川崎で起きた中一の殺害事件は、映画「リリィ・シュシュのすべて」を地で行くような事件で、なんか戦慄を禁じえない。
少年の凶悪犯罪は相当減っているというのが定説だが、その数少ない事件のひとつひとつの持つ「内容の残虐性、凶悪性」が減っているとは、まったく思えない限り。
「旅の重さ」は何度観てもグッと来る映画だ。
人間の業とか、あるいは欲深さ、至らなさ、ダメっぷり、情けなさなんかが満載で、懶惰に耽っている時に観たりすると、背筋がしゃんとするような、情けなさに自己嫌悪するやら(笑)。
音楽がとてもいい。
拓郎の「今日までそして明日から」はフォークながらも見事に「ロック」している。
音楽をバックに(映像をバックにではなく、あえて)流れる国鉄時代の名残の古い電車の横をヒロインが歩いているシーン、ただただ緑深い田園風景のシーン、などは見事な映像美で目の保養になることこの上ない。
昭和50年前後頃には、こういう景色はいたるところにあった気がする。
都市部のやや郊外…においてもだ。
その頃は当然であって、あえてそれを特別視していなかっただけなのだろう。
まことに「緑色」って本当に素敵なカラーなのだなと、つくづく思う。
チョイ役で秋吉久美子が出ている。
斉藤耕一監督。
高橋洋子主演。
悪魔の手毬唄で「枡ではかって漏斗で飲まされた」由良の泰っちゃんこと高橋洋子は新人だったが、当時からかなり演技能力が高かったことが散見できる。
しかし多方面で才能溢れて、かつ器用貧乏性だったようで、その後大成することもなく、ひっそりと作家に転身され、現在に至るそうだ。
著作には「雨が好き」「ひとり遊びをときどき」「雨を待ちながら」などがあり、「雨が好き」は映画化されてもいる。
高橋洋子監督脚本主演でだ。
ちなみに歌手としてレコードも出されている。
何度もいうが、この映画のツボはやはり拓郎の音楽と、そして鮮やかな緑を貴重とした映像美なのである。