http://www.bk1.jp/product/02216036

ミツゴ評価 ☆☆☆☆

<書評>近代の黒い血液

意外と知られていないが 国際通商に供せられる商品(コモディティ)の中で、石油に次ぐ取引金額なのはコーヒーである
石油がしばしば近現代史の語り部として用いられるなら コーヒーもまた語り部足り得るのではないか? 本書の狙いはまさにそこにあるように思う。

コーヒーの伝達経路は 主に 1)東アフリカ→2)アラビア、中東世界→3)ヨーロッパ→4)世界へ と言える
1)→2)についてはよくわかっていない
アラビアに伝わったのは8世紀、イスラム世界の勃興期だ
やがてイスラム世界にスーフィズム(神秘主義)がおきる
この思想のベースは「神との一体化」、つまりシャーマン的な思想とも言える
シャーマンは夜に起きる、神秘主義は夜を舞台にし、アルコールの禁止されたイスラム世界において 恍惚(トランス)に浸る飲み物として採用された
だが、コーヒーとワインはよくにている
人間を活性化させたり心理的高揚をもたらす
「コーヒーはクルアーンに背くのでは?」と議論になる、神学論争が始まる

結論としてコーヒーは認められた、オスマントルコ帝国時にはアチコチにカフェができ 爆発的にヒットした

コーヒーはヨーロッパにも伝わる
当時、大航海時代を迎えた欧州には「健全な市民の憩いの場」という需要が生まれた
故にカフェがヒットした
ロンドンのソレでは商人や船主が互いに情報を交換した、コーヒーを片手に
カフェは情報の集約基地となり 情報は金融と結び付く、特に当時は海外の商品情報や船舶の運航情報のニーズが高かっただろう
こういうカフェの1つが 後にロイズと呼ばれる 保険「会社」になった

さらに話は進み、話題は政治的なモノとなる
コーヒーは嗜好品だ、生活にゆとりのある中産階級出身者が1日中 政治の話をする
後の市民革命の下地となる訳だ

勿論 権力者は押さえ付けたい、となる

だが コーヒーのもたらす莫大な権益の前に 肯定する事になる

そうコーヒーは金になる、ならば欧州人はイスラム世界から輸入するのではなく 自分達で作れないか?と考える
コーヒーの栽培が可能なのは、俗にコーヒーベルトと呼ばれる赤道周辺だ
これが、いわゆるプランテーションに繋がるわけだ

カリブ海にマルティニーク島という場所がある 現在もフランスの植民地だ
フランス軍はかつてこの地域の原住民を皆殺しにした

その後この地でコーヒー栽培が始まるが労働力がいない
結果 アフリカから黒人奴隷を連れてくる訳だ

やはり大のコーヒー党であるドイツ、ドイツは東アフリカを植民地にした
もちろんプランテーション労働者として原住民を雇う
だが、当時の原住民には彼等の生活スタイルがあり文化があった
結果労働力にはならない訳だ
これをドイツ人は、原住民は怠惰だ 遅れている 無能だ 等と詰り、白人の優越性なるものの確信を無意味に深めただけであった

コーヒーは金になる、だから皆作り 結果過剰生産に陥った
これを悩んだのがブラジルだ
コーヒーに経済を依存するブラジルは考えた、安いときにコーヒーを買い溜めて価格を吊り上げよう、と
結果片っ端から買い溜め資金を募り、借金を膨らますことになった

コーヒーは誰でも飲む、近代とはある意味では商品の時代だ そう思う1冊