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パールハーバーの5ヶ月前、ローズヴェルトは「大統領令8832号」にサインした。その時点で、日本の在米金融資産は無価値となり、世界から経済的に孤立し、日本は実質的に「破産」する。やがて日本は、アメリカが描いたシナリオの一つ、開戦を決断・・・・・・。 近年の機密文章公開によって初めて明らかになった、「開戦前」のアメリカによる恐るべき対日経済戦略のすべて
(帯の煽り文より)

コノ手の話になると陰謀論が好きな人なら 「太平洋戦争はアメリカの(或いはコミンテルンの)謀略だ!」なんて言いそうですが、この本では 「中国を侵略した日本を撤退させる為の」謀略であり、「アメリカと戦争するための(日本に先に手を出させる為の)」謀略ではないという事を指摘しておきます。

まぁ 満州事変と日中戦争以降の日本へアメリカが様々な経済的圧力をかけた、という内容。

主に、「戦略物資購入の貿易面」と「貿易の為の金融面」から成り立っています。

まず、不満
「中国を侵略した日本を撤退させる為」の謀略と書きましたが、「何故アメリカが中国に肩入れしたのか」が書いていないのが不満です。
コレは、通常 9ヶ国条約で決めた中国の主権と領土の尊重を日本に強要(条約の遵守)させる為、もっと言えば 中国という資本主義世界最後にして最大のマーケットを日本が破壊して独り占めするのを防ぐ為(パイの独占を防ぐ為)、という事なのですが、その辺が書かれていない。
はっきりいって そのまま読むと「道義心溢れるアメリカ人が日本の侵略で苦しんだ中国に同情した為」となるため、バタ臭いというか 日本から見ればただのえこ贔屓に見えてしまいます。

まぁ本の結論としては「経済的な圧力をかけたせいで、日本が暴発する下地を作ってしまった」ぐらいの事です。


よく日米戦では 日本の戦略的ミステイクが指摘されます
確かにたいした利権もない日中戦争や勝ち目がない日米戦争等 日本側のミステイクが目立ちます
が アメリカ側のミステイクも多分にあると思います
交渉事には「アメとムチ」が必要です、相手側にも一定の配慮が無ければ暴発を招きます。

が アメリカ側にはソレが感じられません。
輸出で近代産業と軍備を成立させていた日本に対して、生糸に対するナイロンの奨励は まぁ良いでしょう(化繊の普及は世界の流れだから)
が 綿製品や雑貨 陶器等への莫大な関税(日本製雑貨には70%、ドイツやイタリアの2倍)が 日本にいかなる影響を及ぼすのか という視点が欠落していたとしか思えません

別に当時の日本は貿易黒字を不当に溜め込んでいたわけではなく 石油やくず鉄 綿花等の輸入でアメリカへ還元していました
要は石油やくず鉄を買わせないために外貨獲得の阻害が目的です。

太平洋戦争は日本の滅亡と中国の共産化という結末に繋がります
言い換えればアメリカは日本と中国というアジアの2大マーケットを失ったとも言えます(当時はアメリカ産綿花の16%は日本に輸出されていた、またアメリカが持て余し気味のくず鉄も日本がお得意様であり、アメリカの業者は日本に肩入れしていた)
この本は アメリカの対日戦略の恐ろしさ と共に、対日戦略の失敗(平和的なアジア市場の安定)を描いている、私にはそう思えました

最後に 対日石油禁輸のエピソード

当時アメリカでは、西海岸はカリフォルニアで石油が取れ、日本にも輸出していました
東海岸は メキシコ湾の石油で イギリスにも輸出していました。
そして東西で石油を融通することはありませんでした(パイプラインがない/タンカーがパナマを通れない)
で 1939年欧州で大戦勃発 当然 イギリスなんかへの石油輸出がふえ 一時的に東海岸では石油不足が発生します
また風説により 石油買い溜めがさらに受給を圧迫します

コレを利用してアメリカ政府上層部が「国内でも石油が足りないから日本に売るな」とプロパガンダを貼りました

まぁ対日禁輸しても石油事情は改善しませんが
http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPJAPAN-17338320100922
三菱のリージョナルジェット、MRJのインタビュー

趣旨は 徐々に生産数を稼いで 10年後には黒字化を見込む事、その間に世界各国へサポート体制を整備する事、主なターゲットはやはり北米(5割、南米込み)だが アジアにも注力する事、中国 ロシア機とは機体の新鋭さで差別化が出来る事 などです。

意外な話ですが、アメリカは製造業の生産性では日本を抜きます。
と言うのも ビジネス的に競争の低い、参入障壁が高い航空機市場を握っているからです。

つまり 今後の日本の製造業を担う上では生産性向上が不可欠な為 航空機分野進出は必要 だという事

「参入障壁」と書きました
コレはおそらく 莫大な初期投資と生産数が少ない上での 需要の不安定さであると思えます。

まずは モノがモノであるが故 いい加減なモノは作れません。
経済学で「コンコルド効果」という言葉がありますが、莫大な投資を回収したいがため(投資の失敗を否定したいとも) 採算性が怪しいが 資源を投入せざる得ない状態です

