明けましておめでとうございます。
新春にちなみまして、お正月にまつわる疑問を取り上げました。
【体験】
わたしはこの数年正月3が日には神社にお参りに行っていません。あの人込み、そして賽銭箱まで延々と続く行列に耐え切れません。そして一番の理由は毎年繰り返し同じように感じていた、今からお話しする体験にあります。
わたしの正月は、帰省をし元旦に家族で近くの神社に行くことが恒例でした。その神社というのが10年程前に新築された紅白の色も鮮やかな社殿で、また何十台という駐車スペースを持つ地元で一番大きな神社です。こと正月においては人口密度のとても高い境内でした。
人込み、行列はまだ気の紛らわしようがあります。参道の両側に並ぶ正月にしか見ない屋台(飴細工、カルメ焼き、生産国不明のあやしげなおもちゃ屋など)を冷やかしたり、晴着姿の女性に目を見はったり。ちょっと遠くで古いお守りやお札を焼いている煙が上がっているのを見るのもお正月ならではです。そこにいる人達皆が善人に見える、とても貴重な時間です。
屋台の軒並みを過ぎ、さらに進んで大きな鈴を2、3度鳴らした後は、2メートル程でいよいよ最前列です。財布から大きめの銀色硬貨を1つ取り出し、いつ最前列に出てもよいように備えます。後1人。前には、明らかにフェイクと分かるファーを巻き付け、多分ソフトラムの赤いレザーコートを着た中年女性が、最前列に来てようやく小銭入れをまさぐっています。しばし迷いそして意を決したように硬貨を1つ取りポイッと投げ拝み始めました。それに合わせわたしも硬貨を投げる体勢に入ります。しかし...
な、長ーいッ、このひと 拝む一連の時間が!
同じように待ち切れない人がいるらしく、わたしと女性の頭を超えて硬貨が宙を飛んで行きます。
待つこと体感時間30秒。ようやく女性がお辞儀から直りフェイクファーをなびかせて左へと抜けてくれました。やっとわたしの番です。が、もう既に一仕事終えたような気分です。わたしは硬貨をゆっくり下手投げで放り、心に決めていた願い事の中の1つだけを頭の中で神様にお伝えし、さっさと左へと抜けました。
【検証】
まず実際に女性が拝むために掛けた一連の行動時間を記憶をたどって推測してみましょう。バッグから小銭入れを取り出しチャックを開けるまでが4~5秒、適当な硬貨を探すのに3~4秒、小銭入れをバッグにしまうまで3~4秒。ここまでで既に10~13秒、最短と考えて10秒とします。
次に硬貨を投げる時間は誤差範囲なので無視して、拝む時間を考えます。一般的に他人の動作をじっと見て待つ体感時間は、実時間の3倍程度のようです。このことを
体感時間のスリップ現象と呼びます。自分で行動している時間とそれを傍から第3者的に待つ時間には、それほど大きな差があるのです。体感時間30秒と書きましたので実時間は10秒と考えましょう。
小銭を取り出すのと拝むのと両方合わせて
実時間20秒と推測されます。20秒を分かり易い例に例えると、新聞の文字を普通の速度で読んで約200字読めます。20行程度です。小学校低学年生徒の国語の朗読なら、50文字位は元気よく読んでくれるでしょう。
お暇でしたらご自分で20秒のうちに何が出来るか計ってみてください。
長いような短いような微妙な秒数であることが実感できるでしょう。初詣の際には、その秒数を硬貨を握ったままじっと待ってなくてはならないのです。
もう1つ明らかにしておく必要のある事柄があります。むしろこちらの方が重要かと思われます。それは、その女性の放った硬貨の色と拝む時間が適正なバランスになっていないということです。
わたしの目に狂いがなければ、くすんだ茶色の硬貨、つまり10円玉だったはずです。お賽銭の多少で神様がご利益に差を付けることはないのでしょうが、
果たして10秒の間にいったいいくつの願い事をしたのでしょうか?
「1年間家族皆健康でありますように」
「娘がちゃんと就職できますように」
「・・・」
「・・」
「・」
声に出さないお願いなので10秒で5つは可能ではないでしょうか。それはちょっと多すぎませんか?神様にもさすがにキャパシティってものがあると思うのですが。
いやでも、ひょっとするとわたしと同じようにたった1つの願い事だったのだが、
どうしても成就したく5回繰り返したのかもしれません。そこんとこはご本人にしか分かりません。
【結論】
初詣で前の人が拝んでいる時間があんなに長く感じるのは、
その方の願い事の数、重さが他人のわたしには分からないからなのです。もしわたしが超能力者で、これと思った人の心のうちを悟ることができたなら、長ーいとか欲張りだとかは思わなかったでしょう。知らぬ人とはいえ、ちょっとイラついたわたしの度量が狭かったのでしょう。
「袖振り合うも多少の縁」と申します。これから初詣にお出かけになる方、もうおしくら饅頭のような混雑はないでしょうが、前の方の参拝が長いなと思われても、我慢しましょう。そこでは皆が善人になっているのですから。
【追記】
正しいお参りの仕方が
神社オンラインネットワークに説明がありましたので、一部引用させて頂きます。
賽銭箱に賽銭を入れたあとに、二拝二拍手一拝の作法にて拝礼します。ちなみに二拝とは、拝(深いおじぎ)を二回することをいい、二拍手とは拍手を二回することをいいます。 これが参拝の基本作法ですが、二拝二拍手一拝の前後に軽い礼を加えていただくと、いっそう丁重な作法になります
この作法で行うともっと時間掛かるかもしれません。お試しになる際は、参拝ピークの過ぎた1月中旬以降がよろしいかと存じます。