく必要があります。


コンピュータの開発には莫大な予算を必要とします。アメリカでは軍事優先の観点から国防総省が音頭を取る形で、積極的に民間企業に対して軍事研究予算が投入されています。


一方、日本においては戦争を放棄しているという国情によってアメリカのような潤沢な予算や人材を国家が提供してくれるような環境は存在せず、新たな技術開発研究は基本的にメーカーおよび関連する研究機関が行う「民需優先」によって行われており、そもそも日米においてはそれぞれの出発点からその研究のスタイルがまったく異なります。


しかし、日本が装備している現代のコンピュータが組み込まれた高性能防衛装備というものは、考えてみれば典型的な組み込みシステムそのものでもあります。
そしてこれは意外な事実なのですが、自衛隊の装備品の多くには実はTRONが使われていません。国産のOSであるTRONが自国の防衛装備に利用されていないというのは本当に不可解な話かもしれません。


防衛庁に10年ほど勤務していた筆者自身が、坂村氏本人から「どうして防衛庁・自衛隊は防衛装備にTRONを使わないのか?(=なぜアメリカ製の兵器ばかりなのか?)」、「まずは自衛隊が自ら率先して自国の優れたコンピュータシステム(=TRON)を利用すべきではないのか?」と直接問われました。
確かにこれまでの自衛隊の防衛装備には純国産のものが決して多くはありませんでした。輸入されたものもその多くはアメリカ製であるか、もしくはアメリカの兵器の日本国内におけるライセンス生産であり、特に航空自衛隊にはその影響が強くあります。


こういった状況には、日本は60年近くアメリカと同盟関係にあることが大きく影響していることは違いないでしょうが、それでは逆にTRONのような優れたシステムを日本が率先して国産装備に採用することによって、積極的にアメリカに対してイニシアティヴを握るための努力をすべきではないのかと筆者も思います。
坂村氏からの問いかけについて、防衛大学校の加藤直樹准教授(国際安全保障専門)にコメントを求めたところ、「我が国が装備するアメリカ製の防衛装備は、基本的にアメリカ軍が導入してから少なくとも4年を経過した『枯れた』技術を受けています。」と回答を受けました。

つまりよく知られているように、現在の日本は他国の技術に自国の安全保障をほぼ全面的に委ねている現状があるということです。それは兵器だけでなく自衛隊員の制服やその下に着用している衣類にいたるまで…こんなことは他国ではまったく考えられないことです。

自国の防衛産業には様々な政治的な事情があるにせよ、民需の分野で大きな成果を成し遂げたTRONを利用することのメリットは計り知れないだけに、この状況は残念でなりません。