勿論 誰だってソレは嫌ですから したがりません

また 自動車等に比べて供給側(サプライヤー)が少ないかわり 需要側も少ない事もあります
自動車や家電は 誰かに売れなくても「別のお客がいる」と言えます みんな欲しがりますから
が 航空機はそうはいきません
「別のお客」というモノがいない(少ない)からです

つまりはビジネスがリスキーになりがちな事です 注文が無ければ 固定費ばかり嵩みます(この辺は大数の法則によります)

しかし三菱は首を突っ込みました

おそらく 国策もあり 支援もあるでしょう
しかし敢えて突っ込んだ 私はこの事を評価したいな と思っています


バランスシートを読むのは難しい、プロでも難しい

昔 人に「貸借対照表何処から見る?」と聞かれて「流動資産から見ます」と答えた事があります

普通は資本の部、資本金なり資本剰余金から見るそうですが

まぁどうだっていい
バランスシートの難しさは「数字の意味」だと思う。

例えば 流動資産、特に当座資産と呼ばれる現金や現金同等物 コレは多い方がいいのか?
一般に多い方がいいです、何せ「金持ち」ですから
帝国データバンクなんかの評点でも資金繰りはバッチシ評価対象になります
つまり高い程 取引先に恵まれたり、借金の金利が安くなります。

しかし一方 手元に現金を置くという事は 「投資をしていない」という意味でもあります
投資なくして成長なし、です

何が言いたいか?「何処まで踏み込めるか」が難しいと言う意味
ちなみにイオンなんかは キャッシュフロー計算書を見た限り 07年までの好景気に利益(営業キャッシュフロー)を片っ端から投資したせいで 回収を計ろうとした矢先 この大不況 と相成りました
この事からもバランスシート分析がいかに難しいか お分かりいただけたと思います。


だから某blogの一部の無責任な発言にはイラっとします

例えば、「政府紙幣すれ、日銀は量的緩和しろ」「国が破産する何て言う奴はバランスシートも読めないヤツ」と

貴様は読めるのか!! あっ?

バランスシートが読めれば資産の無軌道な拡大がどれ程危険かすぐにわかると思うし、銀行が過剰な国債購入が何をもたらすか程度は理解できるハズ

だいたいまともなエコノミストが量的緩和を主張する時は「バランスシート拡大の副作用以上の利益がある」という展開
ただデメリットはあまり言わない どうせ誰かが主張するから

で 某blog デメリットを主張した途端、「売国奴」扱い

ちょい まずいのではと思う
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書評です。

内容は まぁAmazonかbk1でも読んでください。

感想としては 「やっぱり石橋湛山賞だな」というのはあります。

この石橋湛山 戦前のジャーナリストにして 東洋経済紙の編集者 そして後に内閣総理大臣になる人物でもあります

この人の主張に「小日本主義」つまり 大陸の植民地化や軍事進出はコストがかかるばかりで割に合わないから、日本は植民地をすて 貿易に専念すべきという思想です。

ここでの基本はそう
スマイルズなんかに代表される 自己努力、自立心 なんかがテーマで国による経済介入を極力抑える形をとります

例えば 明治には多くの人が野心を持ち、野心を叶える努力が国を富ませたものの、満州事変からは野心の矛先が軍事的成功、つまり大陸でいかに利権を分捕るかに置き換わり、結果として国力の消耗を招いたという主張

まぁ結論として「人々の活力(欲望)を自由に叶える為に政府の民主化、経済活動の自由化、財産権の確立が必要」というスタンスです。

しかし 私には疑問もあります
確かに自由化された明治以降の発展には目をひくものがあります。

が ソレは多分に歪んだモノでもありました。

例えば金融
当時の銀行は地方の有力者が主体に始めていたのですが 産業界と同じ土壌、つまり癒着がありました
コレは 例えば地方の有力産業と銀行のトップが同一人物であったり、銀行融資が特定企業に偏っていたりしました
つまりその企業が潰れれば、銀行融資も全滅状態となり、金融不安が加速する結果になりました

この本で批判されている浜口 井ノ上による金解禁策 あれも背景には信用不安から都市銀行に預金が集中した結果 海外投資(金輸出)を求める声が高まった事を背景にしています

はたして この構図が戦時体制による金融再編抜きに解決出来たでしょうか?

