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ミツゴ評価 ☆☆☆
<書評>オスマンの寛容
オスマン帝国の偉大さとは その広大な領土にあるとおもう
いや 領土自体なら もっと広大な国はある
ポイントは地域である
オスマン帝国の勢力圏はアナトリアを中心にバルカン半島、中東 北アフリカなのだが これらの地域は民族 宗教紛争が絶えない地域である
つまり オスマン帝国は数百年単位で紛争多発地域をまずまずの統治が出来た、コレがオスマン帝国の偉大さだと言える
ただちと問題に触れてみる
大概の紛争の背景には経済摩擦がある
例えばイラクの宗教、民族問題にも 石油の富を油田のある地域(南部シーア派地域や北部クルド地域)とない地域(イラク中央部のスンニ派地域)の分配スタイルに由来する
ない地域は「国土の均衡ある発展」という(要はコッチにも金くれ、の意)
ある地域は「地方自治の尊重」という(要は地域の富は地域でつかう、の意)
コレはスーダン内戦やビアフラ戦争にも見られた構図だ
つまり、おそらくオスマン帝国内でも経済的に成功した民族や地域とそうでない民族や地域が出て来るハズである
実際問題 ギリシャ系やアルメニア系は成功した部類に入っている(西欧とのコネクションがあるので貿易に有利だった)
また 多様な人材の登用といえば素晴らしいのだが、逆にいえば既存の既得権益層(トルコ系の名門)には面白くはないはずだ
下世話な話 日本でも公務員の外国人登用が増えれば日本人の雇用が減る、日本の雇用は日本人のモノだ!なんて向きも多いのではないだろうか(ここではソレへの善悪正誤は問わないが)
さて、一般に格差是正の話は税金の話に繋がる
ここでは非常に重要な話だ
イスラム法では「剣か貢物かコーランか」とある
税金(人頭税)を納めれば、非ムスリムの信仰を保証する考えだ
逆に言えば キリスト教徒やユダヤ教徒はムスリムより税金を多く払わなければならないとも言える
ムスリム側も故に彼等の信仰を歓迎した訳なんだが
オスマン帝国も帝国内の非ムスリムを宗教毎に組織(ミレット制)し 自治を認める代わりに税を取り立てた
つまり 宗教を統治システムに取り込んだ訳だ
さて この話を見れば 経済的な摩擦はかなり大きそうだと言える
残念ながら本書は ソレに対する解答(民族や宗教による経済や税格差の不満抑制法)を提示していない
では私見を書いてみる
戦争とはビジネスである
征服地から戦利品や奴隷を巻き上げる事で莫大な戦費をペイしている
特にトルコのソレは「奴隷」に関しては非常に熱心にやっている
つまり「戦争」という収益源があるから国内の税収を抑えられたし 貧しい民族への雇用が確保出来たのではないか?という事
コレを踏まえればいくつかの事が見えてくる
収奪が「勝利」が前提にある以上 領土拡大の限界は 戦争の収益の限界でもある
17世紀になり ヨーロッパ諸国が台頭すると これまで通りの領土拡大が難しくなった
結果 国内に収入を求める形になり 民族間の不和が生まれたのではないか
事実このころから オスマンの寛容は陰りを見せ始める
いや ネタですよw
一説には 物価高騰(新大陸からの金銀流入)と通商システムの変化(オスマンの中継貿易がアフリカ航路にとって代わられた)により 経済的疲弊がいろいろあった って話もありますが
要は「オスマン帝国は寛容であった」事は認めるが「何故寛容であれたのか」の部分 特に税制や経済面からのソレがないな という事で


