さらに、いまさらながら、コンラッド「闇の奥」
象牙問題を考えるうえで、自分はどうしても「闇の奥」を想起させる癖がある。
「地獄の黙示録」とは内容的には乖離しているが、あのマーロン・ブランドの狂気の姿、ワルキューレの騎行、ナパームの雨あられとともに、どうしても蘇る。
トラウマだと思う。
あの映画を、１４歳で観てしまったことを、ある意味、後悔している。
もう少し大人になってから見ればよかったのでは、と。
最近「闇の奥」を取り出してまた読んでみた。
何度読んでも（三度目）後味が悪く、難解で気持ちがなえる。
余談だけど、ハワイのカウアイ島にシダの洞くつを巡る川下りというものがあるそうだが、これが地獄の黙示録の有名な川を行くシーンの景色と極似らしい。
もうそっくりすぎて笑うそうだが。
コッポラは撮影前にカウアイ島に行ったのだろうか？
象牙問題
印鑑を押すことも少なくなったけど、久々にそういう機会があり、取り出した。
認印ではなく実印。印鑑登録もしてあるものだ。
でも象牙ではない。
以前、何だったか、顔面をえぐられ、廃棄されているゾウの写真を見たことがある。
あれはかなり心に刺さった。
密漁により殺され、象牙だけを取られて廃棄された、見るも無残な残骸だ。
ケニアで獣医師をされている滝田明日香医師はNPO「アフリカゾウの涙」の代表。
このまんまで、このペースで密猟が続けばアフリカゾウはあと一世代、わずか十数年で地球上から姿を消すといわれていると語る。
なんなんだ、この閉塞感は。
コンラッドの「闇の奥」でも読んだが、象牙問題は昔から相当根深いものなのだろう。
そして今もまだ、その悪夢は続いている。
ところで「サバンナのダイヤモンド」といわれる象牙は、キロ２０００ドル＝約２０万の価値を持つとされる。
この象牙を違法で無尽蔵に密輸し続けてきた国が中国だ。
つまり、それまでの最大の密漁象牙の消費国でもあったわけだが、この中国、２０１６年、世界最大の違法象牙密輸入港・香港における象牙取引を全面禁止にという大英断を下す。
さらに第１７回ワシントン条約締約国会議（２０１６年１０月２日、ヨハネスブルク）では、２０１７年中の全国内市場の完全閉鎖を宣言するまでに至る。
そう、全締約国間で、ぴたりと「国内市場閉鎖」が全会一致で採択されたわけで、とっても、とっても気持ちんよか（笑）。
これにより、原則象牙の輸出入は一応欽してなったわけだ。
中国の国内市場が完全に閉鎖すれば密輸入象牙の闇市場価格はたちまち暴落する。
それは密猟の激減にも直結することが期待できよう。
そして中国の地位は格段に向上するというおまけも（笑）。
悪いことではない。
さて転じて我が国はというと。
１９８９年以前に輸入された象牙に限り、自然環境センターに登録すれば国内取引可能という対応を取っている。
が、この判断はいかがなものか？
中途半端でいい加減というか。
えって感じだ。
一応日本も、先出の第１７回ワシントン会議において「国内市場の閉鎖」を批准したんだよな？
まあ、「完全」はついてはいないが。
例えばヤフオク！でも２０１２年からの２０１４年の間だけでも計８０３本の全景象牙が落札されているという。
ここに切断象牙を加えると落札件数は約１６、５００件にも上るという。
さらにである。
これとは別に約５５，０００本の象牙印象が落札されていたりもするのだ。
国内市場全開モードの日本。
全開どころか、見るも無残な体ではないか。
そうこの国ではいまだに象牙が売られまくっているわけだ。
これは端の批准した諸国から見ていて、決していい感じがしないと思う。
実は、ワシントン会議で、このことについて中国から突っ込まれたことがある。
（中国、ナイスジョブ！）
その答えとして「ワシントン会議でまとまった案についてのみ」（笑）日本が記者会見を開いたが、その内容はというと、
「密漁、違法取引に寄与している市場を閉鎖するというワシントン会議での決定を受け入れたうえで、だがしかし、日本の象牙市場は密漁や違法取引には寄与していない」
当時の山本公一環境大臣が発言したものである。
レベル的には「船場吉兆・ささやき女将会見」、「野々村竜太郎会見」と同じかと見た。
いや、それ以下かも。
日本のお家芸というか、この記者会見で会議参加国すべてを錯乱状態に陥れたという。
帝国時分の国連脱退と同じだな。
日本、頭良い！ってことではなく、どんだけ卑怯で浅ましいねんってこと。
情けないわ。
現在、アフリカゾウの虐殺は全く変わりなく行われているという。
要するにだ、闇市場は変わりなく相変わらずのクソっぷりってことだ。
