TRIANGLE -71ページ目
メトロノームが傾く
天秤から零れた感情
乗せては溢れる
伝えたい言葉は
そんなもんじゃないよ
「好き」
「嫌い」
折り目をつけて
渡す手紙の中身に
感情移入しちゃって
僕の心は置いてけぼり
気付かないでしょう?
痛みを分け合うなんて事
出来やしないくせに
かちり、かちりと
傾いては返る
僕とは正反対の世界
いっそ壊してしまえたら
その汚く引かれた境界線を
掻き消してしまえるのかな
それともあれかな、
きっと痛みだけが待ってるかな
許せないのは
僕だけで十分だ
文字で表すなら
同じ二文字なのに
どうも痛みを伴ってしまう
「××」
いつしかそれすら言えなくて
かちり、かちり。
軋む音も交えて
メトロノームだけが鳴り響く
傾いて、
またほら僕は
一つ二つと許せなくなる
溢れだすのは
きっと僕のせいだ
そうして天秤から零れた
言葉を僕は、
確かに息衝いている
鼓動の音に
掠れた様な声
深く眠っていたかの様な
何時かの夢の中
知り尽くした様な
言葉の一つ一つを
パズルみたいに並べて
時々間違えちゃって
「あぁ、そうか」なんて
遠く感じた
時間の分だけ
聞こえなくなる
塞いだ耳と
震える事を忘れた喉は
力が抜けきって
まるで抜け殻のようで
嘆き悲しむ前に
君は独り叫んで
弾ませた胸の中
見せる事は一度もなくて
「彼方に迎えに行こうか」
手を伸ばしたってさ
届く筈もないなら
折り曲げて、捩れちゃって
それでも生きていけるんだ
優しい歌は
もう聞こえないけど
優しい歌は
もう歌えないけど
踏み出した足
遠ざかる
日常の扉
力を込めて
押し出した明日に
手に取った銃は
誰に向けるんだろうか、
逸れてしまったままの
心を置き去りにして
また今日を越えて
見えない明日を迎えて
踏み出す足は
未だに竦んだまま
立ち止る背中
遠くなっていく
そのくらい、分かってる。
下りたままの遮断機に
足を取られてしまった
僕は、走れるか。
それだっていいよ
立ち止っても
また踏み出した両足が
忘れた針の音を
繰り返す様に
力を込めて
込めて、
込めて、
また、明日。
溶けあう様に
二人手を取って
『もしも、死んでしまえたら。』
誰よりも幸せになれる気がした
重ねた掌も
夕暮れにかかる横顔も
忘れてしまう程小さな
ささやかな幸せも
隠してしまって
そのうち、忘れてしまって
それでも時折思い出して
深く仕舞い込んだままの
少し古ぼけたお菓子の箱を
二人で取り出してさ。
そしてその中に入ってる
二人だけの思い出を
繰り返す様に
二人手を取って
その名前を呼んで
忘れてしまっても
何度だって思い出して
小さな言葉で泣いて
小さな感情で笑って
小さな日々を重ねて
小さな事を増やして
溶けあってしまえたら、
きっと死んでしまっても
二人 でいれるんだろうね
そんな幸せを
君と二人で分けあえる様に
僕らは二人魔法をかけたんだ。
見上げた空が
辺りに散らばって
じゃあねと手を振る背中
逸れたままの視線と
浮いた色彩に
少年は言葉を失う
伝えたって、返ってこない
ただの言葉に
こんなにも悲しくなって
手から離れていく
傘は落ちていく星屑に
痛みばかりが増えていく
もう、何処にも行かないのに
僕は此処にいるのに
笑える様になる為に
少年は全てを殺して
失ってしまったモノを
一つ一つ丁寧に並べて
返らない返事を待つ
僕は、此処だよ。
どれだけ呼んだって
少年の声は落ちていく
海の中じゃ
何一つ伝えられない
泡になっていく言葉
涙すらも溶けてしまう
聞こえないんだ、
何も。
絵本の中に描かれた様な
整然と並んだビルの隙間
君が走り抜けていく
僕はその背を
見送る事しか出来なくて
上も下も無い様な
白く壊れていく空間で
隣を過ぎてく君の背に
手を伸ばしたって
突き抜ける痛みだけ
何一つ君には伝わらない
聞こえない
離せない
触れない
見えなくなる背中に
少年は目を伏せた
笑える筈なんか
最初からないのに。
「少年は違う世界の『君』と生きる」

