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ミツゴ評価 ☆☆☆☆+☆×0.5(☆4.5コ)
<書評>貨幣の物語
まずこの本は貨幣の歴史について、過去 現在 未来について書いてある 分量は 60:35:5 ぐらいだろうか?
さて筆者の主張は、ズバリ「マイナス金利の導入」である
通常金利がマイナスにならないのは、「銀行に預ければお金が減っていく」ならば、たんす預金が増えるだけだからである
筆者はやがて電子マネー化が進めばマイナス金利導入が容易になると主張する
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唐突だが 何故デフレが経済に悪いのか? 「30万円の給料と1000円の昼飯」と「15万円の給料と500円の昼飯」では生活水準は同じでは?となるハズだ
答えは「実質金利が高くなる」からだ
デフレになれば 1万円の重みが重くなる
ならば(額面が同じなら)借入金の返済や支払利子も当然重くなる
経営者は お金を借り、工場等を建て、稼ぎ、稼ぎの中から利子を払い、残りを利益(経常利益)とする
経営者は利益の為にお金を借り 工場を作り、人を雇い、動かす
実質金利が高くなれば、利益が減る
利益が減れば、「別に工場を建てなくてもいい」となる
結果工場は建たず、工場の雇用も 建設需要も無くなるし、モノが作られない訳だ
だから リフレ派の言い分は「緩やかなインフレにより実質金利を押し下げるべき」となる
問題は「インフレは緩やかな水準に制御可能か」「実質金利が本当に低下するのか」という事
「不況下においてデフレによる実質金利高止まり」に関しては 経済学者の大半は望ましくない、という共通理解がある
だが問題は「緩やかなインフレ政策」が効果があるのか、リスクがあるのか という点だ
著者の主張は「マイナス金利により、実質金利を低下させるべき」という事だ
何故 インフレ政策による解決はダメなのか?
インフレ政策とは突き詰めれば「紙幣を増加させ、市場にお金を氾濫させる」事だ
この紙幣は 日銀のマネタリーベースに繋がる訳だが、まぁ日銀の負債だ
貸借対照表が 資産=負債+資本 である以上、資産が一定なら(何故一定なのか、私にはわからないが日銀出身の著者が、日銀BSをトチるのも考えにくいので採用する、普通は資産と資産からの収益とリスクが増えるんだが) 負債増加は資本の減少になる
金融機関の信用力が資本力である以上、これは日銀と日銀券(日本円)の信用低下に繋がる
なら 円建ての長期債権は嫌われる(受取が信用のない日本円だからだ)、結果 外貨建国債を発行せざる得なくなり、毎年莫大な外貨での利払いに苦しむハメになるからだ、と筆者は語る
なんか生臭くなってきたな
歴史の話をしよう
金融の始まりは古代メソポタミアにまで遡る、何しろ3800年程前のハンムラビ法典にすら法定金利の記載がある
日本でも古墳時代には出挙(すいこ)というシステムがあった、要は農民に春、籾種を貸付け 秋に返済を迫る訳だ
こうして見れば金融の始まりが農耕の始まりとリンクしているのがわかる
農耕とは穀物を作り、貯め、増やす、分配する事だからある意味当然か
やがて 金貨や銀貨が出て来る、これは金や銀が 穀物に比べより持ち運びや蓄積に有利な事からだろう
やがて「紙幣」なる紙切れが出て来る
例えば 国が大規模工事や戦争でお金が必要だとする、当然 民間から借りる訳だが、その手形として紙幣が生まれる
「この紙切れは何時でも金貨や銀貨と交換出来ます」となれば 「紙切れ=金貨や銀貨」という構図が成り立つ、紙幣なる紙切れが金貨や銀貨と同じ様に買い物に使われる訳だ
少なくとも政府がちゃんと紙切れを金貨や銀貨と交換してくれると「信用されている」かぎりは
だが 時に政府は信用されない、何故なら紙幣は金貨や銀貨と違い、いくらでも作ることが可能だからだ
そこで、紙幣を発行するセクションを政府から独立させては?となる、これが中央銀行の始まりだ
例えば 世界初の中央銀行であるイングランド銀行を見てみる
17世紀当時イギリス政府は海洋覇権をオランダやフランスと争っていた、戦争になれば当然戦費が必要だ
イギリス政府はイングランド銀行からお金を借りる、後の世の中なら戦時国債の購入というスタイルだろうか
イングランド銀行は必要な資金を民間から調達する、これは「捺印手形」という証券の発行による
この「捺印手形」が信用が高く 後にポンド紙幣になる訳だ
ここで重要なのが紙幣の価値と金貨の保有量がリンクしている事だ
紙幣に対して金貨が少なければ当然、金貨に変えてもらえないリンクが生まれ紙幣の価値は下がる
これが金本位制の始まりだ
この制度は大変都合がいい
例えば A国とB国が貿易をして、A国が貿易赤字 B国が黒字だとする
差額はA国→B国への金の引き渡しで済ませる(実際はロンドンにあるA国の銀行口座→B国の銀行口座への支払)
A国では金が不足し、紙幣の価値が下がる、通貨安だね(B国では逆に通貨高となる)
結果A国製品の国際競争力が上がり 貿易収支の均衡が期待できる訳だ
だが問題が発生した
2度の世界大戦を通じ、世界の金はアメリカへ集中 結果誰も金を持っていない=通貨が紙切れ 状態に突入したからだ
そこでアメリカが「ドルさえあれば金を売ってあげる」となった これがブレトンウッズ体制なんて言われる
要は金=ドルであり 金での貿易決算がドルでのそれになったわけやね、そうドルの基軸通貨化だ
ただ問題があった
ベトナム戦争や福祉拡大政策は米国にインフレをもたらした
例えば ボールペン1本が1ドル、日本円で360円なら 1ドル=ボールペン1本=360円 となる
インフレで ボールペン1本が2ドルになれば 2ドル=ボールペン1本=360円、1ドル=180円になるはずだ
だが 1ドル=360円 と固定していた
ならば 日本のボールペンは米国製の半値で売れるわけだ
つまり米国は大量の貿易赤字を垂れ流す事になる
結果 世界中でドル→金 への交換がふえ 堪えられない米国はニクソンショックと相成りますた、と