また 軍国化の背景には地方の惨状がありましたが その理由の1つが高額な小作料がありました
また高額な小作料は実入りのいい商品作物への傾倒を招き ジャガ芋等 単価の安いが生産性の高い作物栽培への投資を減らした側面もあります
そして 商品作物への傾倒は世界恐慌による不景気で価格が下落 洒落にならない状態になりました。

何が言いたいか?自由経済には利潤の追求という側面があります
利潤は努力とリスク抜きには得られませんが、危機下でのソレは有効に機能すると限らない事です。
つまり 自由経済は結構だが リスク対策をなおざりにするな という事です


野口悠紀雄「戦後日本経済史」シンパとしては「自由が必ずしも常に正解なのか?」と思います。 例えば 日本の重工業化、原田は「貿易の自由化に因る低価格な資源の獲得」としています
が 産業化には莫大な投資が必要でありソレを促したのは政府であり(政府の影響下の)銀行でした(この辺りは山崎豊子、華麗なる一族の背景にあります)

また公共事業に莫大な投資をしていたのもこの時代
当時の民間企業のプロジェクトマネジメント能力でソレが出来たのでしょうか?

自由とは難しいテーマです
何故なら自己の自由の追求は他社の自由を脅かす結果になりがちだからです

ポーランドリトアニア共和国には「黄金の自由」というモノがありました
これは王様の強大化から貴族の自由と権利を守もるモノでした(マグナカルタと似ているかも知れません)
しかし その自由とは 農民を農奴として搾取する自由であったり(クーツヘルシャフト) 都市やブルジョアジーを抑圧する自由でもありました。

私には 戦前のゴタゴタが明治以来の「自由化」の行き詰まりに思えてならない
例えば 戦前のジニ係数は0・573 コレは現在のアメリカや中国より高い水準です
また強大な株主は配当を求め 内部留保の流出は設備投資を抑え 低賃金に経済を依存させる要因ともなりました

自由とは何か?言いかえれば経済という 資源の配分においてレッセフェールとは最適な解答なのか? 考えさせられる1冊です
政府紙幣って、究極的には 政府の負債なのかな?

というのも 日銀券は日本銀行の負債ですし。

ふと思った
紙幣には国債と違い 利子がつかない、コレは政府から見れば利払いによる財政負担軽減というメリットがある

しかし 利子もつかない、買い物も出来ない 子供銀行券を欲しがる人はいない

日銀券は買い物が出来るから価値があるし 日本みたいに貿易の輸入依存度が低い国は 逆にいえば日銀券で買い物が出来る範囲が広いという意味があり 流動性の高さが、日銀券(日本円)の価値を高めている側面があります

で 政府紙幣
買い物が出来ないなら価値がなければ買い物が出来るように、となる

例えば 税金を政府紙幣で納めたり

つまり 将来的に政府に納められる日銀券の減少という意味がありますな

因みに某blogで褒めたたえられた 大政官札、あれには割引債としての側面があります
例えば 10両分の大政官札を発行すれば、年1両の金での支払いを「13年間」受けられる といった具合です

因みに 「陰徳を積む、銀行王安田善次郎伝/北康利」によれは 大政官札を捌くのは非常に大変でしょっちゅう額面割れを起こしていた とか

さて 政府紙幣の問題点を

早い話 流動性のお話
例えば日銀が金融引き締め策を打つとき売りオペをします。

つまり日銀の資産を売って市中から資金を回収する訳ですな

で 政府紙幣、金利も付かない金融商品を欲しがりますか?また買い物が出来るという事は市中に流せば当然マネタリーベースは変化しません。

まぁ1言でいえば不便、という事

いや、今必要なのは金融緩和だ、というかもしれないし ソレは事実です

が 戦争でも敵を叩くと同時に講話のチャンネル作りをするのと同じで、「出口戦略」なき政策は まぁ欠陥品です。

因みに日中戦争なんか 莫迦が「アジア解放のため」とか言っているが 突き詰めれば 交渉チャンネルが無くなって畳めなくなった風呂敷を無限に拡大しただけの話です。
大体 アジア解放なのに、インドネシアやマレーシアは併合予定、インドシナはヴィシー政権(つまりフランス領)ってどんだけ外道なんだよ!

まぁつまり、政府紙幣するぐらいなら国債を発行したり(どちらも政府の負債) 日銀が普通に量的緩和政策をした方がいい くらいの意味。

はっきり 言います、政府紙幣を発行するより永久劣後債、あるいは超長期国債発行支持です

誰が買うの?と思われるかもしれない
金融機関にはALMといって つまり 負債と資産のサイクルを調整する事が求められます
何故なら「資産の現金化が10年後、負債の支払いが明日」では現金がありませんから。

さて つまり 長期国債を出すには 長期の負債が必要ですが 例えば生命保険なんかは保険負債、つまり将来の支払いは平均寿命の延びに合わせて長くなっております。
また 銀行でも預金(銀行の負債)を精査したら結構固定的な負債が見つかった とされます。

何がいいたいか 何がいいたいんだろう?

は冗談として 政府紙幣より既存の政策のほうがイイ ぐらいの意味