内容説明
「市場競争を煽って格差を拡大し日本の伝統を破壊した」「世界金融危機を引き起こした元凶」 現在の日本で、新自由主義ほど批判される経済思想はない。その誤解をとき、新自由主義の思想に基づき、日本再生のビジョンを示す。
http://www.bk1.jp/product/03444169
三つ子的評価 ☆☆☆+☆×0.5(☆3.5コ)
【書評】自由主義のバイブル!
経済とは突き詰めれば 有限な資源(リソース)の活用法であり 当然なるべく効率的な運用が求められる
新自由主義とは資源の運用をなるべく市場に委ねるやり方で 逆に所謂"大きな政府"は運用を政府が担う概念である
"大きな政府"には"ハーベイロード前提"(政府は民間より賢いという考え)が前提としてある
自由主義とは ある意味ではハーベイロード前提を否定する立場でもある
本書はリーマンリョック後 極めて評判の悪い新自由主義システムの擁護本である
本書のキモは新自由主義システムを体系的、解りやすくまとめてある点にあり、新自由主義システムに否定的 肯定的な人も「新自由主義とはこういう考え方か!」という事を知る上で有益な本である。
では 何か書く
1991年 ソ連が崩壊した、一般にコレは「資本主義に対する共産主義の敗北」ととられている
が、実は60~70年代にかけてはソ連は(少なくとも冷戦を戦い抜く程度の)結構高い経済成長を維持している
問題は ある程度豊かになったソ連が"更なる成長"を求めた時、共産主義が方法として不適切であった事が言える
日本も同じで 野口悠紀雄が「1940年体制」という官主導の経済統制システムが高度成長を支えたとされる
だが 先進国にキャッチアップした日本が、貧しい時代のシステムで乗り切れるのか? 更なる発展のためのシステムを構築できるであろうか? 本書はそこからスタートしている
本書では新たなシステムとして新自由主義システムを推奨している訳なのだが、何故新自由主義なのか?
既存のシステムはある意味"官主導の資本主義"という中途半端なシステムである
その中途半端さに膿が蓄積し、非効率が発生 経済成長を押し下げている
故に、中途半端さを解消する為の新自由主義、という主張である
例えば 郵政改革
昨今のTPP論議の中でも しばしば"(国民の資産が)アメリカの餌食になる"と聞かれる。
が、少し考えて見る
アメリカ企業は利益に貪欲である(例えば営業利益の合格水準は日本の倍)
そんな 貪欲なアメリカ企業が日本に来るからには郵政事業には相当なうま味があると考えるのが妥当である
では そのうま味は国民に広く解放されていただろうか?
郵政改革とは郵政が独占していたうま味を(内外問わず)民間企業にも味わうチャンスを与える意味でもあった。
新自由主義的とされる小泉改革の中で特に評判が悪いモノの1つに労働者派遣法改正がある、曰く コレのせいで非正規雇用が増え、経済格差が拡がったと
だが 派遣法改正は99年で ぶっちゃけ小泉はあまり関係ない
そもそも派遣法改正自体はILO(国際労働機構)の指示であり 本来は"硬直化した労働市場から締め出された人を吸収する"事が目的だったりする
賃金格差を縮めるのは簡単で 労働時間の少ない非正規雇用を締め出せば 賃金の額が上がり 格差も小さくなる
が 失業率もあがる
要は 失業者が賃金の安い労働市場に参加したから格差が増えたように見える訳やね(非正規雇用反対、という人は失業増大に賛成、となりかねないので注意されたし、例えば欧州の失業率参照)
本書は負の所得税などの福祉の拡大には賛成しており財源には消費税をあげている
何故 消費税?といえば 年金問題がある
年金とは個人レベルで見れば 若いときに貯蓄し 老後に利子を付け受け取るシステムである
当然 若いときに保険料を払わないヤツは老後に受け取れない
が 老後に生活保護を受け取ればどうだろうか? 老人は生活保護受給資格である「働いていない」を容易に満たせる
社会保障予算には限りが有るため フリーライダーが増えれば当然 貰えない人が増える
故に「強制的に納めさせる」為の消費税増税 といえる
最後に本書を支持する/しない は別に気になった部分がある
しばしば新自由主義の批判にトルクダウン理論批判がある
リーマンショックにて多くの金持ちが没落した
で 貧困層が救われたのだろうか? チャイますよね?
「金持ちを貧乏にしても貧乏人が金持ちになれない」サッチャーのこの言葉を思い出さずにはいられなかった




