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三つ子的評価 ☆☆☆☆☆
【書評】デフレ時代の経営術
世の中デフレである
昔は本業が赤字でも企業は保有資産(特に不動産)が値上がりしたので その含み益で経営が廻っていた(最たるモノが西武グループやね)
が、デフレである
デフレの時代、企業は本業で利益を産まねばならない(当たり前だが)
商品単価が下がり 国内市場が停滞する中、より安く、より海外で成功することが企業には求められるようになった。
つまり「デフレとグローバル化の時代をどう生き抜くか」経営者が問われる、そんな内容である。
より書けば「価格も売れ筋も流動的な時代」といってもいいかもしれない。
例えばこれまでサムスン等海外メーカーとの競争で「利益無き繁忙」を強いられていた国内電機メーカーのキャッシュカウ(主要収益源:金のなる木)は原発であった
原発は1基作れば、メンテ等で喰っていけるビジネスなんだが、今回の震災で不透明感が増して来た(より言えば原発に変わるメシの種が不透明とも)
また グローバル化に伴い 企業のライバルは海外メーカーとなる
海外メーカーに勝つには体力(≒資本力)が必要になる
例えば国内最大の小売り業の7&iホールディングス(セブンイレブンの親会社)の規模(時価総額)は世界で6位程度、ウォルマートの3割もなかったりする(記憶モード)
近年の企業の合従連衡の背景には「グローバル時代の競争における莫大な開発資金や設備投資を如何に捻出するか」という問題でもある
また、時代は転換期でもある
例えば自動車業界
これまでの自動車のキーワードは「アメリカ・ハイブリッド車」であったが 近年は「中国・電気自動車」となりつつある。
これは北米に強味を持つ会社(トヨタやね)の覇権を覆す事になる、業界の勢力地図が激変するわけだ。
とにかく先が読めない時代に突入している訳だ(つまりこれまでの企業の強味が一瞬にして覆る可能性がある訳やね)
日本の自動車業界最大の強味は"すりあわせ"(システムインテグレート)と言われて来た
が、電気自動車が普及すれば、すりあわせよりパーツの垂直統合になると言われている
パソコンや家電と同じ扱いになる訳だから、安い労働力をバックにした新興国メーカーにお株を奪われるかもしれない
勿論、パソコン業界のインテルみたいにキーデバイス(中核部品)の特化という選択肢もあるかもしれない
が、実は今年 電気自動車のキーデバイスの1つであるリチウムイオン電池のシェアで日本は韓国に抜かれていたりする
メーカーを見ればLG化学やBYD(バフェットが投資した会社やね)等中韓メーカーが伸びていたりする
勿論 日本のメーカーもバカではないので パナソニックが三洋を買収したりとこの分野に力を入れている(早い内にシェアを取らないと主導権がとれなくなるから)
だけど統合が始まるのは2012年から、効果が目に見えるのはさらに数年後、ドックイヤー何て言われるこの業界的にはこのタイムロスはかなり痛くなりそうだったりする。
閑話休題、本書を読むと結果を出している経営者はアラが出にくいな、と思った(逆に言えば結果が出ないとアラが怒涛の如く吹き出す)
例えばカルロス・ゴーン、彼はルノーから日産に送り込まれた立場やね
ルノーはあまり経営的にうまくいっていない、だから保有する日産株からの配当収入はかなり美味しい、という立場やね
が、日産からすれば(10年で4000億円とも)配当という形でのキャッシュアウトフローは開発費を先細らせる効果がある
だからハイブリッド車でトヨタやホンダに遅れを取った訳だ。
そんな日産を助けたのが中国市場だ
日産は他社が沿岸部を拠点とする中、内陸部に拠点を置いた為、リーマンショック後の沿岸部の輸出不況を避け 内陸部の開発に乗れた
また他社が中国子会社の株式の持ち分を50%未満の所 日産は50%越えをしていた為 中国子会社の利益を全額組み入れる事が出来た(注:株式の持分が20%以上50%未満の場合、関連会社という事になり持分の分のみ利益に組み入れる)
はっきりいってカルロス・ゴーンからすれば「運がよかった」に過ぎない部分がある
日産がデファクトスタンダートを取りたがる電気自動車もハイブリッドの立ち遅れが背景にある
だけど日経とかには割と書いてなかったりする
そういう意味で本書は1つの見解を提示してくれる、そう思った